『この国のかたち』-憲法とは何か

このブログで憲法の話を始める前後から、KENさんからは何度も「憲法とは何か」という質問を受けています。

芦部さんの憲法ももうすぐ終わりそうになり、ようやくこの質問に答える準備ができたように思います。

で、その答えですが、憲法とは『この国のかたち』です。

『この国のかたち』というのは司馬遼太郎さんが使った言葉ですが、その場合は日本の伝統・文化の面からの国のかたちという意味です。

文化の他にも、地理的な意味での国のかたち、地勢学的な意味での国のかたち、経済的な意味での国のかたち、等々いろいろありますが、憲法というのは法律・制度の意味での国のかたちを定めたものだと思います。

憲法という言葉は聖徳太子の十七条の憲法とか、宮本武蔵にやっつけられた吉岡憲法なんて人の名前もありますが、国の基本法としての憲法はこれらの言葉とは別のものです。

「憲法」という言葉は大日本帝国憲法を定める時、外国から輸入された言葉の訳語として採用されたものですから、その元となった言葉の意味を考えてみようと思いました。

憲法は英語ではConstitutionsといいます。この言葉の動詞はconstituteという言葉で、これは構成する、形づくるというような意味です。ドイツ語のVerfassungというのも、どうやら同様の意味のようです。そんなことを調べていたら、ごく自然に「国のかたち」という言葉が浮かんできました。制度的・法律的に、この国がどのようにできていてどのように機能するか、その設計図が憲法だということです。

この答をみつけてうれしくなって、さてどうやって書こうかと思っていた時、図書館でウロウロしていて三浦朱門の「そうか。憲法とはこういうものだったのか」という本を見つけました。

三浦朱門というのは作家で文化庁長官なんかもやって、同じく作家の曽野綾子さんを奥さんにしている人です。で、この本がまた面白い本で「七人の侍」から始まって、モーセの十戒・ハムラビ法典・ベニスの商人の話をしながら、ローマ法・マグナ・カルタに至り、日本の話では五箇条のご誓文から大日本帝国憲法・日本国憲法と、憲法とは何かについて考えていきます。そして最後に
【日本国憲法が今の「この国のかたち」を正しく反映しているか考える時がきた】
というタイトルで締めくくりをしています。

やはりこの本でも憲法とは「この国のかたち」だと言っているのを見て、私の答と同じだと確認することができました。

さらに石破茂さんの書いた「日本を、取り戻す。憲法を、取り戻す。」という本を、図書館で半年待って借りて読んだのですが、石破さんは大学は法学部の卒業で、学生時代に法学部で憲法を勉強した時、清宮さんの本で勉強した、と書いてありました。

私のブログにもフェイスブックで良くコメントしてくれる下郡さんも学生時代に憲法をその清宮さんの憲法の教科書で勉強していて、芦部さんの本だけでなく清宮さんの本も読むように、とアドバイスしてくれていたので、改めて借りて読んでみました。

その本の最初に憲法の意味が説明してあり、ConstitutionsあるいはVerfassungという言葉は、憲法という意味で使われる時もあり、また、現実の国の体制、実力関係、政治状態などを意味することもある、と書いてあります。すなわち、事実的Verfassungと法的Verfassungがあり、この法的Verfassungが日本でいう憲法だということです。

これで決まりです。憲法は、法的な意味での『この国のかたち』です。日本国民が、この国を、このような国にしたい、このような国でありたい、という、国の制度、組織、法律に関する設計図を書いた『この国のかたち』が憲法です。

でもこの清宮さんの本、ちょっと見た限りでは非常にすっきり書いてあって、非論理的なところもなく、突っ込みどころも見当たりません。同じく憲法の教科書なのに、芦部さんのものとはまるで違います。もしかすると芦部さんの本はやはりかなり特殊な本だったのかも知れません。芦部さんの憲法はもうすぐ終わりですが、やはりこの清宮さんの本も読んでみるべきでしょうか。

ちゃんと読むとなったら借りるんじゃなくやっぱり買う必要がありそうです。もう新しい本は出ていないようなので、古本をアマゾンで買うべきでしょうか、神保町の古本屋街に買いに行くべきでしょうか。悩ましい所です。

2 Responses to “『この国のかたち』-憲法とは何か”

  1. 白根 毅之介 より:

    清宮四郎の憲法の本(有斐閣)ならありますので買わなくていいです。差し上げます。有斐閣の法律学全集では宮沢の憲法と清宮の憲法の2冊に分かれています。よかったら両方差し上げます。
    来週にでも年末のごご挨拶旁々伺います。

  2. 坂本嘉輝 より:

    白根さん、うれしいですね。
    宮沢さんの方はあまりうれしくないかもしれませんが、2冊ともありがたく頂きます。
    宮沢さんと芦部さんがどれくらい同じでどれくらい違うのか、師弟の比較をするのも面白いかもしれません。

    おいでの際はご一報ください。

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