Archive for 9月, 2012

アクチュアリーの練習帳

月曜日, 9月 24th, 2012

このブログ、というよりこのサイトですが、もともと『アクチュアリーの練習帳』というタイトルで、それと同じタイトルの昔ながらの掲示板がついています。

この掲示板に久しぶりに投稿がありました。
http://www.acalax.info/bbs/wforum.cgi?no=3533&reno=no&oya=3533&mode=msg_view&page=0

質問の内容は積立利率変動型終身保険の保険数理についてのものなのですが、アクチュアリーの方、あるいは生命保険会社の商品開発に強い方など、もしよろしければ質問を読んでいただいて、できれば解答・コメントなど投稿していただけるとありがたいです。

近いうち解散

水曜日, 9月 12th, 2012

国会議員の先生方、もう選挙のことばっかりですね。

代表選・総裁選の前に解散総選挙をしてしまって、選挙後の姿で代表者や総裁を決めた方がすっきりすると思っていたんですが、政治家の先生方はそうは考えないようですね。
まず代表なり総裁なりを決め、執行部を決めて選挙に臨み、その結果を見て場合によっては執行部を変えるなり代表・総裁を選び直したり、という方が良い、ということなんでしょうね。

今の所民主党の代表選はすんなり野田さんで決まりそうなのですが、これが万一他の人が当選してしまったら、「近いうち解散」はどうなってしまうんでしょう。野田さん以外は「近いうち解散」をしようと考えている人はいないようです。

となると代表選・総裁選が終わり次の国会が始まって、野田さんでない民主党の代表が総理大臣になったら「近いうち解散」はなし、ということでしょうか。

それとも野田さんが約束を守るために、総理大臣を決める「首班指名」の前にまだ総理大臣の野田さんが解散を宣言するんでしょうか。

あるいは国会が閉会中(次の国会が始まる前)に解散するという手も考えられますが、wikipediaによると「そんな例はない」ということのようです。

維新八策

月曜日, 9月 10th, 2012

何か政治家の先生方、まだ衆議院の解散もないのに急に選挙モードに突入してしまったようですね。

民主党の代表選、自民党の総裁選と橋下さんの維新の会の国会議員集めで賑やかですね。

で、橋下さんの維新の会に入るための踏み絵となる「維新八策」なるものをちょっと見てみようと思ったら、ビックリしました。

「維新八策」というのは、龍馬さんの「船中八策」に倣って、なんて言われているのでその「船中八策」とか、それが元になって作られたと言われる「五箇条のご誓文」と同じようなものかと思っていたのが、まるで違いました。

とにかく文字がビッシリ書いてあります。詳しく読もうと思うほどの興味もないので、文字数をざっと数えてみました。

船中八策は八策の部分だけだったら240字。能書きの部分を入れても360字。五箇条のご誓文の方はさらに少なく5箇条の所だけだと115字。決意表明の部分を入れても180字ですから、どちらもすぐに読めるのですが、維新八策は何と5,000字もあります。

これを全部読んで、全てについて自分の考えがそれに沿っているかどうか確認する方も大変ですし、その人と話をして維新の会に入れるかどうか判定するのも大変ですね。

ということで、とりあえず文字数を数えて、この件は一件落着です。

ING

月曜日, 9月 10th, 2012

土曜日の日経新聞の朝刊1面に「ING日本撤退/生保、香港企業に売却へ」という見出しで、結構大きな記事が出ました。

土曜日のことだし、今頃紙の新聞を読む人もあまり多くはないかもしれませんが、昔INGにいた人間の一人として、ちょっとだけコメントします。

この記事、特にこの見出しですが、「嘘じゃないけど何だかなあ」という感じのものです。

確かにINGが日本の生保事業を売却しようとして買い手探しをしていたのは事実ですし、「売却」のことを「撤退」と表現するんだと言われればその通りかも知れませんが、この売却の方針はもう何年も前に決まっていたことで公表もされており、今更騒ぐほどのことではありません。

もし騒ぐとしたら、ようやく買い手がみつかったようだということと、それが名前の通っている保険会社や金融グループではなく香港の実業家グループになりそうだということと、売却額がたったの数百億円になりそうだとのことだ、というくらいです。

INGは例のリーマンショックの時に公的資金の注入を受け、それを返済するにあたり銀行と保険の総合的なグループであるものから、保険事業を切り離すことを求められていました。これはその当時公表され、日経新聞の記事にもなっていると思います。

INGというのは、今でもサッカーの国際試合なんかの時に良く見る、オレンジ色の「ING」の文字とライオンのマークの会社です。このオレンジ色とライオンというのはオランダ王室のシンボルで、日本で言えば「菊のご紋章」といったものです。

もともとINGというのは銀行のグループと保険のグループが合併してできたグループなのですが、その銀行の中心はポストバンク、民営化する前は国のゆうちょ銀行だったわけです。そのため民営化しINGになった後も、オレンジ色とライオンのマークを使い続けているわけです。

リーマンショックでダメージを受け事業を縮小して身軽になるにしても、女王様のポストバンクを売却することもできないので、保険の方を切り離して売却することになったわけです。

全体まとめてどこかに買い取ってもらうのでも切り売りするのでも、あるいはどうしても買い手がみつからなければ株式市場で公開して一般から多数の買い手を募るのでも何でも良いから、とにかくINGから切り離しINGの名前を使えなくする、というのが約束だったようです。

日本の生命保険事業は、逓増定期保険で経営の基礎を確立したのですが、その後変額年金保険の販売に注力し、他の変額年金保険を扱っている会社と同様、大きなダメージをくらってしまったということです。この売却額数百億円というのは安いなという気もしますが、変額年金保険のダメージが実際どれ位大きかったのかわかりませんから、何とも言えません。

また変額年金保険を売る過程で、オランダ本社との間でかなりの額の再保険取引もしているはずですが、この再保険取引の取扱についても外部からでは何もわかりませんから、なおさらこの売却額についてはコメントのしようがありません。

なおこの新聞記事を受けて、ING生命は例によって「まだ何も決まっていない」というリリースを出していますので、もしかするとこの話も何もなくなってしまうのかも知れません。

ING生命で働いている人にとっては、できるだけ早い時期に将来の方向性がはっきりする方が良いんでしょうが。

エネルギー・環境会議の誘導型世論調査

金曜日, 9月 7th, 2012

この前エネルギー・環境会議の話の最後に、討論型世論調査の事前配布資料の中の電力料金の話を書きました。

書いてから何となく釈然としないので、改めてもう一度この事前配布資料を見てみました。すると何と、この資料の基本的なメッセージは
—————————————–
3.11までは原発を使って環境に優しい安い電力を使ってCO2を減らしていこう、という考え方だったのが、3.11を契機として世の中は全く変わった。これからは原発をできる限り減らしていかなければならない
—————————————–
ということを当然の考え方として、その上でどのようにしていこうか、という議論をするための資料になっています。

もちろん言い訳作りのために『この資料に書かれていることに限らず、自由に資料等を調べて発言して下さい』とは書いてありますが、資料がこのように作られている以上、討論や専門家との質疑応答もこの方向性で行われたに違いありません。

だとすると、このエネルギー環境会議の『国民の過半は原発ゼロを望んでいる』の発表の時にマスコミで見た、討論の前後のアンケート結果がまるで違った意味を持ってきます。

その時の印象では討論の前から後へ原発0%、15%、20-25%シナリオを支持する人の割合は、0%を支持する人が少し増えたけれど、その分15%を支持する人が減って、20-25%を支持する人はほとんど変わらない、ということだったと思い、確認してみました。

以前読んだ時は単に、皆で話したけれどあまり変化はない、と言うくらいの感想だったんですが、改めて見てみると、これは政府がお膳立てをして『原発は減らさなきゃならない』という主張の下に勉強させられ討論をした結果として、『それでも意見は変わらない』ということですから、まるで意味が違います。

そのつもりで見てみると、この討論型世論調査というのは、マスコミが問題にするようないわゆるヤラセとは全くケタ違いに強力な『世論誘導型のヤラセ』だったんだ、ということが良くわかります。

何しろ全国から300人もの人に交通費・宿泊費・日当を払って集まってもらって会議をして、その『討論型世論調査』というのもアメリカの何とか大学で開発した手法だ、と言っているくらいですから、運営のためにもお金を払っているでしょうし、専門家と称する人に参加してもらうにもお金をかけているはずです。

このように政府が原発ゼロに向けて世論作りのために大金をかけて大掛かりな仕掛けをしたにも係らず、討論に参加した人のうちの13%の人は討論の前も討論の後も変わらず、原発20-25%のシナリオを支持したということで、日本人というのはなかなか頼もしいなと思いました。

こんな発見を独り占めにしておくのは勿体ないので、改めてお知らせすることにしました。

この『討論型世論調査』というのでは、何度もアンケートをやっています。

まず国民からランダムに抽出した約7,000人に対するアンケートがあります。これをT1(全体)と言います。次にその中の討論に参加することになった人約300人の分をT1(参加者)と言います。
この約300人の参加者の所に事前配布資料が届けられ事前に勉強してもらって、さて参加者が皆集まったところで討論の前にやるアンケートが、T2(参加者)です。さらに2日間の討論の最後に行うアンケートがT3(参加者)です。

同じような質問のアンケートに対して、T1(全体)・T1(参加者)・T2(参加者)・T3(参加者)で回答内容がどのように違うか、どのように変化したかというのが、この討論型世論調査のミソのようです。

上記のように、事前配布資料とそこから推測される討論会などでの強力な意見の誘導を踏まえてこの結果を見てみると、本当に面白いです。元となるアンケートの集計結果は同じでも、その意味するところは政府が発表しているのとはまるで違った姿が見えてきます。

本当はT1(参加者)からT2(参加者)・T3(参加者)に向けて、どんどん原発0%のシナリオ支持者が増えてくれることを主催者側は期待していたんでしょうが、まるでそうはなってません。結局ヤラセはほとんど機能しなかった、ということのようです。

興味のある方は、直接資料を見てみて下さい。
全てネットからカラフルなpdfのファイルの形で取ることができます。

この討論型世論調査の全体の説明は
『エネルギー・環境の選択肢に関する討論型世論調査 調査報告書』
というもので見ることができます。これは150ページ弱あります。
アンケート結果だけを見るには
『エネルギー・環境の選択肢に関する討論型世論調査 調査報告書(概要版)』
というのがあります(リンクのジップファイルの中にあります)。これは20ページほどのものです。
問題の事前配布資料は
『エネルギー・環境の選択肢に関する討論型世論調査 <<討論資料>>』
というもので、50ページ弱のものです。

お楽しみ下さい。

ユーロ危機

金曜日, 9月 7th, 2012

ユーロ危機について、欧州中銀のドラギさんの発言でまた大騒ぎですね。

私には例によって中味のない口先だけの発言としか思えないのですが、マーケットは大喜びして、ヨーロッパの国債利回りが下がったり、ついでに株価が上がったりしているようです。

マスコミは騒ぐネタを探して大騒ぎするのが仕事だし、証券会社やマーケットの人達はいずれにしても値段が上がったり下がったりするのが商売のネタですから仕方ないんですが、それにしてもこんな口約束で良かった良かった・・・と大騒ぎする人は理解できませんね。

どうも大騒ぎの元はドラギさんが国債を『無制限で』買取るといったことのようです。しかしこの『無制限』というのは『無条件』ということとは別の話ですから、実際にどれ位買い取ってもらえるのかは殆どあやふやです。

何よりもまず、まだ存在すらしていないESM(欧州安定メカニズム)に対して国債を発行している国が支援を要請することが、この買取の条件になっているんですから、いつになったら実行できることやらわかりません。

またこの支援要請も単に『要請すれば良い』ということではなく、要請するための条件として『財政再建の公約が必要だ』ということになっていて、その公約の中味(どの程度の財政再建をする必要があるか)については『今後詰める』というのですから、何とものんびりした話です。

いずれにしても国債の買取というのは、その国債を持っている銀行を助けるためなのですが、そのために支援を要請するのは国債を発行した国ということで、要は他国の銀行を助けるために、国の政府ができるかどうかわからない財政再建を約束するということですから、国民としては何とも納得しにくい話です。

まあこれも、失われた10年・20年が始まったばかりの混乱の一つですから、仕方のない話かも知れませんが。

エネルギー・環境会議

水曜日, 9月 5th, 2012

国家戦略室のやっている『エネルギー・環境会議』というのが、『国民の過半は原発ゼロを望んでいる』という発表をしました。

『ちょっと待った、私の意見は聞かれてないぞ』なんて言ってみても始まらないので、この『国民の過半・・』というのがどういう根拠にもとづいているのか、調べてみました。

元となるデータはこの会議が行なった
 ・意見聴取会
 ・パブリックコメント
 ・討論型世論調査
の3つのようです。

意見聴取会というのは、電力会社の人が原発賛成の意見を言おうとしたら大騒ぎになった、あの意見聴取会です。途中から電力会社の人は意見を言ってはいけないということになったわけですから、その結果、原発反対の声が大きくなるのは当然です。

次のパブリックコメントは、原発反対派が口コミなりネットコミなりで、『皆で原発反対の意見を言おう』なんてことをやっていて、それがさも素晴らしいことのようにマスコミでも取上げられています。
私にはこれこそヤラセの最たるものだと思うのですが、どうもマスコミや原発反対派は、電力会社や原発賛成派がやるヤラセはケシカランことだけれど、原発反対派がやるヤラセは素晴らしく良いことだと思っているようで、結果は圧倒的に原発反対ということのようです。

いずれにしてもこの2つは積極的に意見を言おうという人の意見だけを集めたものですから、これで『国民の過半は・・』なんて言われても困ってしまいます。

最後の『討論型世論調査』というのは『世論調査』と言っているので、これなら多少は国民の意見を反映するのか、と思って調べてみました。

このやり方はまず国民全体から3,000人を無作為に抽出します。ここまでは良いのですが、次にその中から討論に参加しても良いという人を300人くらい抽出して一ヵ所に集まってもらい、2日がかりで討論に参加してもらって、その結果を集計するというものです。

なかなか面白いやり方ですが、これで国民の意見が集計できるとも見えません。討論に参加する前に事前配布される50ページほどの資料を勉強し、まる2日、討論に参加するというんですから、食費や宿泊費・交通費と多少の日当は国が出してくれるとはいえ、参加したいと言う人は限定されるでしょう。

2日間にわたって討論というのはすごいな、と思ったのですが、300人も一度に集めても討論にならないので、15人くらいのグループに分けて討論をするということです。2日間でどれ位の討論をするのかと思ったら、1日目1時間半、2日目1時間半、の2回だけです。1時間半=90分を15人で割ったら、1人あたり6分ですから、結局参加者が意見を言うことができるのは『1日6分を2回』ということになります。

2日間といっても全国から集まってもらうので、土曜日の昼過ぎから始まって日曜日の昼食までということで、仕方ないのかも知れません。討論以外に前後でアンケートに答えたり全体会議と称して専門家に質問したりという時間があり、あまり討論には時間が割けないんでしょう。宿泊場所のホテルと討論場所の大学の間をバスで移動するのに30分のスケジュールが組まれていますから、けっこうこれも時間をくってますね。

膨大な資料があるんですが、このうちの事前配布資料というのを見てみました。この資料の作り方で意見がかなり左右されることになりそうですから。そのなかで1つだけ【電気料金の家計負担】という所を見てみると 
 原発の割合     (2010年)      (2030年) 
     0%シナリオ  1万円 ⇒   1.4万円~2.1万円
    15%シナリオ  1万円 ⇒  1.4万円~1.8万円
 20~25%シナリオ  1万円 ⇒  1.2万円~1.8万円

となっています。私なんかこれを見ただけで、こんなに差が少ないわけないから、計算の仕方に問題があるんだろうと思ってしまうのですが、普通のもっと素直な人は、こんなに差が小さいんだったら、ちょっと負担は大きくても原発ゼロの方が良い、と思うんだろうな、と思います。

で、こんなもんを集めてもとても『国民の過半は・・』という結論が出てくるとは思えませんが、この会議のメンバーさんたちは平気で『国民の過半は原発ゼロを望んでいる』と結論し、反原発の人達は『過半なんてものじゃなくて、大多数の国民は原発ゼロと言っている』なんて気勢を上げているようです。
困ったものですね。