この前、ライフネットの出口さんの本を持ってきた友人の話をしましたが、この友人は同時に『家に2冊あったので1冊持ってきた』と言って、小室直樹さんの『数学嫌いな人のための数学』という本を置いていきました。
この本は昔読んだことがあるような気がしていたのですが、パラパラ見てみたら最後の方にケインズの一般理論の説明が入っていました。こんな所でケインズを読んだ覚えは全くなかったので、この際読み直してみることにしました。
この本は数学というより数学の元となる論理学(というか、論理的な考え方)について解説してある本です。とは言っても数学の話ばかりじゃ面白くないので、宗教の話・法律の話・経済の話をふんだんに散りばめています。
論理学の元となった考え方は実はユダヤ人のもので、ユダヤ人預言者が全能の神と議論して、何度も性懲りもなく神との契約を破るユダヤ人を神が皆殺しにしようとするのを、議論で負かしてユダヤ人を救うというためのものだということです。我々にとっては神様というのは挨拶したりお願いしたりなだめたりする相手ではあっても、神様を相手に議論しようなんて考えはあまりないのですが、ユダヤ教(キリスト教・イスラム教)の神様はそういう神様ではなく、契約したり論争したりする相手のようです。それにしてもたとえ預言者であったとしても、人間を相手に議論して言い負かされてしまう神様が「全能の神」というのもなんだかなぁと思ってしまいますが、面白い話です。
法律というのはいかにも論理的であるかのように見えるけれど、実はちっとも論理的ではなく、特に日本人は論理的思考があまり強くないので、仕方なく嘘を活用するんだ、などという話があります。これについてはこの本で紹介されている『嘘の効用』という本をちゃんと読んでから改めてコメントしたいと思います。いずれにしても私がやっているイモヅル式読書法では時として次々に読む本が増えてしまって、いつまでたってもけりがつかないことがあります。
最後のケインズの一般理論の紹介の所は、何だか良くわかりません。私が理解している一般理論からすると、支離滅裂なことが書かれていて理解不能です。多分その昔この本を読んだとしても、この部分は理解不能ということで読み飛ばしたんだろうと思います。今はもう一般理論を読んでいるので、明確に『おかしい』と判断できます。
小室直樹さんというのはもともと数学者ですが、経済学でも政治学でも一流の学者だということになっていたはずですから、改めて小室さんの経済学に関する本を読んで、小室さんがケインズの一般理論をどのように理解していたのか確認してみようと思います。
いずれにしても例によって小室節のテンポの良い講談調の文章は、読んでいて楽しいものです。
数学が嫌いな人も好きな人も、読んでみる価値はあると思います。