Archive for the ‘生命保険入門’ Category

TeXLive, SageMath, MathJax

火曜日, 9月 19th, 2017

今年11年ぶりに名古屋大学の保険数学の集中講義の講師をしました。

11年前に作ったテキストを見直し、内容的には大して変更する所もなかったのですが、作り方を大幅に変えてみました。

11年前のテキストは、パワーポイントで作成し、数式の部分はLATEXで書いてpdfファイルになったものをイメージとして切り貼りし、図の部分はパワーポイントの描画ソフトを使い、またExcelの表をパワーポイントに埋め込むやり方で作りました。

今ではWordの数式エディターもLATEXとほぼ同様のものになっているので、それを使おうかとも思ったのですが、私のPCに入っているwindows8.1とセットされていたOffice2013では、Wordの数式エディターは何とか使い物になりそうだけど、パワーポイントでは使いものにならないような感じでした。

で、色々迷ううちにLATEXが今ではTeXLiveという開発環境に進化しており、その中にパワーポイントのようなプレゼンテーション資料を作るBeamerという環境が一般的になっていることが分かりました。

これであればLATEXのソースを編集してそれをプレゼンテーション資料の形でpdfファイルとして出力する所まで、一貫した作業ができます。

描画については、この中にTikZというソフトが組込まれていて、精確な図を描くことができます。
Excelの表についてはExcelのファイルをEPSという形式でベクトルデータとして印刷し、それをイメージファイルとして取り込むことで簡単に組込むことができます。

いずれにしてもビットマップイメージを使わないため、拡大しても縮小してもイメージが汚くならず、またファイルサイズも大幅に縮小できました。

まだ十分使いこなす所までは行ってませんが、数式や図、グラフ等を作る分には十分使えます。

で、そのテキストを使って名古屋に講義に行き、名古屋大学にいた頃の友人で今も名古屋で大学の先生をしている人と会って話をしている時に、今度はsageというソフトのことを教わりました。sageというのは、『賢人』という意味です。このソフトは今は正式にはSageMathというようです。

たとえば分数の通分や約分をしたり、整数の素因数分解をしたり、多項式の因数分解をしたり式を解いたり、円周率を何十桁も計算したり・・・ということもできるんですが、むしろ数学の群論・数論・代数幾何学等にも使える優れものだ、ということでした。

これもフリーソフトで詳しくは良く分かりませんが、何か大したもののようです。
グラフを描かせたり多項式を解かせてみたり、いじくってみました。

そうこうするうちに、今度はLatexの数式をブラウザで表示するMathJaxというものがあることが分かりました。htmlのHEADERの所に何行か挿入することにより、htmlの本文の中にLATEXの式を書いておけば、それがそのまま数式となってブラウザに表示されるというもので、今までの、一旦LATEXでpdfファイルを作って、それを切り貼りするなんていう手間がなくなります。

このブログはWordpressを使って作っているのですが、早速そのMathJaxを使ってみようと思いました。普通はWordpressにプラグインの形でMathJaxを入れるのですが、それをしようとすると現在私の使っているWordpressはバージョンが古すぎるのか、うまくプラグインがはまってくれません。本来的にはバージョンを上げるのが筋なのですが、それにはちょっと面倒な作業が色々ありそうなので、たかだか数行のテキストをHEADERに突っ込むだけなら直接HEADERに突っ込んでしまおう、と思ってやってみたらうまく行ったようです。

このブログの投稿でもそれに対するコメントでも、LATEXの算式がそのまま使えるようになりました。

こんな式も、
\[i=\lim_{m \to \infty}\left(1+\frac{i^{(m)}}{m}\right)^m-1=e^{i^{(\infty)}}-1\]

\begin{align}
&\int d(log{S_t})=\int \delta \cdot dt=\delta \cdot \Delta t \\
\\
&S_{t+\Delta t}=S_t \cdot e^{\delta \cdot \Delta t}
\end{align}
です。

ここまでの優れたソフトが全てタダで使えるというのも、何ともすごい世の中になったものです。

ハレーの生命表

金曜日, 2月 14th, 2014

「ハレー」というのは、あのハレー彗星のハレーです。
この人が史上はじめて実際の死亡データにもとづいて生命表を作り、その生命表を使って生命年金の計算をした、その論文を紹介します。

例によって訳文と、それに若干の説明を追加しています。

年金の計算では、まず単生の年金を計算し、次に二人の連生の年金を計算し、調子にのって三人の連生年金の計算までしているのですが、さすがにそこの部分はあまりにも込み入っていて、また訳す意味もあまりなさそうなので省略しましたが、それ以外は全訳です。

とにかく史上初の生命表がどのようにして作られ、どのように使われようとしていたかがわかる論文です。

単に「ハレーが最初に生命表を作った」では収まり切れない面白い話がいろいろみつかります。

良かったら読んでみて下さい。

http://www.acalax.info/bbs/halley.pdf

A4 20ページになるため、pdfファイルにしてあります。好きなようにダウンロードしてお読み下さい。

久しぶりのアクチュアリー関係の資料なので、ブログと練習帳掲示板と両方にこの記事を載せておきます。

エクイタブル―10

木曜日, 8月 11th, 2011

エクイタブル物語、いよいよ完結編です。

ここでは事業費率に関する話と、家族収入保証保険の話が載っています。

最後に、はじめに後回しにした「序文」を紹介しています。

生命保険の生い立ち(生まれたところ)-10

訳文とコメントを10回に分けて載せましたが、通しで見たいという方もいるかと思うので、通し版も作ってみました。

生命保険の生い立ち(生まれたところ)-全

お楽しみ下さい。

なお、訳語の統一その他、まだいろいろ不備があると思います。お気づきのことがありましたら、お知らせ下さい。

エクイタブル―9

木曜日, 8月 11th, 2011

エクイタブル物語、いよいよ最後にreversionary bonusの話です。

現金配当をするとお金が減っちゃうんで、その代りに保険金買増方式で、しかも払込保険料比例で計算するというやり方の具体例が示されています。

あと、付録が3つあるうちの、生命保険会社国有化の議論の時、著者がタイムズ紙に載せた記事が入っています。

お楽しみ下さい。

生命保険の生い立ち(生まれたところ)-9

エクイタブル―8

木曜日, 8月 11th, 2011

Equitableの保険料は、ロンドンのペストによる死亡を反映した高い死亡率を使って計算したため、非常に高い保険料だったと言われていますが、それがその当時の他の生命保険と比べていかに安い保険料だったか、ということが解説されています。

この保険料は死亡率を次のPriceのNorthampton表に変更して大幅に安くなった(とはいえ、このNorthampton表も後に計算間違いで、死亡率が高過ぎるということになるのですが)時、保険料収入を減らさないために、いよいよreversionary bonus(累加配当方式による契約者配当)が導入されるわけですが、それについて詳しくは次の回になります。

お楽しみ下さい。

生命保険の生い立ち(生まれたところ)-8

エクイタブル―7

水曜日, 8月 10th, 2011

ここでは(多分、イギリスでは良く知られている)Equitableについての誤った解説について触れています。

Equitableは注目された存在だった分、誤解も多かったようです。

解約返戻金についてもEquitableのスタートの当初から、契約解約時には解約返戻金があったこと、それも掛捨ての定期保険にも解約返戻金があったこと(これは英米の常識からするとあり得ないことのようです)が説明されています。
お楽しみ下さい。

生命保険の生い立ち(生まれたところ)-7

エクイタブル―6

火曜日, 8月 9th, 2011

今回の話題は、預託金と入会金の話です。

Equitableは予定事業費なしで保険料を計算し、初年度だけ保険料とは別に預託金と入会金を上乗せで払込むことになっていたようです。とはいえ預託金はすぐに中止され、入会金もほんの少しになってしまったということです。

この預託金に関して、特許状の請願に対する回答が面白いです。

お楽しみ下さい。

生命保険の生い立ち(生まれたところ)-6

エクイタブル―5

火曜日, 8月 9th, 2011

今回はRichard PriceとWilliam Morganという、伝説の大アクチュアリーの話です。

このEquitableをEquitableたらしめた大アクチュアリーが、歳をとって愚痴っぽくなって、あられもないことを述べる、という面白い話題です。

お楽しみ下さい。

生命保険の生い立ち(生まれたところ)-5

エクイタブル―4

月曜日, 8月 8th, 2011

今回は最高保険金額の話と、Equitableと対比されるAmicableの話です。

Equitableがリスクを制限するために最高保険金額を小さくし、それを除々に引上げていった歴史が書いてあります。
その際、保険金額が高い契約に対して割増保険料を徴収する「高額割増し」があったこと等が書いてあります。

AmicableはEquitableと何かにつけて対比される生命保険会社ですが、その会社について概観しています。

お楽しみ下さい。

生命保険の生い立ち(生まれたところ)-4

エクイタブル―3

月曜日, 8月 8th, 2011

今回は「医的診査」から「カレンダーの変更」までです。

エクイタブルには開業以来100年近く、社医がいませんでした。その代り理事には著名な医者がたくさんいました。
社医が採用されなかったのは、理事会の意向に反して、契約者総会がそれに反対したからだというような話があります。

「カレンダー」というのは被保険者の年齢を計算するのに重要なものですが、それについてEquitableがスタートする10年前に、イギリスではユリウス暦からグレゴリー暦に変更されたということと、年の始めが1月1日ではなかったので正しい年齢計算が難しかった、というような話が出てきます。

お楽しみ下さい。

生命保険の生い立ち(生まれたところ)-3