この本は、昭和初期から第二次大戦の前後までの期間、明治維新に続く(あるいはその完成を目指した)昭和維新という名の一連のテロリズム事件についてまとめて書かれているものです。本部500ページ強のちょっと大部な本です。
著者は“維新の志士”という言葉を使っていることからも分かるように、心情的にはどちらかと言うとこのテロリスト達の側に立っていますが、このテロリスト達に対する思い入れが強過ぎるということではなく、またテロの対象となった人達についても『悪者だ』と決めつける書き方でもなく、淡々と事件の経緯を記述しているので、テロリスト達に共感しない人にもあまり困難なく読めると思います。
この一覧のテロリズムのピークとなるのは、5・15事件、そして2・26事件であったりするのですが、その前後の未遂に終わったテロ計画等についても書いてあり、また登場人物も同じ人物が入れ替わり立ち代わり現れたりして全体像をつかむのに便利な本です。
例えば2・26事件について言えば、真崎教育総監更迭問題・永田鉄山斬殺事件・その犯人の相澤中佐の公判闘争、そして2・26事件そのもの、そのあとの東條英機暗殺計画と、7章にわたって書かれています。
個々の事件の内容についてはそれほど突っ込んで詳細に書かれているわけではありませんが、例えば相澤中佐の裁判と2・26事件がどのように密接に関連していたのかなどが良くわかるようになっています。
期間的には昭和5年から20年位、今から85年前から70年前位の間の出来事です。日本でもこのようにちょっと前までテロリズムが日常的だった時代がある、ということを思い起こすのにも良いと思います。
お勧めします。
今ではたとえば『アベシネ』とか『日本死ね』とかでも、デモで叫んだりネットで言い散らしたりすることはあっても現実にテロを企てて人殺しするようなことはほとんどなくなっています。日本も本当に豊かで良い国になったなと思います。