ケインズ 7回目

さて
  所得=消費+投資
  貯蓄=所得-消費
  貯蓄=投資
という形で式の数は3つ。変数の数は4つですから、これだけでは一般に式を解くことはできません。さらに3番目の式は1番目の式と2番目の式から導くことができるので、実質的に式の数は2つ、変数の数は4つで、数学的に言うと自由度が2となります。

これだけでは式を解くことはできないのですが、しかし、所得・消費・投資・貯蓄が勝手に動くわけには行かず、常にこれらの式を満たしていなければならないという制約下にあるということです。

この関係式を道具として、ケインズはいよいよ経済活動の実態に切り込んでいくことになります。

ケインズにとって経済活動の目的は「消費」ですから、どうすれば消費を伸ばすことができるか、というのが当面の課題です。

ケインズがこの本を書いたのは、アメリカの大恐慌の後、世界中に失業者が満ち溢れていた時代です。山ほど失業者がいる時に「消費を増やそう」と言っても、そのためには労働者の所得が増えなければどうにもなりません。そこでケインズは消費を増やすために、まずは「所得を増やすこと」、そのために「雇用を増やすこと」に目標を変更します。

ケインズによると古典派の経済学では失業(非自発的失業すなわち働きたくても仕事がないということ)はあり得ず、失業者は皆給料が低いのを我慢すれば仕事が手に入るのに、もっと高い給料を要求して失業しているということになるようですが、その当時現実にどんなに給料が低くても良いからと言っても仕事にありつけない失業者が山のようにいたわけで、そこでどうして失業が生じるのか、失業を減らす雇用を増やすためには何をどうすればいいのかというのが、ケインズが古典派を裏切って一般理論を書いた理由ということのようです。

企業や消費者の経済活動のうち、自分で自由に意思決定できるのは消費と投資です。消費者は消費するかそれをあきらめる、あるいは先送りするか、自由に決めることができます。企業は投資するかしないか、自由に決めることができます。所得の方は、労働者は雇ってくれる企業がなければ所得を得ることができません。企業は製品・商品・サービスを買ってくれる企業や消費者がいないと所得を増やすことができません。

そこで企業や消費者が自分で意思決定できる投資や消費を増やしたり減らしたりしたら、その結果として所得はどうなるか、という分析が大きなテーマとなります。

ケインズはまず第3編「消費性向」という所で、消費(や投資)を増減させることによって所得がどう変化するか、検討します。続く第4編「投資誘引」という所で、今度は投資を増減させる原因は何か検討し、その中で金利(利子率)がどのような役割を果たしているか、金利(利子率)はどのように決まるのかを検討します。

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