Archive for 3月, 2021

火野葦平『陸軍』『花と龍』

水曜日, 3月 17th, 2021

フェイスブックで友人の浦辺先生が『陸軍』についてコメントしていたので、読んでみました。

火野葦平というのは『麦と兵隊』その他で有名な人ですが、まだ一冊も読んだことがなかったので読んでみました。

戦争中、朝日新聞に連載された小説で、連載が終わって本として印刷してその印刷が終わるのが昭和20年8月15日ということでこの本は販売されなかったようですが、その後他の出版社から出版されている小説です。

九州・小倉と博多に生きた一家が、明治維新前、長州が外国艦隊に砲撃されて完敗する所から戊辰戦争・西南戦争・日清戦争・日露戦争・日中戦争・太平洋戦争と続く戦争に、何代にもわたって兵隊あるいは軍人として参加し続けた物語ですが、特に軍国主義的ということもなく、久しぶりに小説を読むのを楽しみました。あの、戦争礼賛でイケイケドンドンの朝日新聞で、このような小説が連載されたことに驚きます。

この本を読み終わって次に何を読もうかと思ったのですが、火野葦平が自分の父親・母親(と自分自身)の伝記として書いた小説だという話で読んだのが『花と龍』です。任侠映画として一世を風靡した作品の原作ですが、これも今までまともに映画を見ることも原作を読むこともしていませんでした。これも読売新聞に連載された新聞小説で、確かに任侠映画の原作となるだけのエピソード満載ですが、北九州の沖仲仕の家族の伝記として楽しめました。

まだいろいろ読まなければいけないものもありそうですが、とりあえずこの2冊を読み終わった段階で紹介しようと思います。

面白くて楽しめます。お勧めします。

1cm四方の富士山

月曜日, 3月 1st, 2021

大宮のオフィスに毎日出勤して1ヵ月経ち、驚くような発見がありました。何とオフィスの窓から富士山が見えるんです。

オフィスは大宮駅からまっすぐ西に向かった道沿いに建っていて、北向きのオフィスなんですが、西側に窓があります。その窓の出窓の部分はプリンタを置いたり電気ポットを置いたり重宝しているのですが、その窓から富士山が見える事に気が付きました。

オフィスの西側は保育園があり、2階建ての建物の屋上が園児達の遊び場になっているんですが、その床面がこちらのオフィスの3階の床面よりちょっと高くなっています。

その保育園の建物とこちらの建物は間隔が1mもない位なので、窓を開けているとモロ『園児を覗いている変なオジサン』と間違えるということで、原則として常時カーテンを閉めているようにと言われているのですが、園児達が屋上に上がって来ない時間帯は窓から外を見ることができます。

この窓は西向きですから運が良ければ富士山が見えるかも知れないと思っていたのですが、ずっと見ることができないでいました。

私の住んでいるマンションからも近くの駅からも富士山は良く見えるのですが、大宮ではなかなか見ることができません。富士山はほぼ西で、ちょっとだけ南に振れたような方角なんですが、駅からオフィスへの西向きの道は道路沿いに道路の南側に立ち並んでいる建物に邪魔されて、富士山は見えません。オフィスに入ってしまうと(オフィスは道の北側の建物ですから)西向きの窓からの眺めは、今度は道路の北側に立ち並んでいる建物に邪魔されて富士山は見えません。どうしても見たければ近くの高いビル(おあつらえ向きに、OLSという高いビルがあって、素晴らしい眺めが楽しめます)に行って見るしかないか、と諦めていたんですが、大宮のオフィスに通うになって1ヵ月経った所で富士山を発見しました。

西側の窓の眺めの真ん中近くに左側に電柱があり、その右の建物との間にほんのちょっと隙間があります。電柱からは右に何本もの電線が張られています。その電線の下に保育園の屋上の防護柵が見え、その手すりの下に柵が何本も並んでいます。その下が屋上の床面になります。その防護柵の手すりの部分と床面の間に、ちょうど富士山が入っています。

はじめに気が付いた時は隙間に左下から右上への線が見え、線の上は青く線の下は白くなっています。これは青の部分が空の青、白の部分が富士山の雪の白だと分かりました。山頂はちょうど隙間の防護柵の手すりの高さと同じ位の高さで、目の高さをちょっと高くすると手すりより高くなり、目の高さをちょっと低くすると手すりの下になります。

ただしこの富士山、保育園の屋上のこちら側の防護柵を通し、さらに向こう側の防護柵を通して見るので、柵の縦の邪魔な線がたくさん入ります。さらに良くみると窓のガラスには網入りガラスが使われています。この斜めの格子状の線を超え、二重の防護柵の縦の線を超えて、その先に富士山があります。

その大きさは・・と思って測ってみました。
私は腕を伸ばすとこぶしが胴体から50㎝の所にきます。そこで定規を握ってその定規の目盛りを測ると、隙間の大きさは縦1㎝弱・横1㎝弱の四角です。

このような小さな隙間で、縦・横・斜めの邪魔者がふんだんにある隙間ですから、その気になってしっかり見ないとなかなか気が付かないかも知れません。

それにしてもこの隙間を通して富士山を覗き見ることができるというのは、とてつもなく幸運な事だと思います。ちょっと角度がずれただけで見る事はできなかったはずですから。

この富士山も、もう少し暖かくなるともう見ることができません。冬の寒い間の晴れの日にしか見ることができませんから、ここで見つからなかったらまた次の冬になるまではみつからなかったと思います。

でも実際に見ることができなくても、この隙間のここの所に見えるんだということが分かっていれば、見えているつもりになるのはそんなに難しいことではありません。

これが見えるだけで、それまで家賃がちょっと高いかなと思っていたのが、逆に割安だと思えるようになりました。

これは神田の会社を閉めて個人の事業として大宮にオフィスを構えた事を、富士山が応援してくれているんだ、とも思えます。

とりあえず12月末の会社の解散の確定申告(期限は2か月ですから、3月1日までです)もほぼ終了しました。