藤澤陽介『すべては統計にまかせなさい』

有料のメールマガジン『inswatch』に毎月1回記事を連載してもらっているのですが、3月31日の記事を転載します。
とりあえず、もう半月たったから、まあ、いいかな、とも思いますし、アクチュアリー関連の記事はあまり見る人も多くないので、まあ、いいかな、とも思い、転載します。

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 2014年3月
藤澤陽介『すべては統計にまかせなさい』

いよいよ平成25年度も今日で終わりです。今のところ、国債の利回りも0.6%台で推移し、為替も円安のままですから、生保各社の決算は今期も見てくれのいい結果になると思います。とりあえずは何よりです。

ところで、ライフネット生命のアクチュアリーの藤澤さんが『すべては統計にまかせなさい』というタイトルの本を出しました。この2月に発行されたばかりの新しい本です。この本の紹介をします。
タイトルの『すべては統計にまかせなさい』は、少し前に出てベストセラーになった『統計学が最強の学問である』のまねをして出版社が付けたものだと思うのですが、本の中身はこのタイトルとはまるで違います。
アクチュアリーというのは保険会社や銀行なので保険料を計算したり年金の計算をしたり、金利計算をしているのですが、この本ではそこで使われる統計学について、わかりやすく説明しようとしています。なお、著者は統計学、という言葉でなく統計、という言葉を使っているのですが、内容的には統計学、という言葉を使う方が普通だと思います。
統計学というのは、ちょっととっつきにくく、理解しにくいものですが、様々な例を使ってなんとかわかりやすく説明しようとしている本で、その分、正確さにはちょっと欠けます。正確でなくてもいいから読者をなんとなくわかったような気にさせようとしている本です。そのついでにアクチュアリーという人たちがその統計学を使って何をしているのか、ということについても同様に、正確でなくてもなんとなくわかったような気にさせようとしているようです。その狙いがうまくいっているかどうかについては、読んでのお楽しみ、というところです。
統計学やアクチュアリー学についてちゃんとした正確なことを知りたい人は、普通の教科書や紹介されている参考文献を読んでください、ということで、教科書を読みながらこの本のどこが正しくてどこがいい加減か確かめてみる、というのも面白いかもしれません。あらかじめこの本を読むことによっていろいろな言葉を知ることができるので、その分教科書を読むハードルが低くなるかもしれません。
アクチュアリーは保険料の計算の仕方など、保険数理の解説の本を書くことはありますが、統計学について本を書く、というのは珍しいので、面白いかもしれません。
この著者はアクチュアリーとしては変わった人で(一般にアクチュアリーというのは変わり者、というのが通り相場ですから、その中でも変わり者、というのはとんでもなく変な人、という意味か、かえって普通の人に近い人、という意味かは、読んでみて判断してください)、珍しく外向きの(アクチュアリー以外の様々な人とコミュニケーションをとることが好きでそれを大切にしている)人のようです。
一方、優秀な成績でアクチュアリー試験に合格し、海外に留学もしている人ですが、後輩のアクチュアリー試験受験者を支援する『アクチュアリー受験研究会』の会長もしている、ということです。
著者の勤めるライフネット生命は今年度に入ってから業績が低迷し、株価も期首の800円台から先週は400円を切りそうになるまで下落しています。会社の現状については有名人の会長でも社長でもなく、アクチュアリーである著者が一番よくわかっているはずで、その現状認識に従って商品戦略、経営戦略を立てるのもこの著者です。
その戦略がうまくいってライフネット生命の業績が回復するといいな、と思います。

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