『共産党宣言』

ピケティの『21世紀の資本』の中でピケティは、『マルクスは若くして共産党宣言を書き、その後生涯をかけてそれを正当化するために資本論を書き続けた』と書いてあります。

マルクスの資本論は何度か読もうとしたことがありますが、あまりにも非論理的・非科学的な内容で読み続けることができなかったのですが、このピケティのコメントを読んでシメタ!と思いました。

すなわちピケティの言っていることが正しいとすれば、マルクスが資本論で正当化しようとしていた共産党宣言を読んで、その内容が間違いだと確認することができれば、それで自動的に資本論の中味が間違いだということになりますので、資本論自体を読む必要がなくなるこということですから(どんなに立派な証明でも、結論が間違っていれば自動的にその証明も間違っているということです)。

資本論は岩波文庫で9冊になり、全部で3,600頁にもなりますが、共産党宣言の方はせいぜい文庫本で50ページ位のものですから、簡単に読めます。

実は資本論を読み始めた頃、友人から『資本論というのは経済学の本というより政治的文書だ』と教えてもらったことがあり、その時はその意味があまり良くわからなかったのですが、上記のピケティの言葉でその意味が良く分かりました。

で、共産党宣言ですが、歴史に関するコメントであれ、経済に関するコメントであれ、明らかに間違っていることのオンパレードですから、ごく簡単に目的を達してしまったということです。
マルクスが最初に共産党宣言を書いたのが1848年、その後の170年の歴史の知識の蓄積やその後の世界の変化を見るだけで、この共産党宣言の間違いは明らかです。

もうこれで、いつか時間をみつけて資本論を読んでみようなんてことは考えないで済みます。その意味でピケティの600頁もの本を読んだ価値は十分にあったなと思います。

この『共産党宣言』というタイトルですが、実は直訳すると『共産主義者の集まりのマニフェスト』、1872年に再販した時のタイトルが『共産主義者のマニフェスト』というものです。マニフェストというのは例の民主党が大好きな、あのマニフェストです。このタイトルを『共産党宣言』と訳したのは確かに格調高いと言えば言えそうですが、むしろコケオドシと言った方が良いのかも知れません。

いずれにしてもこれだけ間違いだらけのちっぽけな本が歴史的にあれだけ大きな影響を与えた、ということでも一読の価値はあると思います。

たかだか文庫本50ページくらいのもので、いたるところ間違い(独断と偏見)だらけの本ですが、その間違いを数え上げるのも面白いかも知れません。

お勧めはしませんが、興味があったら読んでみてもいいかも知れません。

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