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旧版練習帳


このホームページに関するご意見等は、「練習帳」掲示板か、
直接、私 mail-admin@acalax.infoまでメールをください。


(2000年2月13日)
今日、ようやく、当初計画していた形の掲示板が動くようになりました。
今後は、そちらの掲示板を使っていただくとして、既にこのページに書き込んでしまった内容をその掲示板に書き写すまでの間、「旧版練習帳」という名前でこの文書を残すことにしました。
参考にしてください。


(2000年1月22日)
ここには、皆さんが自由に意見表明をしたり、質問したり、回答したり、何でもできるような掲示板を用意する予定です。
HP立ち上げの今日になって、CGIを使うのにはさらに10日から2週間くらいかかる、ということが判明しました。
(泥縄でCGIの勉強をして、やっと掲示板やカウンターを使えるようになったというのに、なんてこった)
CGIを使えるようになったらちゃんとした掲示板に置き換えるとして、とりあえずは普通のページで始めます。
皆さんからの意見、その他は私宛てのメールで送ってください。CGIが使えるようになったら掲示板にのせ直します。


今日の時点で、私が皆さんに聞いていただきたい、意見を求めたいことは、主旨のページにも書きましたが、次の3点です。

1.東京海上あんしん生命の、長割保険について
2.標準責任準備金の在り方の見直しの方向性について
3.最近話題の、東邦生命の破綻処理の問題について

順序は逆になりますが、東邦生命の破綻処理についてから始めます。

東邦生命は、昨年、大方の予想通りに破綻しました。
この破綻処理に関して、延々と引き受け手探しをした結果、契約者保護機構からの3,600億円の資金援助を持参金に、GEエジソン生命が引き受けることになりました。
東邦生命の契約は、責任準備金を削減され、基礎率を変更されてGEエジソン生命に移管されることが、1月14日の臨時総代会で決まりました。これを受けて、現在は契約者から、この処理案についての異議申立てを受け付けているところです。

この処理案については、いつものとおり、ほとんどまともな情報開示がなされないまま、すべてが進行しているわけですが、それでも、いくつかおかしなことが見受けられます。また、なんとも理解できない説明がまかり通っているようで、ここら辺について少し議論したいと思います。

まず、公表されている数値をまとめてみましょう。
東邦生命は、1999年3月末で、約2,000億円の債務超過になっていました。
これを、1999年9月末時点で再評価してみると、約6,500億円の債務超過になった、とのことです。差額の約4,500億円は、資産の再評価によるものです。
ここで、責任準備金の引き下げ等をおこなって、処理の必要額は約6,000億円となります。責任準備金は1,400億円引き下げられているのに、500億円しか減っていないのは、貸し付け金が更に減ったり(?)清算会社に残しておかなければならない300億円を別にしておかなければならないからです。(この部分、なんとも理解できません)
6,000億円のうち、契約者保護機構から3,600億円の資金援助を受け、残りの2,400億円はのれん(営業権)として処理する、というものです。

この「のれん」について、これはGEエジソンが負担する額なのだ、などというわけの分からない説明がなされているようで、浅谷さんのHPにも、

だから、99年12月28日付の毎日新聞に掲載された、GEエジソン生命のボールドウィン社長とのインタビューで、約2,400億円払ったのに「いいとこ取りした」という指摘に戸惑いを感じた、と彼が言うのは当然である。

などと書かれています。
いったい、のれんを、どのように説明したら資金負担と言えるのか、全く分かりません。
GEキャピタルは、いまだかって、GEエジソンおよび東邦生命に関して、GEエジソンを作った時の720億円以上、一銭も払っていません。
1998年の3月の時点で東邦生命が720億円の資金投入で何とかなると考えた人はいないと思います。それを、東邦生命とGEエジソンという二つの会社に分けることにより、たった720億円の資金投入で表面を糊塗したのが2年前です。
その後、1年で東邦生命のほうが正式に経営破綻して、今度は契約者保護機構から3,600億円を引き出したわけですが、ここでもまだ、GEキャピタルは720億円以外の資金を出していません。
6,000億円の債務超過に対して、3,600億円を追加投入したところで、債務超過の状況には変わりはありません。今度は東邦生命を合わせたGEエジソンが債務超過になって、また、契約者保護機構からの資金援助が必要になるだけのことです。

引き受ける東邦生命の契約に関する、2,400億円の「のれん」に対して、同額の増資をするかどうかして始めて「2,400億円支払った」といえるようになります。
今回の処理案がおおむね決定したところで、GEエジソン側は、600億円かそこらの増資の予定を発表していますが、GEエジソン生命の決算内容を見てみれば、この程度の増資は東邦生命の契約を引き受けなかったとしても必要な額であり、これをしなければ、GEエジソン生命が債務超過か、ソルベンシーマージン不足かになっていたのではないかと思われます。ちょうど良いタイミングで東邦生命の契約の引き受けが決まってこの増資を、そのためのものと説明しているのではないか、と思います。
(もしかして、GEキャピタルはGEエジソンの債務に対して、保証をしているのかもしれません。もし、そうであれば、「2,400億円支払った」という表現も、それなりに意味のある言葉になりますが、どうなんでしょうか。)

今回の、契約者保護機構からの資金援助に関しては、1998年の秋に契約者保護機構ができる時、その時点で実質的に経営破綻している会社は参加させない、ということで参加各社から、経営が健全である旨の念書を取っています。にもかかわらず、今回、2,000億円あるいは6,000億円の債務超過の状況が明らかにされ、また、債務超過の増加の見込み額が年間600億円と説明されているにもかかわらず、1998年の契約者保護機構の発足時において東邦生命の財務状況が債務超過になっていなかったかどうかについては誰も語ろうとはしていません。

また、契約者保護機構が発足当初用意しようとしていた4,000億円の資金が今回の東邦生命の破綻処理でほとんど払底してしまうことから、公的資金の投入を含めて、資金の総額を9,600億円まで増額しようという議論がなされています。
この議論の中でも、不思議な議論が展開されています。
大蔵省・金融監督庁としては、更なる経営破綻が起こって、生命保険会社の負担額が5,600億円を超えた場合、4,000億円までの公的資金を出すことができるようにしよう、という意向です。この4,000億円の公的資金は、2003年3月までの期限付きのものです。2003年4月以降の経営破綻には適用されないものです。
経営破綻の認定をするのは、監督当局ですから、これでは、破綻した(する)会社があった場合、公的資金を出したくなければ、2004年4月まで待たせてから破綻させるようにすれば良いことになります。このような質問には、監督当局としては早期是正措置を厳格に適用するので、2003年3月を越えて破綻するような会社はない、ということです。このことは、2003年3月までにアブナイ会社はすべて何らかの処理が必要になる、ということであり、4000億円程度の公的資金ではどうにもならないのではないか、かえってもっと多くの資金手当てが必要なのではないかと思うのですが、どうなんでしょうか。

誤解があるといけないので、念のためいっておきますが、私は、「いいとこどり」を非難しているつもりはありません。資本の論理から、「いいとこどり」ができるのであれば、それをしない手はないと思っています。問題なのは、もし、これが「いいとこどり」なのであれば非難されなければならないのはそれをした方ではなくて、それをされてしまった方だ、と思います。
いずれにしても、3月に既契約を移管されて、GEエジソンの決算はどうなるのでしょう。2,400億円の「のれん」に資産性を認めて、これを優良資産としてソルベンシーマージンを計算するのでしょうか、それとも、これを不良資産と考えて、その分、何らかの形でソルベンシーマージンの積み増しをおこなうのでしょうか。非常に興味のあるところです。

このあたりの事情を、誰か、明確に説明してくれる人はいませんか。


次に、現在、金融審議会で議論されている「保険会社のリスク管理と倒産法制の整備」と、それに関連して日本アクチュアリー会で議論されている、保険計理人の実務基準の見直しについて、考えてみたいと思います。

それらの議論の柱の一つになっているのが、標準責任準備金の強化の問題です。
標準責任準備金の適用の範囲を拡大し、その積み立ての強制力を強化しようというものです。標準責任準備金の水準が妥当なものであれば、この様な議論も必ずしも不合理なものではありませんが、現在の議論が、いわゆる純保式(平準純保険料式)の責任準備金を金科玉条としているため、ニッチモサッチモいかないものになっています。

いわゆる、カタカナ会社やひらかな会社から様々な反対意見が出されているのですが、これもまた、十分オープンな議論にならないまま進行しています。
とりあえず、昭和40年代にいわゆる純保行政を推進した、当時の行政の担当官、業界のリーダーたちはこの様な状況をどのように考えているのでしょうか、誰か、意見表明してくれないものでしょうか。
昭和40年代には、それなりの考え方があって行われたのかもしれない、いわゆる純保行政が、今や「不磨の大典」のごとく、理屈があろうとなかろうと変更できない、かのようになっている状況は何とかならないものでしょうか。


最後に、東京海上あんしん生命の、長割保険に関する日本アクチュアリー会の教科書問題について話しをしましょう。

一昨年(?)、東京海上あんしん生命が予定脱退率を使用した新しい商品を開発し、解約返戻金を引き下げることにより保険料を安くする商品の提供を始めました。その後、昨年(?)には、ALICO Japanから、解約返戻金のない終身医療保険も売り出され、これも保険料の安さで話題となりました。

日本アクチュアリー会では昨年(?)、アクチュアリーの資格試験の勉強のための教科書を改定しましたが、その一部に、このような予定脱退率を使用した商品についての考え方が追加されています。

昨年、ちょうど百周年の記念大会の前後でしたが、東京海上あんしん生命は日本アクチュアリー会へ宛てて手紙を送り、その改訂された教科書の訂正を求めました。

教科書は、長割保険について直接言及している、というより、より一般的に、予定脱退率を使用した商品に関する注意点について記述しているものですが、読み方によっては長割保険を非難・否定しているようにも読めます。

日本アクチュアリー会でも、その手紙に対して正式に返書を送っていると聞いています。この議論は、生命保険商品をどのように考えるか、非常に興味深い論点をいくつも含んでいて、アクチュアリーの勉強に絶好の材料となると思いました。その当時、うわさでは、東京海上あんしん生命・日本アクチュアリー会の両者の主張・双方の考え方をアクチュアリージャーナルに掲載し、アクチュアリー会に会員に公開する、ということでしたが、残念ながら、最近手にした最新号にはその件について何も触れられていませんでした。

アクチュアリー会でしないのであれば、このHPを使ってでも、双方の主張をオープンにして、多くのアクチュアリーの勉強の材料とする、というのはいかがでしょうか。