Archive for the ‘暗黒星雲の恐怖’ Category

ハラダシ病の報告

火曜日, 1月 18th, 2011

一昨年の6月にハラダシ病で入院・退院して、その後時々病院に通いながら最初は薬を貰って飲み、あとは目薬だけ貰ってさしていましたが、先週3ヵ月ぶりに病院で診てもらって、「残っている目薬を使い終わったらそれで終了!」と言われました。あとは「また何かおかしくなったらいつでも来て下さい」ということでした。

「おかしくなったら」と言っても、おかしくなったかどうかうまく判断できるかどうか自信はないのですが、とりあえず1年半がかりのハラダシ病との付き合いもこれで一段落です。

さすがに正月明けの病院は大賑わいで、10時半の予約が診てもらったのは2時過ぎくらいで、お世話になった先生に「商売繁盛ですね」と言ったらキョトンとしてました。

皆さんにご心配をおかけしたかも知れませんが、もうこの病気については当面大丈夫です(再発の可能性はありと説明を受けています)。

暗黒星雲の恐怖 (その3)

火曜日, 7月 6th, 2010

さて6月1日月曜日。今日は順天堂病院に行く日です。大学病院だから多分とてつもなく時間がかかるだろう、今日も仕事はできそうもないなと思って出社しました。
朝のミーティングのあとすぐに順天堂病院へ。素晴らしい病院で、受付も機械化されていて中も綺麗で申し分なしです。今日もしっかり読む本を用意していますから、いくら待たされても平気です。
視力の検査・眼圧の検査・眼底の検査・聴覚の検査・血圧の検査等々、山ほどの検査(検査と検査の間に山ほどの待ち時間)。最終的な診断は4時ころです。
「多分原田病だと思われます。最後のダメ押しで明日髄液の検査をします。その結果、最終的に原田病だと決定します。また明日朝から来て下さい。原田病の場合、入院になります。」
ヘトヘトになり、食べ損なった昼食を食べてオフィスに戻ったのが5時ちょっと前。「また明日病院になりました」で、月曜日は終わり。予定通り仕事は何もできません。
次いで6月2日火曜日、髄液を取る検査です。背骨の間から注射針を脊髄に刺し脊髄液を取るのですが、ちょうどそのあたりは中枢神経が走っています。検査の担当の若いお医者さんが「へたに神経を傷つけるとエライことになります。注射針が神経に触れると足がちょっと痺れるかも知れません。危険はありますが検査して良いですか?」
この期に及んで検査しますか?しませんか?もありません。こちとらまな板の鯉ですから「好きなようにして下さい」てなもんですが、「それでは膝を抱え込んで、できるだけ背中を丸めて下さい。」・・・そんな格好でベッドの上に丸くなって、何とも情けない限りです。先生は背骨の位置を手探りで確かめながら注射針を刺すのですが、何かウッと押されるようでかなり痛いんです。どうも針が骨に刺さると痛いようです。神経の近くに行くと電気が走ったり、足や腰が痺れたりするようです。
「このあたりかなり骨が変形しているようで、なかなかうまく刺さりませんね。」何しろ背骨が首の方からお尻の方へかけて積み重なっています。それを背中を丸めることによって背骨と背骨の間を広げて、この広がった所に注射針を刺して背骨の真中を通っている脊髄に到達しようというのが先生の方の作戦ですが、背骨の方も単にだるま落としのように円盤が積み重なっているわけじゃありません。滅多なことじゃ背骨がずれたりしないように、その中を通っている脊髄や中枢神経を守るように上下の円盤がそれぞれ上下に枝を伸ばして、ちょっとやそっとじゃ円盤が横にずれないようになっています。そしてその隙間から神経が出て身体の隅々に走っているといった具合です。
針を刺そうとすると、まずこの上下に伸びた枝が邪魔になります。そこを避けても今度は神経に触らないようにしなくちゃなりません。若い頃サッカーをやったりその後のギックリ腰で、私の背骨はかなりイビツに成長しているもようです。
先生が私の背骨のあたりを手でさすって「この辺りだろう」とそろりそろりと針を刺すとウッと痛くて声を出す。また手探りでこの辺りかとそろりそろりと刺す。何となく電気が走ったようで声を出す。こんなことを繰り返していると、エアコンのクーラーは十分効いているのですが、じっとり汗をかいてきます。
多分こんな注射は看護婦さんの方がよっぽどうまくやれるんでしょうが、この検査はお医者さんがやらなきゃならないことになっているようです。何回かやるうちこっちも疲れてきますが、先生の方もかなりお疲れのようです。ウッと言ったりピリッと来たりビリビリと来たりもありますが、その間の今か今かの不安の方がクタクタの原因のようです。
ちょっと一休みして、また再開です。
こんな具合じゃ検査はもう無理かなと思った頃、今度は何か痛くありません。「うまく刺さったんですか?」「うまくいったようです。髄液が取れてます。」うまく行けばちっとも痛くないようです。
当初の予定では10時半に髄液を取って検査に回し、その結果を受けて12時頃診断なのですが、髄液が取れたのがもう12時近くです。「髄液はうまく取れました。しばらくこのまま安静にしてて下さい。」注射針を刺したあとの穴は、そこからばい菌なんかが入るとストレートに脳まで行っちゃいますから大変です。しっかり消毒して絆創膏みたいなものをべタッと貼って、「今日はお風呂に入らないで下さい。シャワーもダメです。」「こんなに大汗をかいたのに風呂にも入れないのか」とがっかりしましたが、仕方ありません。お医者様は神様です。言いなりにするしかありません。
結局1時間ほどベッドで休み、そのあと待合室で待っていよいよ診断です。
「遅かったですね。検査の結果、間違いなく原田病です。10日程入院してステロイドの点滴をします。いつ入院できますか? 週末になれば相部屋のベッドが空きますが、すぐに入院するなら有料の個室になります。」
「入院は早い方が良いんですよね。すぐに入院して、2,3日個室に入って、週末になったら相部屋の方に移ることにしましょうか。」
「入院中は1日1回、1~2時間の点滴をするだけであとは病室にいる限り、好きにしていて構いません。何もすることがないですから暇ですよ。仕事を持って来て病室で仕事している人もいます。入院の手続きは1階でして下さい。」
「善(?)は急げ」で、翌日から入院することにして、個室の差額ベッド代は3万円くらいでちょっと高いですが、それも週末までのせいぜい数日間と考えればまぁいいか・・・と入院の手続きを済ませ、またまた食べ損なった昼食を済ませてオフィスに戻ったのが前日よりちょっと早い4時くらいです。
またまた1日仕事ができませんでしたが、明日から当分出社できません。前の週の金曜日から連続3日も仕事をしていないんですから、その分病院にこもったまま仕事ができる体制を作らなきゃなりません。病院にこもったままですから、本を読む時間もたっぷりあるはずです。図書館に行ってたっぷり借りてこなくちゃ。入院中のいろいろなミーティングのスケジュールも変更の連絡をしなきゃ・・・等々。
家の近くの市立図書館は夜8時までですから、6時には会社を出ないと間に合いません。それまで簡単な打ち合わせをし、入院中の病院と会社の間の連絡体制(書類の受渡しや電話・メールの連絡等をするため、社員が交代で1日1回オフィスと病室の間の連絡便をしてくれる)を打ち合わせ、顧問先の少額短期保険会社の決算の財務局のヒヤリングに同席する予定をキャンセルしたり、入院が落ち着いたところで会社から病院に仕事用にパソコンを持って来てもらうとかバタバタと処理し、帰宅してから図書館でたっぷり本を借り(もちろん全部病院に持ち込むんじゃなく、読み終わったものから順に家族に家に置いてあるものと交替してもらうというやり方です)、さて大汗をかいたのに風呂に入れないので仕方がありません、たっぷりのお湯で身体を拭いて寝ました。丸1日の病院の、特に髄液の検査で緊張していたんでしょうか、ぐっすり寝てしまいました。

暗黒星雲の恐怖 (その2)

金曜日, 7月 2nd, 2010

さて翌5月29日いつものように目が覚めて、「さて・・暗黒星雲はもう消えたかな?」と思ってあちこちキョロキョロしてみると、やはりまだあります。これで単なる残像じゃなかったことがはっきりしました。じゃぁ何なんだ?と言っても何もわかりません。
視野の片隅が暗くなっているのはそのままですが、そこの部分も全く見えないわけではありません。視野を移した直後はその部分は真っ暗ですが、しばらくすると暗いのを通してその向こうが次第に見えてきます。その部分だけサングラス越しに見ているような具合です。でも最初からそのつもりになれば、別にそれほど不自由はありません。
テレビを見るのも新聞を読むのもパソコンの画面を見るのも、何の問題もありません。私は普段眼鏡をかけていますが、そのレンズがかなり汚れていたりすると視野の一部が見えにくくなります。それと同じような状況です。
でも正体がわからいのはやはり問題です。このまま暗黒星雲が広がって視野全体に広がるとか、暗さがどんどん増加してその向こうが全く見えなくなるというのは、やはりちょっと困ります。
商売柄、読んだり書いたりは一番大事です。また個人的にもあれこれ本を読むのが一番の楽しみです。とにかくまずは一体何が起こっているのか確認しないと始まりません。
幸い(というよりいつものことですが)、この日は午後アクチュアリー会の会議があるのですが、それ以外は特に予定が入っていません。まずはお医者さんに行って診てもらうことにしました。
とはいえ普段からお医者さんにはできるだけ近づかないようにしていますから、どこに行ったら良いか全く見当もつきません。まずはいつものように会社に行って皆に状況を説明して「今日は病院に行くから」と言うと、すぐに適当なお医者さんを探してくれました。
会社から歩いて3分くらいの、JR神田駅のすぐ近く、1階2階にお寿司屋さんの入っているビルの3階に「神田眼科診療所」という所がありました。それをやっているお医者さんは順天堂病院の出身者で、どこかの市立病院の眼科部長もしていた人のようです。
とりあえず病院ですから午前中くらいはかかるつもりで、待ち時間に読む本をちゃんと用意してその診療所に出かけました。
まさに駅前の診療所ですから、サラリーマンや近所の商店のおかみさんみたいな人など、本当に様々な人が来ています。でも視力検査とかコンタクトがどうしたとか、あまり重大な病気の人はいないようです。しばらく待って、診察です。症状を聞かれ目を覗き込まれて、その後色々な検査です。瞳孔を開いて眼底写真を撮ったり眼圧を測ったり、色々した後またしばらく待たされて、最終的に先生が「網膜剥離のようです。網膜剥離というのは、網膜の一部が破れたり穴があいたりして、眼球の中の水が網膜の裏側にまわってしまって網膜がはがれるのですが、見たところ破れたり穴があいたりしている所がみつかりません。そうすると、もしかしたら「ハラダシ病」かも知れません。いずれにしてもできるだけ早くちゃんとした病院で診てもらってください。お茶の水の順天堂病院で良ければ紹介状を書きます。30分位かかりますけど後で取りに来ますか? 待ちますか?」とのお話です。こちらはあらかじめ読む本は持って来てるし、会社から歩いて3分位とはいえ、行ったり来たりするのも面倒なので、そのまま紹介状を書いてもらうのを待ってオフィスに戻りました。お昼ちょっと過ぎ位に戻れたので、午前中いっぱいかかったことになります。
目がおかしいのにハラダシ病とはこれ如何に・・と思ってちょっとインターネットで調べてみると、「原田氏病」とか「原田病」とかいって、その昔原田さんというお医者さんがみつけた病気のようです。その後入院した順天堂病院の先生方はもっぱら「原田病」と言っていました。こちらは最初の神田眼科診療所の先生の「ハラダシ病」の名前が気に入ってしまっていたので、基本的にこちらの名前を使うことにしました。
あまりありふれた病気ではないけれど、ネット上に結構色々な記事がある所を見ると、それほど「滅多にない」病気でもないようです。いずれにしてもこれに決まったわけではないので、まずは順天堂で診てもらってからのことです。
午後はアクチュアリー会の会議に参加して、夕方戻って来てまたネットをちょっと調べ、結局仕事は何もしなかったけれど、何となくくたびれてしまいました。
神田眼科診療所の先生は「なるべく早く」と言ったけれど、明日は土曜日です。順天堂病院は土曜日もやっているかどうか聞き損ってしまったけれど、やっぱりフル稼働の月曜日の方が良いよね、と勝手に理屈をつけ、いつものように土曜日はお休みにしよう!と決めて帰宅しました。
時々「もしかするといつの間にか暗黒星雲が消えてしまっているんじゃないか」と思って、そのつもりで視野を動かしてみたりするんですが、やはりしっかりあります。
そんなことを気にしないで、誰かと話をしたり書類を見たりしている分には殆ど気がつきません。「まぁなるようにしかならない。明日は休みだ」と、いつものようにぐっすり眠ってしまいました。

暗黒星雲の恐怖 (その1)

木曜日, 6月 10th, 2010

約1年前、「ハラダシ病」という病気で突然の入院をし、多くの人に色々ご心配をおかけしたりご迷惑をおかけしたりしました。「目が見えなくなって、もう仕事が続けられない」とか「片目は義眼になって伊達政宗みたいに眼帯してる」とか、色々面白い噂も流れたようです。

ある保険の業界紙から記事の投稿を依頼され、内容は何でも良いからということだったので、その入院の顛末を書かせて貰おうかと提案したところ、即座に断られてしまいました。保険の話とは何の関係もない私個人の入院の話ですから、有料で読者に買ってもらっている新聞にそんなものを載せるわけにはいかないというその業界紙の編集者の判断は、まっとうなものだと私も思います。

そこでその代わりに、このページに何回かにわたってその入院の顛末記を載せようと思います。名づけて「暗黒星雲の恐怖」始まり始まりです。

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2009年5月28日木曜日

生保各社の決算も発表され、それをまとめて分析する前に所々つまみ食いで資料を見ていました。

夜も10時を過ぎて、会社はもう皆帰宅して私一人落着いて数字を眺めていました。手洗いに立って(私の会社の入っているビルは築80年の由緒正しいなかなか雰囲気のあるビルで、トイレの扉には「男子洗面所」と書いてあります)ホット一息ついていると、視界の左下の方に何か黒いものが見えます。

良く見てみると、トイレの白いタイルの向こうに真っ黒な雲のようなものが見えます。その形はその昔SF小説をたくさん読んでいた頃、挿絵で見たことのある暗黒星雲(「オリオン座馬頭星雲」なんていうと、懐かしくないですか)にそっくりな雲です。

アレッ?と思って見直してみても、目をパチパチとしてみても、それは消えません。数字をずっと眺めていて急にトイレに来たので、何かの残像かと思ったのですが、その影が薄れる様子もありません。じっと見ていると、暗黒星雲のかなたから宇宙船に乗って宇宙人が攻めて来るような気もします。

何だか良くわからないけれどしばらく様子をみてみよう・・・と用を足し終わったトイレを出て、またしばらくオフィスで数字とニラメッコ。何かの残像だったらいくら何でももうそろそろ消えてる頃だなと思ってまたトイレに行くと、やはり同じような所に同じような暗黒星雲が見えます。

良く見てみると、トイレの白いタイルがバックだと暗黒星雲ははっきりと見えているのですが、そうでない所ではコントラストがはっきりとはしないものの、やはり同じ位置に同じ暗黒星雲が見えます。

こんなの見たことありません。何だろう・・・とは思っても、何も思いつきません。こうなったら仕方がないので一晩様子を見てみようと仕事をやめ、家に帰って寝てしまいました。(続く)