ライフネット生命の筆頭株主が変わったようです。
ライフネット生命が4月25日に発表していますが、今までの筆頭株主だったマネックスグループが持株の全てをスイス・リに売却して、ライフネット生命はスイス・リと業務提携契約を結んだということです。通常業務提携の発表は両方の会社から発表されるのですが、今の所スイス・リからの発表は見つかりません。
マネックスグループはライフネットの立ち上げ時からのスポンサーでしたが、全持株を41億円で売却して23億円の売却益を得たということですから、ベンチャーキャピタルとしては満足できるリターンだったのでしょうか。現経営陣はスポンサーに対する責任は果たしたということになるのでしょうね。
売却価格は1株あたり722.6円。これは株式公開以来の最安値に近い水準で、最近の株価が800円前後で動いているのに比べれば9掛け位の水準です。9掛けでもマネックスグループとしては利益を確定してしまいたかったんでしょうね。
でも世界的な保険会社が筆頭株主になって良かったですね。
保険会社には保険業法113条繰延資産といって、開業当初の5年間の事業費の一部を開業後10年までの期間に繰り延べるという、特別の繰延資産があります。ライフネット生命は今までこれを使ってきているので、毎年5億円~15億円(2013年3月期決算では多分18億円程度)、利益をかさ上げしています。今期(2014年3月期)からはその繰り延べができなくなり償却のみになりますから、今後5年間は毎年11億円ずつ利益が下押しされることになります。今期だけ見ると、前期18億円のかさ上げが今期11億円の下押しで、トータル約30億円の対前年度マイナス効果が発生するということになりそうです。
この113条の繰り延べによって、ライフネット生命は2013年3月期の第3四半期(2012年12月まで)で黒字の決算を発表しています。多分2013年3月期の年度決算でも黒字になるんだろうと思います。これが2014年3月期ではまた大幅な赤字決算ということになりそうです。
この113条繰り延べというのは、保険業法に規定されたごく真っ当な経理処理ですから、これで赤字になったからと言ってライフネットの収益力に大きな変化があったというようなことにはなりません。とはいえ、ライフネットに投資している人は必ずしもこのあたりの仕組みをちゃんと理解していないかも知れないので、決算の数字だけを見るとビックリしちゃうかも知れませんね。そんな時スイス・リが筆頭株主になっているというのは、安心感につながるかも知れません。
スイス・リというのは再保険会社ですから、ライフネット生命と業務提携してもあまりメリットがありそうにも思えません。しかし再保険会社というのは投資からの収益のために、株主配当だけでなく再保険料収入も使うことができます。今後ライフネット生命の再保険収支の変化は注目です。