‘時事雑感’ カテゴリーのアーカイブ

ライフネット生命の113条繰延資産の一括償却

2017年4月24日 月曜日

4月19日にライフネット生命は、113条繰延資産の償却を、従来からの毎年一定額の償却をする方式を変更して、2017年3月期に一括して償却する(とはいっても2年分だけですが)、と発表しました。

この発表のニュースリリースによると、状況は次の通りのようです。

ライフネット生命は113条繰延資産の償却費負担のため、経常損益がなかなか黒字にならないので、『113条繰延資産償却費考慮前の経常損益』という独自の指標を使って決算の損益を評価しています。この評価によると2016年3月期は584百万円の黒字(実績)、2017年3月期は88百万円の黒字(見込)、2018年3月期は赤字(見込)。これから113条繰延資産償却費を控除すると、本来的な経常損益は2016年3月期は475百万円の赤字(実績)、2017年3月期は972百万円の赤字(見込)、2018年3月期は10億円超の赤字(見込)ということになります。

今回の『113条繰延資産の一括償却』により、経常損益は2016年3月期475百万円の赤字(実績)、2017年3月期は2,031百万円の赤字(見込)、2018年3月期も若干の赤字(見込)ということになります。

いずれにしてもライフネット生命は2019年3月期の経常損益の黒字、というのは、何としても実現したい目標のようです。そのためには2017年3月期、2018年3月期の経常損益は中途半端な黒字になるよりむしろ赤字にしておいて、その分2019年3月期の黒字を確実にした方が望ましいということでしょう。

『113条繰延資産の一括償却』をしない場合、経常損益は2016年3月期に5億円の赤字(実績)と、もうちょっとで黒字になる所まで来たのが2017年3月期に10億円の赤字(見込)、さらに2018年3月期にさらに赤字幅を広げて(見込)から、うまく行けば2019年3月期に黒字になります。当分赤字が続く、ということです。

『113条繰延資産の一括償却』をした場合、経常損益は2016年3月期の5億円の赤字(実績)のあと、2017年3月期に20億円の大幅赤字(見込)となって底を打ち、、2018年3月期には赤字(見込)ではあっても大幅に改善され、2019年3月期には黒字(見込)になる、という話になります。

この6月には出口さんが会長を辞めます。2017年3月期の大幅赤字を出口さんの置き土産にして、岩瀬体制になったら急激に業績が改善し、2年目には確実に黒字転換する、というストーリーはなかなか魅力的な話かもしれません。

ライフネット生命も株式を公開している会社ですから、株主に対して業績をお化粧したい気持は分かりますが、保険会社の会計について十分な知識のない一般の株主を惑わすようなやり方はいかがなものか、と思います。

死亡率の改定

2017年3月27日 月曜日

アクチュアリー会では、生命保険の保険料や責任準備金の計算の基礎となる標準生命表を改定することになったようです。
現行の標準生命表2007を改定し、標準生命表2018(仮称)として2018年度(平成30年度)から使用する予定だ、とのことです。
改訂するのは死亡保険用の分と、(医療保険などに使用する)第三分野用の分で、年金保険に使用する年金開始後の分については改訂しないで現行の2007の生命表をそのまま使うようです。

アクチュアリー会では、この生命表の改定を一般に公表するに先立ち、まずはアクチュアリー会の会員に公表し、意見公募(パブリックコメント)の手続きに入っています。

死亡率の改定の方向は、死亡保険用の分も第三分野用の分でもおおむね、死亡率の低下の方向ですから、死亡保険は保険料が安くなり、医療保険は保険料が高くなる方向で影響が出ることが見込まれます。

一般宛ての公表はこの意見公募の手続きが終わってから、ということになるんでしょうから、もうしばらく先の話になると思います。

生命保険会社のアクチュアリーさんたちは、保険料がどう変わるか、会社の収益がどう変わるだろうか、とかなり大変な大量の試算をさせられることになりそうです。

Google Apps

2017年3月17日 金曜日

GoogleがGoogle driveというクラウドのサービスをしています(G-mailやGoogle+なんかもその一部です)が、その中でspreadsheetという表計算ソフトが使えるようになっています。

Excelと同じようなものなのですが、このspreadsheetではシートの中のデータを使ってクエリを実行するという機能が付いています。

もちろん本格的なデータベースではないので、いくつものテーブルを組み合わせて複雑なクエリを実行させる、というわけにはいきませんが、1つのシートの中の四角の領域を一つのテーブルとみなして、そのテーブルに対してSQL文を書くと、その結果を指定した領域に出力してくれるというものです。

私のやる計算では、データベースのいくつものテーブルを組み合わせた結果をCSV fileで受け取り、それにSQL文を適用すれば結果が得られる、なんて作業がかなりありますので、このGoogle AppsのSpreadsheetはもしかするととても便利なツールになるかも知れません。

作業はGoogle driveのクラウド上で行われるため、PCの負荷もなしで結果だけブラウザあるいはメールで受け取れるようになっています。

もし興味があったらGoogle Appsを検索してみて下さい。なかなか楽しめると思います。

企業用の有料のサービスもあるようですが、15GBまで無料のサービスがあるので、とりあえずはその方で十分楽しめます。

『公的年金の保険原理を考える』

2017年3月6日 月曜日

日経新聞の『経済教室』のページに、しばらく前から『やさしい経済学』の連載として標記の『公的年金の保険原理を考える』というのが掲載されています。書いているのは、大妻女子大短大の教授の玉木さん、という人です。

この連載は年金問題を論じる、いわゆるコメンテーターや専門家などでも良く分かっていない基本的な所を非常に丁寧にやさしく説明してされているので、お勧めです。

しばらく前には同じ欄に慶応大学の権丈先生が『公的年金の誤解を解く』というタイトルで連載していました。この玉木先生は、この権丈先生の連載よりさらに基礎的な仕組みについて丁寧に説明しているので、権丈先生の連載を読むための準備運動として読むのも良いかも知れません。

公的年金の仕組みを理解するための標準的な資料として、教科書になると良いですね。

アカラクシアの解散

2017年2月22日 水曜日

私が仕事をしているアカラックス株式会社という会社は、『アカラクシア』という子会社を持っていました。保険の代理店をするのに、コンサルティングの会社とは別会社にしておいた方が良いだろうということで作った有限会社ですが、委託型募集人はダメという保険業界のルールの変更に伴い、保険の代理店は廃業し、しばらく休眠状態にしておりました。

いつまでも毎年住民税の均等割7万円を払っていても仕方がないのでこの会社を整理することにしたんですが、単純に『解散・清算』するというやり方と、親会社のアカラックスに『吸収合併』されて消滅するというやり方とがあります。色々検討して『吸収合併』の方を選択し、何度か法務局や税務署・税務事務所に相談に行って、この1月1日に正式に消滅しました。

それを受けて吸収合併と消滅の法人の登記を行ない、登記のできるのを待って、消滅会社の税務申告を済ませました。法人税・事業税等はなし。住民税は均等割の7万円の半分の3万5千円を申告と同時に納付して終りなのですが、預金の利子に対する源泉所得税の還付だけが残ってしまいました。たった3円なので別に還付して貰わなくても良いようなものなんですが、変則的な取扱いもかえって面倒だろうと、法人税の申告書には還付してもらうように書いて提出しました。

で、今日その還付について『還付しました』という葉書が税務署から送られてきて、これにてアカラクシアとしての手続きは無事終了です。

あとは親会社のアカラックスの年次決算の法人税等の確定申告で、今回の吸収合併に伴う合併差損等の処理をきちんと済ませば良いだけになりました。

登記のための色々な書類を用意したり官報に公告を出したり、いろいろ手続きがありましたが約半年弱で何とか無事終了。

なかなか面白い経験ができました。

ケインズ 『一般理論』の最後の部分

2017年2月8日 水曜日

一般理論の感想文、途中で止まってしまっていますが、トランプ大統領の登場で思い出した部分があるので、コメントします。

それは、一般理論の最後の24章『一般理論の誘う社会哲学-結語的覚書』の最後の、第5節の部分です。これは時折引用されることがあるので、覚えている人も多いかも知れません。

『思想というものは、もしそれが正しいとしたら-自分の書くものが正しいと思わない著者がどこにいよう-時代を超えた力を持つ、間違いなく持つ、と私は予言する。』

『経済学者や政治哲学者の思想は、それらが正しい場合も誤っている場合も、通常考えられている以上に強力である。』

『誰の知的影響も受けていないと信じている実務家でさえ、誰かしら過去の経済学者の奴隷であるのが通例である。虚空の声を聴く権力の座の狂人も、数年前のある学者先生から(自分に見合った)狂気を抽き出している。』

『たとえば、経済学と政治哲学の分野に限って言えば、25ないし30歳を超えた人で、新しい理論の影響を受ける人は、それほどいない。だから役人や政治家、あるいは扇動家でさえも、彼らが眼前の出来事に適用する思想はおそらく最新のものではないだろう。』

『早晩、良くも悪くも危険になるのは、既得権益ではなく思想である。』

これらの言葉、トランプ政権の今後4年間、あるいはトランプさんが大統領になった後のアメリカと世界を考える時、じっくり味わいたい言葉だと思います。

トランプさんの信じている経済学、政治哲学がいったい誰の、どのようなものなのでしょう。ノーベル経済学賞の受賞者を輩出しているアメリカの経済学界は、トランプさんをうまく説得できるでしょうか。

千代田区長選の電話アンケート

2017年2月2日 木曜日

先週の日曜、会社に電話がありました。
日曜なのになんだろう、と思って電話を取ると、千代田区長選の電話アンケートでした。

私は東京都民でもないので、この選挙の有権者でないため、本来的にアンケートに答えずに電話を切るべきだったんでしょうが、たまたま暇だったので、適当に電話のボタンを押して答えてしまいました。
千代田区は住民がかなり少ないため、無作為的に電話を掛けてうまく千代田区民の個人の固定電話に掛かる、というのはなかなか大変な話で、予定の回答数をこなすのは大変なんだろうな、と思います。
1時間ほどたったところでまた同じアンケートの電話がありましたが、最初のアンケートには答えて2番目のアンケートには答えない、というのも失礼な話なので、またまた適当に電話のボタンを押して答えてしまいました。

回答の内容はホントにいい加減なものなので、選挙情勢の分析には何の影響も与えることはないと思いますが、それでもこの2回分の回答はコンピュータで集計されて報告されることになるんだろうな、と思い、不思議な気がしました。

a global Britain

2017年1月19日 木曜日

イギリスのメイ首相のEU離脱に関するスピーチが話題になっていますが、そのスピーチの映像のバックの壁紙にこの言葉が書かれています。

最初は『Great Britain』と書いてあるのかと思っていたのですが、よく見ると『a global Britain』と書いてあるようです。

ここで、冠詞が定冠詞の『the』出なく、不定冠詞の『a』となっている、というのは、『これっきゃない』ということではなく、『いろいろあるうちの、一つの』という程度の意味です。
さらに『a』は英語では定冠詞ですが、すぐ隣のフランスではアクセントがついて『à』となって、前置詞になります。その意味は『…の方へ、…に向かって、』というくらいの意味です。 すなわち、イギリスは狭いEUの枠から出て、世界のイギリスになるぞ、というくらいの意味です。

なかなかカッコいいキャッチフレーズだと思うのですが、マスコミであまり取り上げられていないようなので、ちょっとコメントしました。

山内昌之 『中東複合危機から第三次世界大戦へ』

2016年12月5日 月曜日

この本は図書館で予約して何ヵ月もかかってようやく順番がきて読んだんですが、予約などせずさっさと本屋さんで買って読むべきだったなと思いました。で、読み終わって早速本屋さんで買いました。

中東複合危機というのは、イラク・シリアで進行中のISを中心とする戦争のことで、これが第三次世界大戦につながる、あるいはもうすでに第三次世界大戦が始まっているのかも知れないという現状を踏まえ、現実にどこで何が起こっており、当事者達は何をどう考えてどうしようとしているのか、をわかりやすく解説している本です。

シリアではアサド大統領の政府軍、反政府軍としてはIS・クルド人・スンニ派アラブ人・トルコ系民族等が入り乱れて互いに戦争しており、それがイラクに及んで、イラクではISに対してはシーア派政府軍、クルド人勢力、スンニ派民兵等が戦争をしているわけですが、やはり中心となるのはISです。これがどのようにできてきたか、何をしているのか、その戦争がモダン・プレモダン・ポストモダンの様々な形態での戦争が混在して進行しているという有り様を丁寧に説明しています。

その説明のためにイスラム教・ムハンマド(マホメット)についても簡単に解説していますが、これがまさに簡にして要を得ている、何とも見事なものです。

イスラム教の歴史の概略を説明して、イラクという国がどういう国か、トルコという国がどういう国か、シーア派とスンニ派とは何が違うのか等も説明しています。

その上でISが何をしていて何をしようとしているのかを説明し、その後現実にシリア・イラクで進行中の戦争について説明しています。

最初はアラブの春の一つとしてシリアで反政府運動が起こり、それに対してアサド政権が頑強に抵抗する中で、反政府運動の中からISが生まれ、それがアサド政権だけでなく、他の反政府勢力にも戦争を仕掛け、シリアの中で攻められるとイラクに移ってイラクでも反政府運動を拡大し、さらには中東にとどまらず、ヨーロッパ・アジアにも戦争を拡大しています。

シリアの戦争の実態は、アサド大統領の政府軍はもはや殆ど壊滅状態で、その代わりにイランの革命防衛隊がシリア政府軍の名前で戦争している。イラクでも政府軍の指導権はこのイランの革命防衛隊が握っている。このようなイランに対して、戦争の当事者としてトルコとロシアが乗り込んで三つ巴の戦争が進行している。トルコとロシア・ロシアとイラン・イランとトルコはある場所では対立し、ある所では協力して、このシリアとイラクの地で戦争をしているわけです。
このトルコ・イラン・ロシアが何を考えて何をしようとしてるのか、が丁寧に説明されています。

いずれの国もそれぞれの国の事情を抱え、それぞれの国の目的を達成するために権謀術数の限りを尽くしていますので、本来単純明快な日本人にはなかなか理解が難しい所を丁寧に説明してくれます。

この当事者3ヵ国に加え、周辺にはサウジアラビアを含む他のアラブ諸国とイスラエルがあり、さらにもっと遠くにEUとアメリカがある、というのが現在の構図のようです。

実は上記の当事者3ヵ国に準ずる位の位置に中国がいて、シリア・イラクには中国は出てきていませんが、むしろISの方が中国に進出しつつあり、これについてはこの本の本文では書き切れないため、ごく簡単に後書きの部分で触れています。

この本は、トルコがロシアの戦闘機を打ち落として、まだトルコとロシアの仲直りする前の時点で書かれているので、その分ちょっと状況が違っていますが、いずれにしても現在のISあるいはシリア・イラクの戦争をきちんと理解するのに格好の本です。

お勧めします。

出しゃばりのアメリカと引籠りのアメリカ

2016年11月10日 木曜日

アメリカという国は二つの顔を持っています。
『出しゃばりのアメリカ』というのは、世界の警察官という名前で世界中のあらゆる事に介入して、アメリカ流の正義を実現しようとします。

『引き籠りのアメリカ』というのは、アメリカが自分の固有のテリトリー(自分ち)だと考える南北アメリカ大陸の範囲に引き籠り、その外の事についてはアメリカの利害に関係がなければ知らん顔を決め込むというものです。

アメリカという国は、この二つの顔が交互に出てきます。

第一次大戦が始まった時は、まだ引き籠りのアメリカだったのでなかなか参戦しなかったのですが、途中から出しゃばりのアメリカになり参戦したので、かろうじてイギリス・フランスはドイツに勝つことができました。

その後第一次大戦が終わり、終戦処理をして国際連盟を作るあたりまでは出しゃばりのアメリカが主導してすべてを仕切ったのですが、国際連盟がスタートする時にはもう引き籠りのアメリカに変わっていたため、国際連盟はアメリカ抜きでやらなければならないことになりました。

その後ドイツも日本も国際連盟を抜けて国際連盟が機能しなくなり、1939年にはヨーロッパで第二次大戦が始まりました。それでもアメリカはまだ引き籠りのままでしたから、フランスはドイツに占領され、イギリスも風前の灯でした。その引き籠りのアメリカを出しゃばりのアメリカに変えたきっかけが1941年の日本軍による真珠湾攻撃です。

以来、アメリカは出しゃばりのアメリカをずっと続けていますので、第一次大戦・第二次大戦でひどい目にあったヨーロッパや日本は、アメリカがまた引き籠りになってしまわないように最大限の努力をしてきたわけです。しかしそれももう75年も続けていることになります。引き籠りのアメリカを実際に経験している人は今では殆ど生き残っていないということです。

今回トランプさんがアメリカの次期大統領に選ばれることになったのですが、選挙運動中の発言を見ていると、トランプさんはいよいよ引き籠りのアメリカを再現しようとしているようです。これはアメリカ以外の国々にとってははた迷惑以外の何物でもありません。とはいえ、独立した国と国の間で無理やり引き籠りを引っ張り出す有効な手段はないので皆困っています。昨日トランプさんの勝利で世界中が大混乱になっているというのもそういうことです。

日本でも戦後1945年以来71年にわたってアメリカ軍が駐留し、日本を防御してくれていたため、反戦平和主義の人たちが日本国内でいくら反米を叫んでもその体制はビクともせず、安心していられた訳ですが、それがトランプさんが大統領になりアメリカが引き籠りになったら、まるで違った世界になる、ということです。

いずれにしても70年以上慣れ親しんだ世界が変わるかもしれない、ということです。今まで当り前だと思っていた世界を、今まで当たり前だと思っていたことを当たり前ではないかもしれない、と一度見直してみたら面白いかも知れません。