この前エネルギー・環境会議の話の最後に、討論型世論調査の事前配布資料の中の電力料金の話を書きました。
書いてから何となく釈然としないので、改めてもう一度この事前配布資料を見てみました。すると何と、この資料の基本的なメッセージは
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3.11までは原発を使って環境に優しい安い電力を使ってCO2を減らしていこう、という考え方だったのが、3.11を契機として世の中は全く変わった。これからは原発をできる限り減らしていかなければならない
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ということを当然の考え方として、その上でどのようにしていこうか、という議論をするための資料になっています。
もちろん言い訳作りのために『この資料に書かれていることに限らず、自由に資料等を調べて発言して下さい』とは書いてありますが、資料がこのように作られている以上、討論や専門家との質疑応答もこの方向性で行われたに違いありません。
だとすると、このエネルギー環境会議の『国民の過半は原発ゼロを望んでいる』の発表の時にマスコミで見た、討論の前後のアンケート結果がまるで違った意味を持ってきます。
その時の印象では討論の前から後へ原発0%、15%、20-25%シナリオを支持する人の割合は、0%を支持する人が少し増えたけれど、その分15%を支持する人が減って、20-25%を支持する人はほとんど変わらない、ということだったと思い、確認してみました。
以前読んだ時は単に、皆で話したけれどあまり変化はない、と言うくらいの感想だったんですが、改めて見てみると、これは政府がお膳立てをして『原発は減らさなきゃならない』という主張の下に勉強させられ討論をした結果として、『それでも意見は変わらない』ということですから、まるで意味が違います。
そのつもりで見てみると、この討論型世論調査というのは、マスコミが問題にするようないわゆるヤラセとは全くケタ違いに強力な『世論誘導型のヤラセ』だったんだ、ということが良くわかります。
何しろ全国から300人もの人に交通費・宿泊費・日当を払って集まってもらって会議をして、その『討論型世論調査』というのもアメリカの何とか大学で開発した手法だ、と言っているくらいですから、運営のためにもお金を払っているでしょうし、専門家と称する人に参加してもらうにもお金をかけているはずです。
このように政府が原発ゼロに向けて世論作りのために大金をかけて大掛かりな仕掛けをしたにも係らず、討論に参加した人のうちの13%の人は討論の前も討論の後も変わらず、原発20-25%のシナリオを支持したということで、日本人というのはなかなか頼もしいなと思いました。
こんな発見を独り占めにしておくのは勿体ないので、改めてお知らせすることにしました。
この『討論型世論調査』というのでは、何度もアンケートをやっています。
まず国民からランダムに抽出した約7,000人に対するアンケートがあります。これをT1(全体)と言います。次にその中の討論に参加することになった人約300人の分をT1(参加者)と言います。
この約300人の参加者の所に事前配布資料が届けられ事前に勉強してもらって、さて参加者が皆集まったところで討論の前にやるアンケートが、T2(参加者)です。さらに2日間の討論の最後に行うアンケートがT3(参加者)です。
同じような質問のアンケートに対して、T1(全体)・T1(参加者)・T2(参加者)・T3(参加者)で回答内容がどのように違うか、どのように変化したかというのが、この討論型世論調査のミソのようです。
上記のように、事前配布資料とそこから推測される討論会などでの強力な意見の誘導を踏まえてこの結果を見てみると、本当に面白いです。元となるアンケートの集計結果は同じでも、その意味するところは政府が発表しているのとはまるで違った姿が見えてきます。
本当はT1(参加者)からT2(参加者)・T3(参加者)に向けて、どんどん原発0%のシナリオ支持者が増えてくれることを主催者側は期待していたんでしょうが、まるでそうはなってません。結局ヤラセはほとんど機能しなかった、ということのようです。
興味のある方は、直接資料を見てみて下さい。
全てネットからカラフルなpdfのファイルの形で取ることができます。
この討論型世論調査の全体の説明は
『エネルギー・環境の選択肢に関する討論型世論調査 調査報告書』
というもので見ることができます。これは150ページ弱あります。
アンケート結果だけを見るには
『エネルギー・環境の選択肢に関する討論型世論調査 調査報告書(概要版)』
というのがあります(リンクのジップファイルの中にあります)。これは20ページほどのものです。
問題の事前配布資料は
『エネルギー・環境の選択肢に関する討論型世論調査 <<討論資料>>』
というもので、50ページ弱のものです。
お楽しみ下さい。