前回書いたユダヤ戦史を読んで、またこのユダヤ古代誌を読んでみたいと思いました。
以前読んだ時は文庫本6冊を買って読んだのですが、その本はアカラックスの会社をたたんだ時に処分してしまったので、今回は図書館で借りて読みました。とはいえこんな本を読む人も殆どいないので、自分専用の本を図書館に預けてあるのと大差ありません。いつでも自由に借りられます。
この本は全20巻を日本語に訳し6冊としたもので、最初の1巻から11巻までの旧約時代編が文庫本の1冊目から3冊目まで、12巻から20巻までの新約時代編が文庫本の4冊めから6冊目までとして、キリスト教徒が聖書を読む際の副読本として広く読まれたもののようです。
たとえば文庫本1冊目は天地創造から始まってモーセが死ぬまで、2冊目はユダヤ人がカナンを征服してイスラエル王国を作り、ダビデが死んでソロモンが王となるまで。3冊目はソロモンの即位からソロモンが死んでイスラエル王国が分裂し、バビロン捕囚とその後の帰還までが書かれています。新約時代編の方は新約聖書を理解するための背景説明として読まれたようで、4冊目には旧約聖書のいわゆる70人訳の話など、5冊目はヘロデ大王の時代、6冊目はユダヤがローマに逆らって戦争なるところまでのことが書いてあります。
前に書いたフロイトの『モーセと一神教』を読んでこのユダヤ古代誌の1冊目を読むと、確かにユダヤ教というのはモーセが作った宗教で、ユダヤ人というのはモーセの作った民族なんだなと思います。またフロイトの言うように、モーセはユダヤ人に殺され、その後主殺しの恐ろしさに脅えたユダヤ人によって殺したことをなかったことにした、というのも尤もらしい話だと思います。
モーセの死について聖書には『彼は〇〇の谷に葬られた。だが今日に至るもその墓のありかを知る者はない』と書いてありますが、ヨセフスは『突然一団の雲が彼の上に下りてきたと思うとそのまま峡谷の中に姿を消した』と書いています。モーセも死なないで姿を消して、そのまま神のもとに行ったということのようです。
ユダヤ人は周辺の人々(民族なのか種族なのか人種なのか分かりませんが)と何度も殺し合いをしていますが、基本的にその戦争は皆殺しであり、勝てば相手を皆殺しにし、負ければ自分達が皆殺しにされ、例外的に殺されなかった人によってその皆殺しの戦争が記録されるというものだということも良く分かります。
またユダヤの歴史というのが①人が神の指示に対して反抗・反逆する ②神が怒って懲らしめる ③人が謝罪して悔い改める ④神が赦す というパターンの繰り返しの歴史だということが良くわかります。
イスラエルあるいはパレスチナという地域が昔からチグリス・ユーフラテス地域とエジプトに挟まれ、その両者が相手を攻めるときにその通り道になり、そこにペルシャ人・ギリシャ人が入り込み、周辺にはアラブ人が住んでいて常に戦争を繰り返している、そういう地域だということが良くわかります。
現在進行中のイスラエル・ハマス戦争を理解する上でも参考になる1冊(6冊)です。