コップの中の水の話

世の中生々しい話ばかりで騒然としていますので、たまにはまるで生々しくない話など一つ。

目の前にコップがあります。コップ1杯の水の量は、だいたい180cc。昔の1合です。これは缶コーヒーの1本分もだいたいその位です。
この水を太平洋に流して、太平洋の水をぐるぐるかき混ぜてよく混ぜ合わせた所で、その中から同じ180ccの海水をコップに戻したとします。
このコップの中には最初のコップの中にあった水の分子が何個くらいあるでしょうか。

これはコップの中の水180ccの分子の数と太平洋の全体の海水の量がわかれば、簡単な比例計算で計算できます。
計算を省略して答だけを言うと、元と同じ水の分子は約1,500個ということになります。ちょっと大きめのグラスで200ccの水で計算すると、1,900個になります。

これはたまたまある本を読んでいてこの計算が書いてあったのでナルホドと感心したんですが、言われるまでこんなことは考えてもいませんでした。
この問題は、コップの水を海に流して海を掻き混ぜてから汲み直すと考えなくても、たとえば水を飲んでしまってその後十分な時間をかけてから海水を汲む。海水を汲まなくても、それが蒸発して雨になって水道水になったものと考えても同じことです。海水をかき混ぜない分、元と同じ水の分子の数は多くなると思います。

このように考えると、たとえば織田信長が本能寺で殺される前の晩に飲んだ1合のお酒の中に入っていた水の分子の1,500個分が、今私が飲んでいる180ccのコップの水の中に入っているとか、クレオパトラがシーザーを誘惑しようとして飲んだ1合(エジプトでは何て言うんでしょうね)のお酒の中に入っていた水の分子1,500個分が、私が缶コーヒーを飲むたび私の中に入ってくると考えることができます。

人間は大体1回に2リットルの水分をとることになっているので、それから考えると、ある日ナポレオンが飲んだ水の分子少なくとも15,000個分が缶コーヒー1個の中に入っているという計算になります。

人が一生の間に飲む水の量は、2リットルの365倍の50から100倍くらいと考えると、今目の前にあるコップの中に秦の始皇帝が飲んだのと同じ水の分子が何千万個、坂本龍馬が飲んだのと同じ分子が何千万個、お釈迦様が飲んだのと同じ分子が何千万個、イエスキリストが飲んだのと同じ分子が何千万個入っているんだということになります。

そう考えると、「皆が皆同じ水の分子を飲み合っている」んだ、とちょっと嬉しくなりませんか?

4 Responses to “コップの中の水の話”

  1. 齊藤彰 より:

    嬉しくなります。地球上のすべての生き物が同じ水を飲んでいると考えると、地球という環境が大切に思えてきますね。
    コップ1杯の水が分子のつぶつぶでできているように、木も花も、人間のつぶつぶの集まりです。そう考えると、世界がスーラの点描法で描かれた絵画のように思えてきて楽しいですね。
    ところで、180ccのコップで1500個なのに、200ccの場合1900個になるのは分かりません。コップの容積が1.1倍になると、同じ分子をくみ取る個数が1.3倍になるのは何故ですか。

  2. Dr.KEN より:

    コップ一杯の水の分子量の個数は
    太平洋の海水量÷コップ1杯の水の量×1500個
    …という事なのでしょうか(^_^;)

    数学にも科学にも弱い私に想像もつかない興味深い発想ですが
    太平洋の海水量に限定して1500個というより
    地球の海水量で○百個と言った方が私には実感があるように思います。
    また水は酸素と水素に分解されるわけで
    結局、人類誕生以来皆んな同じ水を飲み、同じ空気を吸って
    生きてきて、これは永久に変らないという事なのでしょうが
    これじゃロマンが無いですね(^_^;)

  3. 坂本嘉輝 より:

    齊藤さん、Dr.KENさん、コメントありがとうございます。

    斎藤さん、コップの水の量をA ccとし、汲み戻した水の中の元の水の分子の数をX個とすると、
    X=(AxA)/21
    ということになります。
    それで、180ccを200ccにすると、分子の数は1.23倍になるんですが、180ccの時の分子の数が1,540個くらいになるのを、端数処理で1,500個くらい、としてしまったので、ちょっとずれが大きくなりました。

    Dr.KENさん、地球全体の水、とか地球全体の海水、というより太平洋、という方が具体的なイメージができやすいかな、と思ったのですが、どうでしょう。
    地球全体の水、とか地球全体の海水(ほぼ同じことになります)で計算しなおすと、180ccの場合、800個、200ccの場合、1,000個という計算になります。
    上の式で言うと、
    X=(AxA)/40
    となります。

  4. 齊藤彰 より:

    坂本さん、コップの水の量(A)と戻ってくる量(X)は比例しないのですね。そこまでは考えが及びませんでした。

    確かに、コップを2杯にすると、うち1杯に戻ってくる量は自身から戻る分ともう1杯から戻る分があり、もう1杯に戻ってくる量も同じですから、4倍戻ってくることになりますね。同様に考えてコップをN杯にすると戻ってくる量はN×N倍になるので、XはA×Aに比例する、納得です。

    また、太平洋あるいは7つの海の水の量をWとし、容量がWのコップを使うと、W=定数×W×Wであることから、定数は1/Wであることが導かれます。つまり、X=A×A/W。

    さらに、Wはccと分子数の単位の変換係数の影響を受けます。おそらく、この係数は、気圧の影響を受けるのではありませんか。深海の水は海面近くの水とは体積が異なりますから、コップの水を太平洋あるいは7つの海に流した後、よーくかき混ぜないと計算が狂ってしまうのでは・・・

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