このページの訪問者数は、累計 
です。

私のコメント


   保険と数理のコンサルティング
      アカラックスに御用の方は、 ここをクリックしてください。
   保険代理店
      アカラクシアに御用の方は、 ここをクリックしてください。


このホームページに関するご意見等は、「練習帳」掲示板か、
直接、私 mail-admin@acalax.infoまでメールをください。

(2004年10月27日)
この私のコメントのページ、かなり長い間更新を怠ってしまいました。
その間、何もしなかったわけでもないのですが、仕事に追われたり考えなければならないことが多かったり、忙しくしていました。
昨日久しぶりに『練習帳』に二つの投稿をしました。
『変額年金の責任準備金積立方法の変更』
『無認可共済の規制に関して』
です。
どちらも業界を揺るがす(と言ってはいい過ぎですが)問題です。
読んでみてください。


(2004年5月9日)
2004年5月9日に『アクチュアリーの練習帳』に投稿したコメントをこちらにも転載します。

公的年金の制度改正の議論、福田官房長官の辞任でますます混迷の度を深めてきましたね。
民主党の菅さんも党首を辞めさせられることになるようです。なんだかんだで結局このまま何の議論もなく改正法案が国会を通過してしまいそうです。

今回の法案の中で一般の法案の解説の中でほとんど全くと言っていいほど書かれていない、しかしながらアクチュアリーとしては見過ごすことのできない変更についてコメントしたいと思います。
それは、財政再計算の制度をやめてしまう、ということです。

企業年金では少なくとも5年ごとの財政再計算は当然のこととして要請されています。
公的年金でも法律の中に少なくとも5年ごとの財政再計算とそれに基づく制度改正が明記されています。そのため5年ごとに年金制度改革が国会の大きなテーマになり、マスコミも本屋さんも年金大特集、ということになるわけです。
今回、厚生労働省は100年先を見越した総合的な制度改正を行ない、将来に向けての保険料率の引き上げも法律改正案の中に盛り込んだので、もう5年ごとの財政再計算は必要ない、ということで法律改正案の中では財政再計算の規定を法律から削除する、ということにしています。

もちろん100年間の収支見通しがそのまま実現するなどということはありえませんから、お役人さんも適宜保険料率を変えたり年金給付の水準を変えたりの変更が必要なのはわかっていますから、それなりの手は打っています。

まず第一に、財政再計算の代わりに少なくても5年ごとに『財政の現況および見通し』というものを作成して公表することにしています(国民年金法第4条の3、厚生年金保険法第2条の4)。これは財政見通しの見直し、というだけであってこれによって制度見直しをするわけではない、ということです。

次に制度改正に関しては財政が『著しくその均衡を失すると見込まれる場合には、速やかに所要の処置が講ぜられなければならない。』(国民年金法第4条の2、厚生年金保険法第2条の3)としています。言い換えれば『著しく均衡を失する』という状態にならなければ制度改正はしなくてもいい、ということです。

さらにその見通しの結果、積立金が維持できないと見込まれるときには
『政府は…年金たる給付を調整するものとし、政令で給付額を調整する期間の開始年度を定める』ことにしています(国民年金法第16条の2、厚生年金保険法第34条)。

『政令で』というのは言うまでもなく国会にかけることなく、閣議決定だけでOKということです。
国会で説明するには山ほどの説明資料を用意して国会議員の先生方に説明して歩かなければならないのに対して閣議決定であれば所管大臣と何人かの主だった大臣に根回しすればいいだけですからかなり楽になります。

さて、以上ですが、年金アクチュアリーの方々はこの財政再計算を止めてしまうことについてどのように感じておられるでしょうか。

5年ごとの大仕事から開放されてお役人は楽ができると思うかもしれませんが、その分、何かあったときに(当然今のままでずっといけるはずはないので保険料の引き上げか給付の引き下げかその両方が必要になると思います)すべての責任を問われるのはお役人ということになると思います。

大変ですが今の5年ごとの財政再計算をやめてしまうのはなんとも無茶な変更だと思います。

アクチュアリーの中でも年金の分野で仕事をしている人はほとんど企業年金(適格年金、非適格企業年金、厚生年金基金、確定給付企業年金あるいは確定拠出年金)の分野で仕事をしていて公的年金を専門にしている人はあまり多くないと思います。

私は年金アクチュアリーではなく、ほとんど生命保険の仕事しかしてきませんでしたが、公的年金も勉強してみるとなかなか面白くて最近チョットはまっているような感じです。

皆さんの意見をお待ちしています。

なお、念のため、今回の公的年金の改正案については ここ を見てください。

ついこの間までこのページに法律案も新旧対比表も載っていたのですが、今見るとその部分がなくなっていますので、それについては ここ をみてください。


(2004年3月30日)
2004年3月30日に『アクチュアリーの練習帳』に投稿したコメントをこちらにも転載します。

金財(週刊「金融財政事情」)の3月8日号に生保ALMが特集されています。

昨年末以来ようやく長期金利が上昇に転じ、債券の価格下落リスクが現実の問題として意識されるようになりました。生保会社が債務超過になると早期是正措置の対象になり、金融庁も業務停止命令その他を出さなければならなくなります。
これを避けるために昨年末事務ガイドラインを改定して、一定の条件付きで早期是正措置による行政命令を出さないことを明確にしたものです。

特集ではこのガイドラインの改定によって生保会社が安心して債券を買い増ししてALMを進めることができるというような雰囲気で記事が書かれています。この特集についてコメントする前にガイドラインの改正についてちょっとコメントしてみましょう。

早期是正措置は「保険業法第132条第2項に規定する区分等を定める命令」という省令によって規定されているものですが、法律の一部ですから例によって保険会社に対しては「・・・しなければならない。」という規定になっており、行政(内閣総理大臣)に対しては「・・・することができる。」という規定になっています。即ち、ソルベンシーマージン比率がマイナスになっても債務超過になっても、行政(内閣総理大臣)は業務停止命令を「することができる」のであって、「しなければならない」のではないということです。
「することができる」というのは言い換えれば「しなくても良い」ということですから、破綻した生保会社があっても何も「しなくても良い」ということになります。
これが普通の姿なのですが、今回のガイドラインの改正では逆に早期是正措置を発効「しない」と書いてあります。(正確には「・・・の場合には原則として・・・・・命令は発出しないものとする。」と書いてあります。)
(もともと「することができる」というのが本来的なルールですから「しない」こともできたわけですが、これを明確に「しない」と規定することにより、しようと思っても「できない」ことになります。通常はこんな規定の仕方はしないものです。余程東京海上が頑張ったんだろうなと思います。)

さてALM特集に戻りましょう。はじめに金融庁の監督部保険課の課長さんが5ページにわたって寄稿していますが、これがお役所の責任者のトップということでは、やはりあまり大したことは期待できません。
ALMというのは元はと言えばイギリスのレディントンというアクチュアリーの「イミュナイゼーション理論」から始まって、「資産・負債のデュレーション」という概念が生み出され、デュレーションを合わせれば金利の変動に対して資産・負債が同方向に同じだけ変動するので、資産・負債のバランスが安定する。そのためにそのデュレーションを合わせることが重要だということで、ALM (Asset Liability Matching)と名付けられました。
その後現実はそう簡単ではないことがわかってきて、デュレーションを合わせるというようなきちんとした対応ではなく、どのようにすることがより良い方策かと言う意味で相対的、比較的に有利な資産負債ポジションを追及するという意味で同じくALMではあってもAsset Liability Managementという言葉に変化したという経緯があります。このような流れを理解することなくALMの宣伝文句だけを真に受けているだけでは本当の問題の難しさもわからないし、正しい対処の仕方も判断できないだろうと思います。
金融庁の保険課長がこのごに及んでイミュナイゼーションを持ち出してきているというのは、その理解がまだその程度にしか達していないということを物語っているようです。

保険課長に続いて日本アクチュアリー会ALM研究会の座長の松山さんがALMについてもう少し詳しく説明しています。さすがに松山さんはALMについてはある程度理解しているようですが、今度は逆にALMが至上の目的、最優先の課題、ALMを推進することが無条件で良いことだ、というかのようになってしまっており、何のためにALMをするのか、その目的のためには本当にALMが有効なのかという視点が不十分になってしまっているような気がします。

最後に金財の記者のレポートがついていますが、ここではいくつかの会社(日生・住友・大同・東海あんしん)の資産構成を具体的に示しながら、金利上昇に伴なう債券価格下落の影響の度合いを比較しています。東京海上あんしん生命の資産構成はどう見ても極端に長期債券の比重が多くなっています。これではなりふり構わずガイドラインを変えさせたというのも理解できます。

しかし考えてみれば事務ガイドラインがどうの、早期是正措置がどうのというのは本質的問題ではありません。本質的なのはその保険会社の財務の健全性であるはずです。今回のガイドラインの変更がなかったとして、債券の市場価格が下がったからと言って、金融庁がそう簡単に東京海上あんしん生命に対して早期是正措置の行政命令を出せたとも思えませんし、仮にそれが出た所で東京海上あんしん生命側は十分理論的に対抗することができたはずです。
今回のガイドラインの変更により、金融庁は無条件に行政命令を出さなくても良い(というよりむしろ出せない)、という全く安全な立場を取ることができ、東京海上あんしん生命側も行政命令に対抗して申し開きをするということもなくなってしまいました。外から見るとあたかも何ごともなかったかのような「なべて世はこともなし」という世界になってしまいました。これでは金利の変動がどのように生保会社の財政状況に影響するのか、東海あんしんがどうして長期債券に極端にウェイトを置いた資産運用をしているのか、その結果債務超過になったらそれは問題なのか問題がないのかという議論を世に広く知らしめるせっかくのチャンスを封じてしまったことになります。何とも残念なことです。

最後に囲み記事でS&Pがコメントしています。「ガイドライン改正で払拭された懸念」ということですが、これも今回のガイドラインの改正で格付会社すら自分独自の評価(例えば見た目債務超過になっても財務的に大丈夫だ、などという評価)の必要性がなくなってしまったということを示しており、判断しなくても良くなったことを喜んでいるようではその格付けのレベルも大したことはないのかも知れません。

イミュナイゼーションはたとえば預金の受入れや債券の保有のように、キャッシュフローが一方向にしか現れない状況では有効に機能します。これが生命保険の債務のように将来にわたる保険料収入と保険金・解約返戻金の支払いというキャッシュインフローとアウトフローが両方存在するような状況ではそう簡単に取扱えないということは、実際にそれをやってみればすぐにわかります。
たとえば(10年満期の契約の責任準備金対応資産を20年国債で保有する、など)保険期間をはるかに超える長期の債券を保有しないと、資産と負債をマッチングすることができないなどということになります。

この問題を考えるとき、常に念頭に浮かぶのは生命保険の債務・責任準備金の債務としての性格です。現在ではこれが債務であることは誰も疑いませんし、将来の給付現価から将来の保険料収入現価を差し引いたものがその債務の額だということになっています。勿論これも正しい理解ですが、20年以上以前私が保険数理を勉強し始めた頃、目にしたイギリスの保険数理の教科書を思い出します。その当時すでに昔の教科書ということになっていたので今となっては「大昔の教科書」ということになるのでしょうが、そこに書かれていたのは将来の給付現価を負債として計上し、将来の保険料の現価を資産として計上する、資産負債両建ての計上方法です。差額をとってその差額だけを負債に計上する現在の方法に較べて両建ての方がはるかに多くの情報をもたらしてくれる表示方法だと思います。
それ以降折にふれ責任準備金をこのように両建て表示するという視点で生命保険計理(経理)の問題をながめることにより、差額表示だけではわかりにくい点がはるかに理解しやすくなったという経験をしています。

このALMの問題について言えば、このように責任準備金を両建て表示したとして考えると、巨大な額の負債とそれよりは小さいけれどこれも大きな額の資産と、その両方の金利変動による価格変化の影響を、それら負債・資産の額よりはるかに小さい差額の額に等しい(運用)資産だけでコントロールしようとするのですから、これは最初から(不可能と言わないまでも)とてつもなく難しいということが良くわかります。

現行のALMの視点は、差額としての責任準備金とそれに対応する資産という形のALMですが、視点を変えて将来給付現価としての負債に対して、将来保険料収入現価としての資産と、差額としての責任準備金対応資産の合計の資産というように考えた方が生保のALMはうまく機能するのではないか、少なくとも見通しを立てやすくなるのではないかと思いますがいかがでしょうか。


(2004年3月22日)
2004年3月22日に『アクチュアリーの練習帳』に投稿したコメントをこちらにも転載します。

警察の不正経理、裏金作りの報道がいろんな所でされています。警察幹部が謝っているところがテレビで放映されていますが、言葉を変えてみればこれは公金横領ということになるはずです。この公金横領で誰かがつかまったり告訴されたりというニュースは耳にしません。犯人はいずれにしても警察の人ですからこれも当然と言えば当然かも知れません。

年末に華々しく弁護士を辞めると記者会見して詐欺罪による起訴を免れた中坊さんのその後も全く報道されていません。念のため大阪弁護士会のホームページを見て見ましたが、案の定今だに弁護士会所属の弁護士として紹介されていました。

こんな話であきれたり腹を立てたりしていても仕方がないので、久しぶりに本の紹介をします。
「虚妄の成果主義」という高橋伸夫さんの本です。

初めに本のタイトルを読んだときは、何を今更(今頃になって)成果主義のイカガワシサを批判する本を書いたんだろうと思って読む気にはならなかったのですが、何となく気になっていました。
その後どこかでこの本の著者があの名著「できる社員はやり過ごす」の著者だと書いてあるのを見つけて、引っかかっていた理由がようやくわかりました。
この「できる社員はやり過ごす」についてはこのホームページで以前紹介したことがあります。本当に名著です。
こうわかった以上、「虚妄の成果主義」も読むっきゃないということになります。

早速買って読んでみたのですが、期待に違わずこれもまた名著です。
タイトルに「成果主義」とあるように成果主義が中心的なテーマにはなっていますが、それよりもむしろその言葉をきっかけとした経営学全般に関する本です。
成果主義などには関係なく、経営学全般に関するわかりやすい教科書として推薦できると思います。欧米の学説を鵜呑みにして紹介している教科書ではなく、高橋さん自身で納得するまでしっかり読みこなし理解した上での解説ですから、そこらの一般の教科書とはニ味も三味も違います。

勿論成果主義についてもそれがうまく行くはずがないことを明確に示していますが、それにしても人は忘れやすいものだということをはっきりと示してくれているのに納得しました。
一時もてはやされその後明確に否定された考え方も何十年かして皆が忘れかけ、その頃のことを知らない若い人が増えてくると、その否定された考え方がまた新しい画期的な考え方として紹介され、もてはやされるということです。
バブル経済華やかなりし頃、合併・買収・多角化等々の言葉がもてはやされ、その後近頃ではその反動で「選択と集中」などという言葉がもてはやされていますが、このパターンも何度も繰り返されているものです。とは言え、バブルのまっ最中に「選択と集中」などとはとても言い出せるような雰囲気ではなかったのも事実です。今はバブル崩壊の痛手もようやく癒えつつあり、経営も前向きに「選択と集中」をスローガンにするだけの勢いが出てきたんだろうと思います。
今後さらに景気が上向いてくると、そのうちにまた合併・買収・多角化、大きいことは良いことだ・・・という時代になるんでしょうか。

毎年毎年多くの人が様々なことを考え文明は確実に進歩しているように見えますが、それと同時に人は本当に忘れっぽいということを思い出す意味でもこの本を読んでみる値打ちは十分あると思います。


(2004年2月1日)
年が変わって、このページも新しくしました。
今までのコメントはこのページの最後についているリンクからご覧下さい。

新年明けましておめでとうございます、という暇もなくもう2月になってしまいました。
暦の本などを見ると、どうやら今年は動乱の年だそうです。

いよいよ自衛隊のイラク派兵が本格化しそうです。
マスコミや国会議員などが派兵といわずに派遣、という言葉を使っているのはやはり意図的なものがあるのでしょうか。派兵、という言葉を使えば議論がもっとわかりやすくなりそうなのですが。
軍隊が武器を持って他国にいくのですから、派兵以外の何物でもないと思います。日本では自衛隊の派遣、といっていても、これを英語で理解しようとすれば当然、自衛軍の派兵、ということになると思うのですが。
世界第2の経済大国がいよいよ軍隊を出す、ということになると、目立ちたがりのテロリストにとっては格好の目標になるでしょうから、攻撃は避けられないでしょう。実際に交戦となったとき、あるいは犠牲者が出たときに、即時撤退、ということになるのかナニオとばかりに軍事力を増強するのか、いずれにしても目が離せないことになりそうです。

公的年金の問題もやはり問題先送りで決着がつきそうです。
保険会社の外に出て、営業の現場や消費者に近い所で生命保険についていろいろ考えていると、この公的年金の話は非常に重要な要素になります。おかげでいろいろ勉強することが出来ました。
公的年金の問題は厚生省のお役人と学者の先生、あとは社会保険労務士やFPの皆さんが議論に参加しますが、山中鹿之介も言っているようにアクチュアリーももっと議論に参加すべきではないか、と思います。

銀行窓販の議論も始まりました。マスコミでは大騒ぎを演出していましたが、やはりこれも先送り、ということになりそうです。
無認可共済の話も話題に取り上げられていますがやはりお役所も本気ではなさそうなので、先送りでお茶を濁すだけのような気がします。

変額年金の責任準備金の計算について、アクチュアリー会の特別部会の報告が公表されています。外資系生保の問題意識は新契約費の繰延によって責任準備金を軽くしたいということだったはずなのに、アクチュアリー会のほうの議論は最低死亡保障のための責任準備金の積み増しについてだけ議論しているようです。

そんなこんなで今年も様々な話題でにぎやかになりそうです。
この練習帳ももう少しにぎやかにしたいと思っています。

今年もよろしくお願いいたします。



2003年12月までの私のコメント
2002年12月までの私のコメント
2001年12月までの私のコメント