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投稿時間:10/08/10(Tue) 11:02
投稿者名:坂本嘉輝
Eメール:
URL :
タイトル:二重課税の最高裁判決について
死亡保険金を年金の形で支払う場合の二重課税の問題に関する最高裁判決について、騒ぎが広がっていますが、ここでちょっと落着いて、何がどう判決されたのか検討してみたいと思って、チョット作文しました。

この掲示板にそのまま載せるわけにいかないので、別ファイルの形にしました。
http://www.acalax.info/bbs/saikosai.pdf

ご意見お聞かせください。

今度は必ずしも専門でない法律や税法の議論です。間違いがあるかもしれません。
その場合には遠慮なくご指摘ください。

投稿時間:10/09/08(Wed) 11:24
投稿者名:坂本嘉輝
Eメール:
URL :
タイトル:「二重課税は違法」という最高裁判決は憲法違反
死亡保険金を年金の形で受取る保険について、『「二重課税は違法」という最高裁判決は憲法違反』という暴論があります。

その暴論を主張しているのは実は私で、この件に関する一連の裁判の記録をまとめて解説した【死亡保険金を年金の形で支払う場合の二重課税の問題に関する最高裁判決について】というメモの最後の所にオソルオソル載せています。

http://www.acalax.info/bbs/saikosai.pdf

このメモは国税不服裁判所・地裁・高裁・最高裁の裁決文・判決文を組み直して解説したもので、シチメンドクサイ議論が展開されるのを20ページにまとめたものです。ほとんどの人が見向きもしないか、あるいは最後までたどり着けなくて途中であきらめてしまったか、残念ながら殆ど反応がありません。

そこで今度は判決文の解説ではなく、判決文に対する私の意見をまとめてみました。

http://www.acalax.info/bbs/saikosai2.pdf

今度は前のメモの半分位の分量になっているので、もう少し読みやすいかも知れません。

また前回はオソルオソルだった憲法違反の主張も、もう少し堂々と書いてみました。

もし良かったら読んでみて下さい。そして前のメモもついでに見てみようかと思ったら、是非読んでみて感想をお聞かせ下さい。

投稿時間:10/10/06(Wed) 09:14
投稿者名:Dr.KEN
Eメール:http://d.hatena.ne.jp/rocohouse/
URL :
タイトル:Re: 「二重課税は違法」という最高裁判決は憲法違反
Dr.KEN 

旧姓・征保大将軍です(^_^;)
坂本さんの今回のレポート私もコメントを入れようと思っていたのですが…
いつのまにやら盛り上がって喜ばしいことです(^_^;)

単なる保険屋の私ですが、この手の保険はそこそこ扱っているので年金受取の場合に
課税されるのには違和感を感じていました。
ただし、保険料に対する税制(保険料控除など)と違って保険金を受け取った時の税制の
問題ですから私は契約者への説明は…
「時代によって税制は変っていくもので、その時点になって、またその時の状況によって
年金受取にするか、一括受け取りにするか、考えれば良いことですし、
第一それを選択するのは、保険金受取人ですから…」
といったようなハナシをするぐらいです。

ところが今回の最高裁の判決は…
どうやら”税制は変らず”に”税制が変ったような結果”になってしまったようで
私のワルイ頭は混乱しています(^_^;)

保険を販売する者としては、当然契約者に有利な税制であって欲しいと
望んでいるわけで、今回の最高裁の判決のニュースを最初に聞いた時は
最高裁まで持ってった原告や弁護士はよくやった!
日本の民主主義も捨てたもんじゃない!…と率直に思いました。
そして、これで税制の見直しがされて、またテンヤワンヤがあってマスコミも…
と楽しみにしていたら、ほとんど話題にもならずただ粛々と(^_^;)

ま〜たしかに難しいハナシではありますが…
私は最近のこの国の政治や行政や経済やマスコミもろもろの動きを見ていると
すべてが”なし崩し”で”場当たり的”との印象を持ってしまうのです。
保険会社の”抜本改革”も同様に思っています(^_^;)

投稿時間:10/09/25(Sat) 11:39
投稿者名:秋桜児
Eメール:
URL :http://ucosmos.blog95.fc2.com/
タイトル:Re: 「二重課税は違法」という最高裁判決は憲法違反
坂本さんの力作を最後まで読ませていただきました。

判決文を原文で読んでも素人にはその内容をなかなか理解しにくいのですが、坂本さんが書いた解説によって、裁判過程における、原告側・国税側の主張がよくわかりました。
こんな丁々発止のやりとりを経て、最高裁判決が下りたのですね。
ありがとうございました。

最高裁が下した年金型死亡保険金に対する二重課税問題に関する判決は、司法が立法権を侵害するような判決であり、違憲であるとのご主張です。

私は、最高裁の判決が違憲であるとは考えません。
法律の専門家でも税務の専門家でもありませんので、厳密な法文解釈ができるわけではありませんが、最高裁は、憲法の精神、個々の法律の精神−法の下の平等、法の下の課税の公平−に照らして、下した判断ではないかと思います。法律の条文に明確に書いてないことは、法全体に流れる精神に照らしてそれぞれの条文を解釈したということではないでしょうか。
同じ性質で、同一価値のものには、同一の課税を行う、ということが税法の精神(趣旨)であるならば、それを最大限汲みとる形で下した判決だと思います。

本来は法律を改正してスッキリさせるのが最適だと思いますが、裁判所には立法権限はありませんから、現行法で規定されている内容を逸脱せず、解釈できるうる範囲内で、最高裁は課税の公平を重視した判決を下したのだと思います。

同一価値の死亡保険金でありながら、一括で受け取ると相続税のみの課税、分割で受け取ると相続税と所得税の課税がある、というのは不公平ですから。

今回の最高裁判決は「法律の改正」をしたのではなく、法の精神に照らしてその運用が間違っていたから「実務の修正」を行ったのだと思います。

それにしても、今回最高裁判決まで持ち込んだ原告である長崎県のAさん、それに担当税理士の方の熱意は素晴らしいと思います。この方々のおかげで同種の保険契約をしている方々が税額軽減を受けることができるようです。
国税庁や保険会社の皆さんは大変だと思いますが。

投稿時間:10/10/26(Tue) 13:54
投稿者名:坂本嘉輝
Eメール:
URL :
タイトル:秋桜児さんの#3526に対するコメント
秋桜児様

私も最高裁の解釈が合理的であることは否定しません。問題は、だからと言って他の合理的な解釈を無条件に否定してしまうのはどうだろうか、ということです。

誰かが自分の考えが合理的だからといって、それと異なる考え方を全て否定してしまったとしたら、これは恐ろしいことです。
裁判所が勝手な解釈でいつでも法律を変えることができるとなったら、これはもう法治国家とはいえないと思います。

今回の件について、これまで「お上のお達し」が通用してきたのはAさんやAさんを応援した税理士さん・弁護士さんのような人がいなかったから、ということではなく、国税側の考え方にも十分な合理性があったからだと思います。

秋桜児さんは地裁の裁判官の判断、高裁の裁判官の判断は合理的でなかったと思うんでしょうか。私はどちらも合理的な判断だと思います。

もちろんお上の言うことは「全てごもっとも」とは限らないですが、最高裁の裁判官の言うことも「全てごもっとも」と思ってはならないんじゃないでしょうか。

投稿時間:10/10/28(Thu) 21:36
投稿者名:秋桜児
Eメール:
URL :http://ucosmos.blog95.fc2.com/
タイトル:Re: 秋桜児さんの#3526に対するコメント
坂本様

何らかのことを選択すれば、(何らかの解釈を採用すれば)
別の何らかのことは選択できなくなる(別の解釈は採用できなくなる)。

今回最高裁が採用した解釈を行った結果、これまで国税が行ってきた解釈は採用できなくなった。
単にこういうことではないでしょうか。

長崎市の主婦Aさんが行ってきたこれまでの裁判を振り返ってみますと、
長崎地裁は、「国税の解釈は間違っている」
福岡高裁は、「国税の解釈は正しい」
最高裁は、「国税の解釈は間違っている」

もし、Aさんが福岡高裁で裁判を諦めていたら、長崎地裁の解釈は全く否定されたままでした。
「国税の解釈は間違っている」という解釈であるという意味では、長崎地裁も最高裁も変わりません。

これまで国が行ってきた解釈が、箸にも棒にも掛からないような解釈であったとは思いませんが、最高裁が行った解釈のほうがより一層合理的な解釈であったと思っています。

投稿時間:10/10/18(Mon) 16:20
投稿者名:坂本嘉輝
Eメール:
URL :
タイトル:秋桜児さんの#3523に対するコメント
秋桜児様

何度もコメント頂き、有難うございます。
コメントがないと一人では議論が進みませんので有難く思っています。

返しのコメントが遅くなってしまいましたが、どのように書けばわかりやすいか、いろいろ考えていて遅くなってしまいました。

さて「法律」のことですが、この言葉には狭い意味と広い意味があると思います。
狭い意味では確かに「国会で制定される法律のみを法律という」という使い方をします。広い意味ではその国会で制定される法律に加え、内閣が決める政令(施行令などという類です)・それぞれの省庁が決める省令(施行規則などとよばれる類です)も含む場合もあります。またさらに裁判の判例なども含む場合もあります。
私も普通この言葉を広い方の意味で使っています。

今回の裁判は国税不服審判所・地裁・高裁・最高裁と、4回法律の判断をして、その結果Aさんの主張が正しいと判断されたり(地裁)、国税の判断が正しいと判断されたり(国税不服審判所・高裁)したものを、最高裁が全て否定してしまって新たな解釈を出したものです。

狭い意味での法律の解釈を変更して、その新しい解釈と異なる政令をいつでも否定することができるということになると、今の政令の多くはいつでも法律違反と言われかねないということになってしまいます。
そうなると今まで(広い意味の)法律に従ってやっていたことが、いつ違法行為になってしまうかもわからないということになって、困ってしまうと思います。

そもそも今回の二重課税ですが、(みなし)相続財産として相続税の対象となった財産については所得税を課税しないという所得税のルールですが、このルールがないとするとどうなるか考えてみて下さい。
Aさんのご主人の死亡に伴ってAさんの年金受給権が発生し、それがみなし相続財産となります。この財産は相続されたものとして相続税の対象となるのですが、その財産を手に入れたということでそれは所得になります。これについて所得税を課税しないというルールがないとすると、相続の時点でこの所得に所得税がかかることになります。この所得を相続税法上の評価額1,380万円とするか、一括払の場合の額の2,060万円で評価するか、10年分の年金の総額2,300万円で評価するか、評価についてはいろいろな考えがありそうですが、いずれにしても相続のあった年に1,380万円〜2,300万円程度の所得があるということで、所得税が課せられることになります。

所得税の規定は、まず第一義的にこの【相続時の所得税の課税はしない】ということです。

そして相続時の所得税の課税はしないとして、【年金受給時の所得税をどうするか】というのが次のポイントになります。

これについて、相続時の所得とその後の年金受給は同じものだから所得にはならないというAさんの立場。相続時の所得とその後の年金受給は全く別のものだから年金にしっかり所得税を課すという国税側の立場と、受給する年金は一部が非課税とされた相続時の所得で、一部が新たな所得だとする最高裁の立場と、さまざまなものがあるということです。

所得税の(みなし)相続財産には所得税を課さないという規定は、相続時の所得税については明確に規定していますが、その後の取扱については何も言っていません。何も言っていないからと言って勝手に決めるということにはなりません。
法律というのは書いてある通りに適用しなければならないものです。狭い意味の法律に書いてなくて広い意味の法律に書いてあれば、それが適用されます。狭い意味の法律に書いてないからと言って勝手に解釈して、広い意味の法律に書いてあることを否定するというのは間違いだと思います。

もちろん狭い意味の法律にちゃんと書いてあってそれと違うことが広い意味の法律に含まれているのであれば、それは法律違反ということになるのでしょうが、現行の所得税法には所得税法施行令の規定を否定するほどの明確な規定にはなっていないように思います。

いかがでしょうか。

投稿時間:10/10/18(Mon) 22:12
投稿者名:秋桜児
Eメール:
URL :http://ucosmos.blog95.fc2.com/
タイトル:Re: 秋桜児さんの#3523に対するコメント
坂本様

>狭い意味の法律に書いてないからと言って勝手に解釈して、広い意味の法律
>に書いてあることを否定するというのは間違いだと思います。

今回の最高裁判決は、
狭い意味の法律(今回は、所得税法)に書いていないけれど、
合理的に解釈して
広い意味の法律(今回の場合は、政令である所得税法施行令)に書いてあることが間違いだから修正を求めた、
という判決だと思います。

国民から選ばれた代表者(国会議員)が作った法律の趣旨に照らして、裁判所が行政が行っている行為に異議を言えない国は、国民の自由が制限されている国です。真っ当なことを真っ当だと正面きって言えない国です。国民は行政の顔色を伺いながらでないと安心して暮らせません。

ではなぜ、今回の件に対してこれまで「お上(行政)のお達し」が通用してきたのか?
AさんやAさんを援護した税理士、弁護士のような方が現れなかったからだけだと思います。

No.3523にも書きましたが、お上の言うことは「全てごもっとも」とは限らないから、行政訴訟という手段を取ることができる、ということではないでしょうか。

投稿時間:10/10/04(Mon) 17:13
投稿者名:坂本嘉輝
Eメール:
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タイトル:秋桜児さんの#3516に対するコメント(2)
秋桜児様

次に「憲法違反」の話ですが、これは憲法に三権分立の規定があるにも拘らず、今回の最高裁の判決はその規定を侵すものとなっているので、憲法違反だということです。

秋桜児さんも引用しているように、最高裁が判決文で言っているのは「・・・と解される。・・・と解される。・・・と解される。」です。そしてその「解される」立場に立つと、国税側のやり方はその「解される」とは違うので違法だということです。

「受取る年金を元本の取崩しの部分と利息の部分に分けて・・・」という部分も、確かにそういう考え方もありますが、そのような考え方をしなければならない根拠が最高裁の判決文にはどこにも示されていません。所得税法にはそんな条文はないので、根拠の示しようもないのでしょうが。

すなわち「最高裁の解釈が可能」だということだけで、「国税側の解釈が間違っている」ということは何も立証していないのです。そして国税側の解釈と違う解釈が可能だから、その違う解釈の立場に立って「国税側の解釈が違法」だといっているだけです。

「このような解釈も可能だ」ということがそのまま「その解釈にもとづくと今までのやり方は間違っている」につながるとなると、法律の解釈がいつ変えられてしまうかわかりません。法律に従った行動がいつの間にか違法行為になってしまいます。そうなったらもう「法治国家」なんて言えなくなってしまいます。

秋桜児さんは「これでは不公平です。」とか「最高裁の判決は妥当な判断では?」とか言っていますが、ここで問題となっているのは税法のあるべき姿の議論ではなく、既にできあがっている法律の解釈および運用の話です。「不公平」というのは、違法でも何でもありません。全ての人が満足する公平な状況というのは非現実的でしょうから、「不公平」を「違法」だと言い出したら、法律など作りようがなくなってしまいます。

税法のあるべき姿を議論するのであれば、税制調査会なり税制審議会なり何なりでしっかり議論して法律改正をすればよいだけのことで、税法の専門家でもない裁判官がたった4人で勝手に判断することではないでしょう。

秋桜児さんも言っているように、「数十年単位で考えれば、社会情勢の変化等で法律が変わったり、法令解釈が変わるというのは」いくらでもあり得る話です。ただしその法律を変えたり法令解釈を変えたりするのは、立法府であったりその下請けとしての行政府であったりするのであって、裁判所がそれをしちゃぁいけないということです。
それが「三権分立」ということです。

最高裁判所が判決で法律改正をすると、それは自動的に数十年前にさかのぼって法律改正をすることになります。社会情勢の変化等にお構いなく、数十年前にさかのぼってしまうんです。

投稿時間:10/10/04(Mon) 17:10
投稿者名:坂本嘉輝
Eメール:
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タイトル:秋桜児さんの#3516に対するコメント(1)
秋桜児様
コメント有難うございます。
まず「法律違反」というのと「憲法違反」というのを、はっきり区別して下さい。
私は最高裁判決について「法律違反」であるとも言ってるし、「憲法違反」であるとも言ってますが、このそれぞれは別のことです。

まず「法律違反」ということですが、最高裁の判決の立場からすると、所得税法が所得税法違反ということになります。ですからAさんの主張も国税側の主張も最高裁の判決も、全て所得税法違反です。
これはAさん側の主張も同様で、この立場からすると所得税法が所得税法違反ということになるので、Aさんの主張も国税側の主張も最高裁の判決も、全て所得税法違反です。
国税側の立場からすると、所得税法が所得税法違反ということにはならず、Aさんの主張と最高裁の判決は所得税法違反だけれど、国税の主張は適法ということになります。

この違いは、年金の雑所得を定めた所得税法施行令第183条の規定と、みなし相続財産の所得税非課税を定めた所得税法第9条の規定との折り合いの付け方です。

Aさんの立場は「みなし相続財産の年金受給権と毎年の年金を一体のものとする」というものですから、所得税法施行令第183条が所得税法第9条に違反するということになります。逆に言えば、所得税法第9条が所得税法施行令第183条に違反するということです。
そうなると国税側の主張は所得税法第9条違反となりますが、それと同時にAさん側の主張・最高裁の判決は所得税法施行令第183条違反となります。

最高裁の判決の立場はちょっと違いますが、「みなし相続財産の年金受給権と、毎年の年金のうちその年金受給権の取崩しにあたる部分とを一体のものとする」というものですから、結論として所得税法施行令第183条と所得税法第9条がお互いに、お互いに対して違反するということになります。
そこで上と同様に国税側の主張は所得税法第9条違反となりますが、それと同時にAさん側の主張・最高裁の判決は所得税法施行令第183条違反となります。

国税の立場は「年金受給権と毎年の年金は別のものだ」というものですから、この立場に立てば所得税法施行令第183条と所得税法第9条は矛盾しないことになります。
この立場に立てば所得税法は所得税法違反ということにはなりません。Aさん側の主張・最高裁の判決は所得税法施行令第183条違反となりますが、国税側の主張は適法となります。

以上が「法律違反」の話です。

投稿時間:10/10/10(Sun) 13:58
投稿者名:秋桜児
Eメール:
URL :http://ucosmos.blog95.fc2.com/
タイトル:Re: 秋桜児さんの#3516に対するコメント(1)
坂本様

アクチュアリーでもなく、法律や税務の専門家でもなく、保険を生業としているわけでもない人間がコメント欄を汚してしまい申し訳ございません。

坂本さんのご意見は、国税庁が行っている年金型保険金に対する二重課税は間違いであると最高裁が判断したことが、法律違反であり、憲法違反であるとのことです。

私は、今回の最高裁判決は、法律(所得税法、相続税法)に基づき判断した結果、行政機関である国税庁に対して、「実務の修正」、「法律の運用方法の修正」を求めたに過ぎないと申し上げました。

【司法とは】
ウィキペディアによれば、「司法」とは、
「具体的な争訟について、法を適用し、宣言することにより、これを裁定する国家作用」、
「日本国憲法において、司法とは、行政事件を含むすべての裁判作用を行う権能を指す」
ということです。
つまり、裁判所は、「法律」を適用して行政機関が行っている実務が誤りであれば修正させる判決を下すことができ、憲法を適用して立法機関が作った法律が違憲という判決を下すことができると考えられます。
裁判所は、憲法やその他の法律に照らして、良い・悪いを判断するところ、とも言えるでしょうか。

判決を受けて、「具体的にどのように修正するかは、それぞれの機関で考えてね」ということになります。裁判所が具体的な規定内容を作ることはできません。それぞれの機関の仕事ですから。これをしたら、まさに「三権分立」違反です。

【法律・政令とは】
所得税法は「法律」です。「法律」は、国民を代表する議員たちで構成される立法機関たる国会で制定されます。
所得税法施行令は「政令」です。
ウィキペディアによれば、「政令」とは「命令のひとつで内閣が制定する成文法」、「法律の規定を実施するために制定された執行命令」とされています。
所得税法施行令183条について言えば、所得税法に定める雑所得のうち、「生命保険契約等に基づく年金の支払を受ける居住者のその支払を受ける年分の当該年金に係る雑所得の金額」の計算方法を定めているものです。

つまり、「政令」とは、
行政機関が「法律」の規定を実施するために自分たちなりに考えて作った定め、
あるいは、
行政機関としては「法律」に基づいているつもりで「実務」方法を決めた定め、
ということができます。
「法律」に違反することが明白な「政令」はありえません。
「政令」は、立法機関たる国会が作った「法律」の従属物です。

【今回の最高裁判決について】
今回の最高裁判決について言えば、
「「法律」である所得税法に照らして、行政機関が決めた「政令」で定めている実務のやり方が間違いだから、修正してね。」という判決です。
この判決を受けて、内閣は、最高裁判決に沿った運用実務ができるような内容に政令を変更するのだと思います。

したがって、今回の最高裁判決においても、司法の権限の範囲内
−「具体的な争訟について、法を適用し、宣言することにより、これを裁定する国家作用」、あるいは、「行政事件を含むすべての裁判作用を行う権能」−
の範囲内で出された判決に過ぎません。
私は、「憲法違反」、「法律違反」であるとは考えられません。

裁判所が行政機関に対して「法律に照らすと、あなたたちの作った政令に基づく運用実務は間違いだよ」と言うことができないとすれば、日本においては「行政訴訟」を起こすことができない、ということになってしまいます。
どこかの国とおなじになってしまいます。

*行政訴訟(ぎょうせいそしょう):行政事件に関する訴訟のことである。公権力の行使の適法性などを争い、その取り消し・変更などを求める訴訟等がある。(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

投稿時間:10/10/01(Fri) 15:37
投稿者名:山中鹿之助
Eメール:
URL :
タイトル:Re^2: 「二重課税は違法」という最高裁判決は憲法違反
問題を矮小化してはいけないのでは・・

もともとの問題提起は、我が国の三権分立の精神と司法制度の中で、最高裁が今回のような判決を出すことへの疑問であったはずです。その趣旨からは、小生も同様の所見を持っております。また判決内容の説明も、下級審での判決の方が、ずっとスッキリしていました。

小生は、絶対権力者の一つである税当局の通達行政(単なる上意下達文章である通達に、強制力を実質的に持たせる)のやり方には以前から疑問を持っていますが、それでも今回の最高裁の判決には驚きました。ひどいものです。
国税には行政訴訟への対応要員がいるはずですが、よほど無能であったと思われます。また業界(特に第一生命)の対応要員は何をしていたのやら・・

この判決のために、今後ますます重要性が増す個人年金分野で、誰のためにもならない無駄作業がまた増えました。税制のあり方では「簡便さ」が重要な要素になっているはずですが・・


> 坂本さんの力作を最後まで読ませていただきました。
>
> 判決文を原文で読んでも素人にはその内容をなかなか理解しにくいのですが、坂本さんが書いた解説によって、裁判過程における、原告側・国税側の主張がよくわかりました。
> こんな丁々発止のやりとりを経て、最高裁判決が下りたのですね。
> ありがとうございました。
>
> 最高裁が下した年金型死亡保険金に対する二重課税問題に関する判決は、司法が立法権を侵害するような判決であり、違憲であるとのご主張です。
>
> 私は、最高裁の判決が違憲であるとは考えません。
> 法律の専門家でも税務の専門家でもありませんので、厳密な法文解釈ができるわけではありませんが、最高裁は、憲法の精神、個々の法律の精神−法の下の平等、法の下の課税の公平−に照らして、下した判断ではないかと思います。法律の条文に明確に書いてないことは、法全体に流れる精神に照らしてそれぞれの条文を解釈したということではないでしょうか。
> 同じ性質で、同一価値のものには、同一の課税を行う、ということが税法の精神(趣旨)であるならば、それを最大限汲みとる形で下した判決だと思います。
>
> 本来は法律を改正してスッキリさせるのが最適だと思いますが、裁判所には立法権限はありませんから、現行法で規定されている内容を逸脱せず、解釈できるうる範囲内で、最高裁は課税の公平を重視した判決を下したのだと思います。
>
> 同一価値の死亡保険金でありながら、一括で受け取ると相続税のみの課税、分割で受け取ると相続税と所得税の課税がある、というのは不公平ですから。
>
> 今回の最高裁判決は「法律の改正」をしたのではなく、法の精神に照らしてその運用が間違っていたから「実務の修正」を行ったのだと思います。
>
> それにしても、今回最高裁判決まで持ち込んだ原告である長崎県のAさん、それに担当税理士の方の熱意は素晴らしいと思います。この方々のおかげで同種の保険契約をしている方々が税額軽減を受けることができるようです。
> 国税庁や保険会社の皆さんは大変だと思いますが。

投稿時間:10/10/06(Wed) 09:44
投稿者名:坂本嘉輝
Eメール:
URL :
タイトル:Re^3: 「二重課税は違法」という最高裁判決は憲法違反
山中鹿之助さん、コメントありがとうございます。

私としてはかなりの力作なのですが、ほとんどどこからも反応がなく、しょげていたところでした。

ここに載せたのは、アクチュアリーの方にもコメントしてもらいたい、と思ったからなのですが、アクチュアリーの方々はこの問題、あまり興味がないのでしょうか。
(山内さんが金財に記事を書いていますが)

私などはアクチュアリー試験の勉強で法律を勉強した口ですが、その後、法律が試験科目からはずされてかなりたちますので、法律は自分のテリトリー外だ、と思っているんでしょうかね。

投稿時間:10/09/27(Mon) 11:28
投稿者名:坂本嘉輝
Eメール:
URL :
タイトル:Re^2: 「二重課税は違法」という最高裁判決は憲法違反
秋桜児様、

コメントありがとうございます。
私としてもかなりがんばって書いたのですが、誰も反応してくれないのでチョットしょげていたところです。
誰も読んでくれないのか、読んでも反応のし様もないのかわかりませんが。

『最高裁は、憲法の精神、個々の法律の精神−法の下の平等、法の下の課税の公平−に照らして、下した判断ではないかと思います。法律の条文に明確に書いてないことは、法全体に流れる精神に照らしてそれぞれの条文を解釈したということではないでしょうか。』

という部分、これについては1審の地裁でも、2審の高裁でも同じように法全体に流れる精神に照らしてそれぞれの条文を解釈したんだと思います。その結果、最高裁の判決の立場に立てば1審の地裁の裁判官も2審の高裁の裁判官も法律違反の判決をした、ということになってしまったわけです。

私は地裁の裁判官、2審の高裁の裁判官が最高裁の裁判官と比べて劣っているとは思いません。

法律の解釈の問題からすると1審の地裁の判決も2審の高裁の判決も最高裁の判決も同じように法律に従っていると解釈できます。だとするといつの日かまた今回の最高裁の判決が違法で1審の地裁の判決が正しいとか2審の高裁の判決が正しいとかの判決が出るかもしれません。
このような不安定な状況は好ましいことではないと思います。

『この方々のおかげで同種の保険契約をしている方々が税額軽減を受けることができるようです。』

という部分、税額軽減を受ける対価はこれも税金ですから、その分皆で税金を払うことになりますね。
国税庁の事務コストも税金で負担することになりますし、保険会社の事務コストは(たいしたことにはならないと思いますが)最終的には保険料に跳ね返って契約者全体の負担になりますね。税金や保険料の全体の中にまぎれてしまうのでほとんど気にされることはないでしょうが。

投稿時間:10/09/29(Wed) 10:26
投稿者名:坂本嘉輝
Eメール:
URL :
タイトル:Re^3: 「二重課税は違法」という最高裁判決は憲法違反
秋桜児さん、

またまたコメントありがとうございます。

『判決内容の詳細が分かっても、自分の商売に直結しないと考えているのかもしれません。』

というコメントですが、この掲示板を商売に使おうなんて考えている人はいないと思いますので、そんな人は最初から見てないと思います。
残念ながら、この掲示板は商売にはほとんど役に立ちませんから。

私は法律を、単なる条文だけのものとは思っていません。その解釈や、実務のルールや判例などの全体が法律になっているものだと思っています。
その意味で、今回の最高裁の判決はこれらの全体を否定してしまった、という意味で、法律の改正だ、といっているものです。

これまでの法解釈も間違っているわけではなく、単に解釈が違う、というだけのことです。
最高裁の判決文を見ればよくわかりますが、最高裁の判決の根拠は、『法律にこう書いてあるから今までの実務は間違いだ』というものではなく、『法律にこう書いてあるからこう解釈できる』というだけのことです。
その『こう解釈できる』という解釈に立てば、今までの実務はその解釈とは違う、というだけのことで、今までの実務の元となっていた解釈が間違いだ、ということは何一つ立証されていません(立証しようともしていません)。

法律を作るとき、異なった解釈の余地がないように法律の条文自体を作り上げる、というのはほとんど非現実的なことですから、今回の最高裁の判決が前例となってしまうといくらでも混乱が起きてしまいそうです(最高裁は商売繁盛、ということになりますが)。


なお、税還付のコスト負担ですが、Aさんの場合、年金に対する源泉徴収税は22万円です。
Aさんは裁判の前に確定申告して還付請求しているので、裁判前の最終的な国税側の計算と最高裁判決による計算とで差額は2万5千円ちょっとになりましたが、確定申告してないとかほかに十分な所得があるとかいうことだったとしたら、今回の最高裁判決で戻ってくるのは20万円くらい、と見積もれると思います。
これが年金1回分ですから、5年分戻ってくるとしたら100万円ということになります。

いずれにしても税収全体からすればたいした額じゃありませんが、お金の計算では誰がいくら得するんだろう、誰がいくら負担するんだろう、ということを常に意識するようにしているので、コメントしました。

投稿時間:10/10/02(Sat) 20:19
投稿者名:秋桜児
Eメール:
URL :http://ucosmos.blog95.fc2.com/
タイトル:Re^4: 「二重課税は違法」という最高裁判決は憲法違反

私の不徳の致すところでしょうか。二重課税問題に関する最高裁判決が「法律違反である」という坂本さんの問題意識がどうもよく理解できません。

福岡高裁での裁判の過程で国側が持ち出した、「所得税法第9条第1項第15号、相続税法第3条第1項第1号、それぞれの立法時には、年金は所得税の課税対象と考えられていた」という根拠。最高裁の判決はこの立法趣旨に背くものだ。だから、立法権限を侵している。三権分立に反する。こういう事なのでしょうか。

裁判の過程を振り返ってみます。

●長崎地裁(原告の勝訴)
相続税の対象となる年金受給権(みなし相続財産)と、実際に受け取る年金とは実質的に同じものだ。
だから、年金保険金に所得税を課することは、所得税法第9条第1項第15号(二重課税の排除)により誤りである。

●福岡高裁(国側の勝訴)
相続税の対象となる年金受給権(みなし相続財産)と、実際に受け取る年金とは実質的に違うものだ。所得税及び相続税の該当条文を立法する際には、年金保険金には所得税を課すとしていた。
だから、年金保険金に所得税を課することは、正しい。

●最高裁(原告が概ね勝訴)
相続税の対象となる年金受給権(みなし相続財産)と、実際に受け取る年金とは概ね同じものだ。所得税法第9条第1項第15号の対象としているのは、将来もらえる年金額のうち、その現在価値に相当する部分だ。この部分には所得税を課さない。現在価値以外の部分は運用利息だ。運用利息に相当する部分には所得税を課す。 1回目にもらう年金保険金には運用利息部分はない。


長崎地裁は、原告側の完勝。福岡高裁は原告側の完敗。最高裁は原告側が概ね勝利。こんな違いです。

これまでの国税側の運用を"○"とするならば、
長崎地裁は ×、
福岡高裁は ○、
最高裁は バツに近い△。

これまで国税側が運用してきた方法と違う判決となったという意味では、長崎地裁も最高裁も同じです。
立法趣旨とやらで考えれば、長崎地裁も最高裁も「法律違反」となるのでは?
しかし、長崎地裁の判決は批判せず、最高裁の判決のみを批判している。
完全な○か×なら良いけれど、中途半端な三角はダメ、ということでしょうか。

法律では、年金保険金をその額の現在価値と運用利息分に分けるなんて、ひとことも書いていない。だから法律違反?
しかし、みなし相続財産を「相続等により取得し又は取得したものとみなされる財産そのものを指すのではなく,当該財産の取得によりその者に帰属する所得を指すものと解される。そして,当該財産の取得によりその者に帰属する所得とは,当該財産の取得の時における価額に相当する経済的価値」と解釈するのであれば、結果として、年金保険金の現在価値と運用利息分に分かれる、ということだけでは?

改正相続税法24条の適用を前提として、かつ、運用利息ゼロ、の場合を仮定してみます。年金保険金を一括でもらっても、年金方式でもらっても同額になる想定です。
これまでの国税側の運用を適用すると、年金保険金を一括でもらうと所得税課税ゼロ。一方、もらう保険金の額は総額で同額でありながら、年金方式でもらうと所得税が課税される。これでは不公平です。

最高裁の判決は、妥当な判断では?
もしかしたら、最高裁の判決は、改正相続税法24条を踏まえているのかもしれません。(その時々の金利情勢を反映して、年金保険金の現在価値が変わってくる)

最高裁の判断が、朝令暮改で変更されてはなりませんが、数十年の単位で考えれば、社会情勢の変化などで法律自体が変わったり、法令解釈が変わるということはあり得るのでは?

今日の常識が、半世紀後も常識とは限りません。

投稿時間:10/09/27(Mon) 23:48
投稿者名:秋桜児
Eメール:
URL :http://ucosmos.blog95.fc2.com/
タイトル:Re^3: 「二重課税は違法」という最高裁判決は憲法違反
素人には分かりにくい判決文を解説してくださり、坂本さんには感謝しております。

坂本さんの力作に反応がないのは、この掲示板をご覧になっているであろう方々には、あまり興味のわかない内容だからかもしれません。
判決内容の詳細が分かっても、自分の商売に直結しないと考えているのかもしれません。

法人向けの保険営業コンサルをしている某氏が、今回の最高裁判決結果に対して、たった一言「当然だわな。」などというコメントを出しておりました。
こんな簡単な一言で片付けることができてしまう程度の興味なのでしょう。
そんなことよりも、売れるセールストークの開発のほうが大事なのでしょう。

改正相続税法24条により、年金保険金の現在価値の評価額に変更があるようです。
今回の最高裁判決も踏まえると、年金保険金に課税される所得税が大きく減少することでしょう。

プロの保険営業員であれば、本当は、法令改正の動向や判例をウォッチして、顧客へのアドバイスに役立てようと考えるのでしょうが。


ところで坂本さんは、今回の最高裁判決は「法律の改正」をしたとお考えのようですが、単に「法律の解釈をこれまでと変更した」、「運用を変更することになった」、「行政実務を変更することになった」に過ぎないのではないでしょうか。

裁判によって、それまで行政が行っていたことが間違いであった、という判断を下されることは他にもあることでしょう。

最後に、
「税額軽減を受ける対価はこれも税金ですから、その分皆で税金を払うことになりますね。」
ということですが、今回の最高裁判決によって、仮に10万人の人が10万円ずつ税額還付を受けたとしても、100億円です。
1年間の税収は数十兆円。1年間の税収から比べれば0.03%程です。



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