『幕府』

日経新聞の土曜日の『詩歌・教養』のページにしばらく前から歴史学者の本郷和人さんの『日本史ひと模様』という連載が載っています。

毎回日本史上の一人を取り上げて論説しています。
視点がユニークで面白いので楽しく読んでいるのですが、8日の土曜日のテーマは後鳥羽上皇で、『官軍が敗れた唯一の事件』として、後鳥羽上皇が鎌倉幕府を倒そうとした承久の乱について書いています。

その中に
 <鎌倉時代、幕府なる言葉はなかった。室町時代には物知りの禅僧が中国の古典に幕府という概念を発見し紹介したが、それが流布するには至らなかった。江戸時代には幕府ではなく『柳営』という言葉が用いられた。武家政権をもっぱら幕府と称したのは、実際には明治以降の歴史学においてなのである>
という記述があります。

ちょうど今やっているNHKの大河ドラマの『西郷どん』では、9日の回は西郷どんが岩倉具視に討幕の密勅を出させる所をやっていて、確かに密勅の中味は「幕府を倒せ」ではなく「慶喜をやっつけろ」ということになっているようですが、それと同時に『幕府は腐っちょる』とか『幕府にはもう力はない』とか言っています。また当時の勤王討幕とか尊王佐幕というスローガンもあります。幕府という言葉はなかった、というコメントにはびっくりです。

とはいえ、この本郷さんという人は本物の歴史学者であることも確かで、ついでにその奥さんも本物の歴史学者だ、と私は思っています。

本郷さんの、『幕府という言葉はなかった』という言葉がどのような意味なのか、気になります。

これで『幕府』というキーワードで改めていろんな本(たとえば神皇正統記とか日本外史とか太平記とか)を確認してみるという楽しみができました。

もし興味があったらこの日経新聞の記事も読んでみて下さい。

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