評判の「サンデル教授の白熱教室」というのを観てみました。
保険代理店のKENさんがいろんなテレビ番組の録画をしていて、どういうわけか間違ってその番組も録画されていて、仕方がないから見てみたらなかなか面白かった・・・と言って、DVDに落として持ってきてくれたんです。
会社のアカラックスでやっているセミナーがあまり面白くない(?)ので、このサンデルさん流のやり方でやってみたらもっと面白くなってお客さんも増えるんじゃないか、という親切心からのプレゼントです。
で、仕方なく見始めたのですがやはり面白くありません。こんな雑駁な議論に夢中になって付いて行く気にはどうしてもなれません。そのうちやっと気が付いたんですが、教授は「政治哲学」と言っています。哲学じゃないんです。政治哲学なら面白くないのが当然です。な~んだ、そうだったんだといった所です。
「哲学」というのは、たとえば「真理とは何か」とか「時とは何か」とか根元的なものについて、どうでも良いような議論をあーでもない・こーでもないと議論する、殆ど無益、でも無害なものです。これだったらちょっと暇つぶしに付き合っても良いかも知れません。
でも「政治哲学」というのはまるで違います。何らかの政治的主張をいかにして正しいもの、正義そのものと皆に思い込ませるかという技術を学問らしく見せているものです。議論が雑駁なのはそのようにして議論をある方向に導いていこうとしているんですから、当然です。私はこれほど有害なものはないと思います。
非常に毒性の強いものですから取扱いは厳重注意で、それが有害なものだということを知り、その毒に侵されないようにしなければならないということは知っておかなければなりませんが、それ以上、知ったり使ったりするものじゃないと思っています。
私は誰かをダマクラカソウとも思わないし、ダマクラカサレヨウとも思いませんから、政治哲学は基本的に「よけて通る」という対象です。
で、もちろんアカラックスのセミナーで参加者を丸め込もうなんてことも考えませんし(考えてもできそうもありませんし、参加者(特に常連の参加者)はハーバードの学生さんたちと違ってそう簡単に丸め込めるような相手ではありません)、サンデル流のセミナーにしようとも思いません(そんな演技力はなさそうです)。
私など戦後の生まれですが、第二次大戦の話を色々読んだりヒトラーのナチスの話を読んだり、安保闘争の話やべトナム戦争の話や色々見聞きしているので、それなりの免疫がありますが、そんな免疫がない若い人は「正義」なんて言葉に簡単に夢中になってしまうのかも知れませんね。
それにしても政治哲学の講義を「哲学講義」なんて言葉で表現しているというのは、誰が言っているのか知りませんが、かなりタチの悪いゴマカシですね。