今日(4月16日)の日経新聞の朝刊8ページに面白い記事が出ています。
「ドイツ人の資産が少ないワケ、国で違うユーロの価値」という見出しの、フィナンシャルタイムズ(FT)の記事の翻訳です。
この記事の内容は、【欧州中央銀行(ECB)の調査によると、世帯あたり純資産の平均は、ドイツ20万ユーロ弱、スペイン30万ユーロ、キプロス67万ユーロだ。】
ということです。【平均でなく中央値で見ると、ドイツ5万1千ユーロ・キプロス26万7千ユーロ】で、5倍も違うということです。
この数字だけ見るとお金持ちのキプロスを貧乏なドイツが助ける理由はないということになり、既にドイツではそういう議論が始まっているようですが、FTの記事はこの差はドイツのユーロ・スペインのユーロ・キプロスのユーロで、国によりユーロの価値が違うんだと言っています。
通貨統合で同じ貨幣を使っていて、EU内では国境がなく自由に移動ができるようになっていますから、これもおかしな話です。
で、FTの元の記事を確認してみたのですが(記事は購読者じゃなければ読めないようになっていますが、今はサービスで無料で購買者になれる、とのことで、購読申込をしたら見ることができました)、日経の記事はかなり端折ってはあるものの、大筋はほぼ妥当な翻訳になっていました。
で、事の起こりはECBが今月100ページ余りの調査レポートを発表し、その中でこれらの数字が発表されているということのようです(レポートの76ページに表があります)。
その後Forbesで「キプロスはドイツより金持ちじゃない」”Seriously, Cyprus is not richer than Germany″という記事が出て(この記事は普通にネットで読めます)、それによるとこのECBのレポートの純資産には公的年金・企業年金が入っていないので、見た目ドイツの方が貧乏に見えるけれど、これらの年金を入れればドイツの方が遥かに金持ちになるはずだと解説してくれています。
このForbesの記事にはこのFTの記事へのリンクもECBのレポートへのリンクも出ているので、簡単に読めます(ただしFTの記事を読むには購読の手続きが必要ですが。日本のマスコミの記事もこのようにリンクをちゃんとはっておいてくれるとうれしいんですが)。
ということで、統計の読み方、解釈の仕方の面白いサンプルとして、またこのFTの記事の解釈の面白さ、そしてドイツの「キプロスの方が金持ちなんだから助ける必要はない」という議論はこれからも話題になるかもしれないと思い、なにより『ドイツ人よりキプロス人の方がはるかに金持ちだ』と解釈できる統計データがある、ということで、紹介します。