ING

土曜日の日経新聞の朝刊1面に「ING日本撤退/生保、香港企業に売却へ」という見出しで、結構大きな記事が出ました。

土曜日のことだし、今頃紙の新聞を読む人もあまり多くはないかもしれませんが、昔INGにいた人間の一人として、ちょっとだけコメントします。

この記事、特にこの見出しですが、「嘘じゃないけど何だかなあ」という感じのものです。

確かにINGが日本の生保事業を売却しようとして買い手探しをしていたのは事実ですし、「売却」のことを「撤退」と表現するんだと言われればその通りかも知れませんが、この売却の方針はもう何年も前に決まっていたことで公表もされており、今更騒ぐほどのことではありません。

もし騒ぐとしたら、ようやく買い手がみつかったようだということと、それが名前の通っている保険会社や金融グループではなく香港の実業家グループになりそうだということと、売却額がたったの数百億円になりそうだとのことだ、というくらいです。

INGは例のリーマンショックの時に公的資金の注入を受け、それを返済するにあたり銀行と保険の総合的なグループであるものから、保険事業を切り離すことを求められていました。これはその当時公表され、日経新聞の記事にもなっていると思います。

INGというのは、今でもサッカーの国際試合なんかの時に良く見る、オレンジ色の「ING」の文字とライオンのマークの会社です。このオレンジ色とライオンというのはオランダ王室のシンボルで、日本で言えば「菊のご紋章」といったものです。

もともとINGというのは銀行のグループと保険のグループが合併してできたグループなのですが、その銀行の中心はポストバンク、民営化する前は国のゆうちょ銀行だったわけです。そのため民営化しINGになった後も、オレンジ色とライオンのマークを使い続けているわけです。

リーマンショックでダメージを受け事業を縮小して身軽になるにしても、女王様のポストバンクを売却することもできないので、保険の方を切り離して売却することになったわけです。

全体まとめてどこかに買い取ってもらうのでも切り売りするのでも、あるいはどうしても買い手がみつからなければ株式市場で公開して一般から多数の買い手を募るのでも何でも良いから、とにかくINGから切り離しINGの名前を使えなくする、というのが約束だったようです。

日本の生命保険事業は、逓増定期保険で経営の基礎を確立したのですが、その後変額年金保険の販売に注力し、他の変額年金保険を扱っている会社と同様、大きなダメージをくらってしまったということです。この売却額数百億円というのは安いなという気もしますが、変額年金保険のダメージが実際どれ位大きかったのかわかりませんから、何とも言えません。

また変額年金保険を売る過程で、オランダ本社との間でかなりの額の再保険取引もしているはずですが、この再保険取引の取扱についても外部からでは何もわかりませんから、なおさらこの売却額についてはコメントのしようがありません。

なおこの新聞記事を受けて、ING生命は例によって「まだ何も決まっていない」というリリースを出していますので、もしかするとこの話も何もなくなってしまうのかも知れません。

ING生命で働いている人にとっては、できるだけ早い時期に将来の方向性がはっきりする方が良いんでしょうが。

Leave a Reply