『統計学が最強の学問である』という本を読みました。
何か知らないけれど統計学の方がベストセラーになっているということで、読んでみようと、図書館で予約し、1年がかりでようやく借りることができました。さいたま市立図書館にはこの本の在庫が20冊もあるんですが(図書館自体、分館も入れると24もあります)400人以上の予約が入っているので、今から新規に予約したらやはり1年位は待つことになりそうです。
で、本の中身ですが、タイトルとはまるで違います。統計学が最強の学問であるなんてことは言ってません。統計学の本でもありません。本の趣旨は統計学や統計データに騙されないため、統計学や統計データの取扱についてそれをどのように理解したら良いか判断する能力(リテラシー)が大切だということのようです。あるいは統計を使ってかなりいい加減な主張をする人も多いから、気を付けなければいけないということのようです。
ですからこの本を読んで、統計学がわかるわけではありません。統計リテラシーが身につくわけでもありません。リテラシーが大切だということが、何となく分かるだけです。でも統計や統計学に関するいろいろな話題が盛りだくさんに紹介されているため、読んでいるうちに何となくわかったような気持ちになるかも知れません。
実際に統計学の説明をしているわけではないので、その分気楽に読めます。正確な知識は得られなくても、統計や統計学に関するいろんな言葉を覚えることができます。この本を読んで興味を持ったら、今度はちゃんとした本で勉強するという読み方もできそうです。
ある程度統計学を知っている人は、楽しく読めるかも知れません。統計学を知らない人は、統計学についてきちんとした説明なしで新しい言葉が次々に出てきて議論がどんどん進んでしまうので、もしかすると途中で読みたくなくなってしまうかも知れません。
この本の後ろの方では『統計家たちの仁義なき戦い』(これもすごいタイトルですね)として、6つのジャンルの統計家の統計に対する姿勢・統計の考え方の違いについて書いています。すなわち社会調査を仕事とする統計家・(医学の一部の)疫学や生物学の分野の統計家・心理統計家・コンピュータを使ってデータマイニングをする統計家・計量文献学などテキストマイニングをする統計家・計量経済学を専門とする統計家、それぞれ考え方もバラバラでお互いにお互いの統計の考え方の批判をし合っているようで、これで本当に一つの統計学としてのまとまりが可能なのかという気もしますが、部外者からするとなかなか面白い見物(みもの)です。
この本が他の出版社から出ていたとすれば、多分ほとんど売れなかったんじゃないかなと思います。ダイヤモンド社が出版したということでベストセラーを作る、出版した本を無理やりベストセラーにしてしまうという意味で、さすがにダイヤモンド社というのはすごいなと感じました。