東電いじめはもうやめよう

相変わらず原発事故で東京電力がいじめを受けていますね。金曜日には東電の社長さんが福島で袋叩きにあったような状況で、テレビでも大騒ぎで報道していました。

でも落着いて考えてみれば、東電はこの震災の被害者ではあっても加害者ではありません。原子力損害賠償法によっても、普通に考えれば東京電力に損害賠償責任はありません。

それを、今の流れは全ての賠償責任を東京電力に全面的に負わせてしまおう、というのですから、まあ、無茶苦茶な話です。

とはいえ、地震の方もまだたびたび余震が繰り返され、原発の事故も大分落着いてきたとはいえ、落着いてきたら今までわからなかった新たな問題が次々にみつかり、なかなか「これで安心」ということになりません。

震災というのは天災ですから、誰のせいということもできません。とはいえこれだけひどい目にあったのだから誰かに文句を言いたいという気持は良くわかります。

その気持が今東電と菅さんに集中しているんだろうと思います。マスコミは誰かを悪者にしてコテンパンにやっつけるというのは、得意中の得意です。誰も悪くないなんて言っても視聴者は喜ばないですからね。

でももうそろそろ、こんな理不尽なスケープゴートごっこはやめにしたらどうでしょう。誰かをいじめて鬱憤は晴らせるかも知れませんが、これによって何も改善はしませんし、何も前には進みません。

まあこの東電バッシングも震災が落着いてきてショック状態から回復する過程の一時的なもので、それほど長続きすることはないんでしょうが。

それにしても「もうそろそろ・・」と思うんですが。

6 Responses to “東電いじめはもうやめよう”

  1. 齊藤彰 より:

    おっしゃる通り、東電をいじめても何も残りません、何も始まりません。しかし、すべてを天災のせいにすることもできません。例えば、原発がなければこういう事故も起こらなかったわけですから。

    もちろんこれは極端な例で非現実的ですが、原発のもつリスクをもっと正確に評価できる仕組みはなかったのかと、悔やまれます。2002年の資源エネルギー庁作成の資料に、発電コストの試算があります。これによると、1kw当たり石油火力10.2円、原子力5.9円となっており、原子力発電のメリットが強調されています。しかし、内訳である積算項目は、建設費、修繕費、燃料費だけであり、想定外のリスクが顕在化した際のリスクコスト(沈静化費用、賠償金、その他経済社会に及ぼす影響額)が含まれていません。

    日本の原子力発電の安全確保の枠組みは、専門研究者がメンバーになっている原子力委員会を頂点とし、原子力・保安院(経産省)および電力会社から成るトライアングル態勢となっています。原発の危険性を訴える人々が多数存在していながら、リスクコストを正しく算入できなかったのは何故か。真剣に考えていくべきだと思います。

  2. 坂本嘉輝 より:

    斎藤さん、

    積算は、わかるものしか積算できないですから、わからないものは積算の中に入ってこないでしょう。

    リスクコストだけでなく、廃止後コスト(発電をやめた後のコスト)も入っていないのではないか、と思います。

    リスクコストについてはリスクが顕在化する確率を入れて計算するんでしょうが、最近話題の『べき分布』を仮定すると期待値は無限大になりかねませんね。

    わからないものをわかる、というのはなかなか難しいですね。

  3. 齊藤彰 より:

    坂本さん、コメントありがとうございます。

    原発の廃炉コストは算入されていると思います。これは100%の確率で必要です。

    リスクコストは、損保の保険料に相当します。損保会社がビジネスとして原発リスクをカバーすることができないのは、単に「わからない」のではなく、「無限大であるかも知れない」からではないでしょうか。もしそうであれば、原発は経済的にも割に合わない電力ということになり、原発推進にブレーキがかかったはずです。

    そういった議論をすることなく、原発ありきの議論しか許されないのが、現在の安全確保態勢であり、健全な牽制機能が働いていないのでは、と考えています。私は、福島第一原発事故は不可避な天災ではなく、人災の要素もあると思います。たとえアクチュアリーであっても、「わからない」で終わらせてはいけない事柄であると思います。

  4. 坂本嘉輝 より:

    斎藤さん、

    廃炉コストは算入されているとしても、適正に評価するのはなかなか難しいと思います。

    損保会社が原発リスクをカバーすることは十分可能です。カバーの上限を保険金額として限定すればいいだけですから。

    電力会社は事故が起こった時、それによる損害を全額負担しなければならないとすると、その額は『無限大』となるかもしれませんが、それは原子力発電所に限らず、どんなビジネスでも同じだと思います。もちろん、保険会社も同じです。

    これでビジネスができないのであれば、リスクを伴うビジネスはすべて国営でなければならない、ということになってしまいますね。

  5. 誠ジー より:

    「おどろおどろしい事件」が書き終わったので、ここにコメントしてみます。
    と言っても、誠ジーはノータリンなので支離滅裂なコメントになるかも知れません。

    ま、それも面白いでしょうから(笑)

    東電が、天災でありながら原発に関する損害に対して全て責任を負うと言うのは、特別措置なんでしょうか?それとも法律に照らし合わせると当然そうなるんでしょうか?

    これまで、確か十件ほどの原発差し止め訴訟があったと思いますが、ことごとく原発側が勝訴して建設されたように思います。

    勝訴理由は、天災や事故が起きると危険の訴えを退けて、裁判所が、天災や事故が起きないように二重、三重の対策を施しているから大丈夫。よって天災があっても問題ない。事故は起きない。と判断したような気がします。

    しかし、今回、そうではなかったことが証明されたのですから、もし、そのような判決に間違いないとしたら、誠ジーは、裁判官に、「てめぇが保障しろ!」と言いたいです(笑)。

    裁判官殿、間違っていたらごめんなさい。

  6. 坂本嘉輝 より:

    誠ジーさん、

    『東電が、天災でありながら原発に関する損害に対して全て責任を負うと言うのは、特別措置』です。そのために特別の法律が作られています。

    ただし、その法律では、『異常に巨大な天災地変』の場合は責任を負わなくてもいい、と書いてあります。すなわち、『異常に巨大』でない、ふつうの『天災地変』であれば『東電が、天災でありながら原発に関する損害に対して全て責任を負う』ということになります。

    くわしくは、この記事の二つ前の『補償料の大騒ぎ』という記事の中で解説していますので、見てみてください。

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