北朝鮮の金正日が死亡した(死亡していた)と言うニュースで昨日から大騒ぎですね。
今のところ、17日の朝8時ころ列車の中で心筋梗塞で死亡した、ということになっています。本当のところはどうなのかまだわかりませんが、いずれだんだんわかってくるものと思います。
問題はこれからどうなる、ということでしょうが、多分それはいまのところだれにもわからない、ということでしょうね。
NHKでやっている『坂の上の雲』の時代ならばここはなにがなんでもとりあえず軍隊を進駐させる、というところで、中国もアメリカも、ロシアも負けずに北朝鮮に軍隊を送り込むところです。さすがに今ではそんな乱暴なこともできないので、とりあえずここは様子見、というところでしょうか。
中国もアメリカも、相手に出し抜かれることだけは避けなければならない、とにらみ合いで、ロシアは中国とアメリカにだけいいところを持っていかれるのは我慢できない、ということで、表裏両面からすさまじい工作が繰り広げられているんでしょうね。
一応、後継者は三男の正恩、ということになっていますが、注目は誰が最初にしゃべりだすのか、ということなのかもしれません。すなわち、『この国難に国民一致団結して・・・』何ていう演説を、アナウンサーでない、指導者のうちの誰がするのかで、今後の体制が見えるのかもしれません。
ニュースの画面では身もだえして嘆き悲しむ人民の様子が出てきますが、このような悲しみ方、というのは儒教の正式な葬礼のマナーだ、ということを踏まえておかないと大きな誤解をしてしまうかもしれません。
誰かが死んだら、遺族のうちの誰か、あるいは遺族の代わりの他人の誰かがこのように身もだえして嘆き悲しむ、それが死者を悼む正式な作法だ、ということのようです。
北朝鮮というのは李氏朝鮮の後を継いだ強烈な儒教国家で、それは日本はもちろんのこと本場の中国よりかなり厳格な(とはいえ独特な)儒教の伝統が残っているようですから、そのつもりで見る必要がありそうです。
今はまだ金正日死亡、ということで皆がボー然となっている段階でしょうが、この次に北朝鮮の様々な人々がそれぞれの立場でこれからどうなるか、これからどうするか、ということを考え始めたところで、徐々にいろんな動きが出てくるんだろうと思います。
特に、これから冬の寒さは一層厳しくなります。ここ数年来の凶作や水害で人民はかなり痛めつけられていて、多分、暖房用の薪もない、食べ物もない、という状況でしょう。そんな中で権力の中心が欠けてしまって統制が緩んでしまっているんでしょうから、何が起こっても不思議じゃありません。
帝国主義の時代なら土地と人口を手に入れるためには何でもする、ということだったんでしょうが、今は経済合理性の時代でコストとメリットをはかりにかける時代です。将来的には北朝鮮を手に入れるメリットはかなり大きいと思いますが、そこに行きつくまでのコストの膨大さを考えると中国もアメリカも、韓国も、そう簡単に手を出すこともできないのかもしれません。
北朝鮮の人たちが大挙して生き残りをかけて国を捨て、韓国・中国・ロシアとの国境を越えて入ってこようとしたとき、これらの国々はどうするんでしょうね。そう簡単に受け入れることもできないし、かといって食べ物もない北朝鮮に追い返すこともできないし。
昨日のニュースを見ていて興味深かったのは、金正日の死亡の発表の前に、昼に特別放送をする、と北朝鮮の報道があったのにもかかわらず、野田さんが街頭演説に出かけようとした(結局途中で引き返したようですが)のは危機管理がなっていない、と日本では一部の人がコメントしていましたが、韓国では金正日が死亡してから2日間もそのことが分からなかったのは安全保障上大きな失態だ、という政府批判になっている、ということです。やはり日常的に戦争を意識している国と、もう半世紀以上も戦争を日常と考えないで過ごしている国の違いでしょうか。
特別放送がある、ということを知った韓国政府も、それが金正日の死亡のニュースであるわけがない、何かほかの重大な発表だろう、と思っていたようですから、そういう意味では野田さんが街頭演説に出かけようとした、というのもそれほど責められるようなことではない、ということでしょうか。