4月18日号の週刊金融財政事情(いわゆるキンザイ)に、「保険経済価値規制の是非を問う」というテーマで特集が組まれています。
「市場整合的な保険負債の評価は規制、開示になじむか」というテーマの座談会と、関連する論文4つ、記事が1つ集められています。登場するのはコンサルティング会社、生・損保会社、金融庁に所属する人達です。
どれも非常に面白いのですが、特に座談会での生・損保会社の人の発言や、その座談会にも参加しているソニー生命のアクチュアリーの花津谷徹さんの論文が印象的です。
花津谷さんの論文は「生保経営におけるMCEV開示の意義」というタイトルで、MCEVと市場整合的なEEVとの違いとか、ソニー生命のMCEVと、T&Dグループ・第一生命のEEVとの、2008年3月期~2010年3月期の3期分の比較が載っています。具体的な数字がうまくまとまって比較されているので、非常にわかりやすい説明になっています。
さらにソニー生命の取組みについてかなり詳しく具体的に説明してあり、たとえば「07年度までのソニー生命はおよそALMとは対極の投資行動を取っていた。」とか「ソニー生命は08年度末にMCEVの半減により内部管理基準で資本不足に陥り・・・ちなみにこの時の法定ソルベンシーマージン比率は2000%を超えていた」といったドキッとするようなことが平然と書いてあり、経営とリスク管理の立場の違い、法定会計とMCEVとの視点に違いにどのように対応していくか、対応していったかという具体的な話が書いてあります。
EEVやMCEV、経済価値会計について、理屈の説明だけではなかなか具体的なイメージがつかめない人も、生々しい現実を垣間見ることで理解が増すのではないかと思います。
なおキャピタスコンサルティングの森本祐司さんの「経済価値ベース規制の流れを理解するために」という論文も、全体を理解するためのキーワードをうまく整理して解説してあり、勉強になります。
座談会にも参加し、また論文も書いている金融庁の植村信保さんによると
(植村さんのブログ)、
金財のこの号の記事は
きんざいのHP
から、今なら全てpdfで読むことができる(21日まで大震災に伴うサービスだそうです)とのことなので、金財が手近にない人はとりあえずネットで開いて印刷するなりダウンロードするなりしておくと良いかも知れません。
(時間切れで間に合わなかった人は、メールで知らせていただければ私がダウンロードしたものを内緒でお送りします。)
坂本さんのおかげで、キンザイのタダ読みができました。
EVの概念しか知らない私のとって、EEVとMCEVの違いには興味がなかったのですが、記事の内容はとても勉強になりました。ありがとうございます。
一昨年にソニー生命で起こったことは、リスク管理が経営の意思決定に影響を及ぼしたよい例ですね。今後、保険会社に経済価値規制が導入されるとこういった変化が加速されますね。花津谷さんの論文の最後のくだり「生保会社のコア・ビジネスとは」が印象的でした。生保会社のリスクカルチャーが変わるとなると、保険経済価値規制はインパクトがありますね。
今後の動きが気になります。