『他人の経験から学ぶ』のは難しい

この週末の動きはびっくりしましたね。

ユーロ危機、スペインの銀行がもうどうにもならなくなりそうで、スペインはEUに金融支援を要請することになりそうだということで、マーケットは大騒ぎになったのですが、それを受けてEUの財務大臣さんたちは会議を開き、とりあえず支援要請があったら10兆円まで支援すると決めました。
そうしたらそれで皆喜んでしまって『もう大丈夫だ!』とばかりに週明けは一気に円安です。
これにはビックリしました。

スペインはまだ金融支援の要請もしていなくて、単に『要請をせざるを得ないだろう』と言っているだけですし、EUの財務大臣の決定も『10兆円まで支援する』と決めただけで、誰がどれだけ負担するか、誰にお金を貸すのか、貸し倒れなったら誰がその損をかぶるのか、具体的なことは何も決まっていない、単なる口約束でしかありません。

いわゆる『総論賛成各論反対』で、話が具体的になるにつれ反対意見が増えてきて、何もできなくなりそうな合意でしかありません。

要するにスペインの銀行を助けるためにはEU各国に金を出してもらわなきゃならない、というのははっきりしたようです。EU各国はとりあえず助けてあげると口では言っているものの、本当にお金を出すかどうかははっきりしません。

こんな状況で『もう大丈夫』と喜んでしまうんですから、マーケットも困ったものですね。

さすがにそのあたり気がついたようで、昨日の後半からはマーケットはまたユーロ危機が不安だというムードに戻っています。

やはり『他人の経験から学ぶ』というのは難しいんですね。

同じようなことは日本でもバブルがはじけてさんざん経験しました。その際、口約束の『助けてあげる』というのは、結局一時しのぎでしかなく、何の解決にもならないというのは十分経験しているはずです。

『もうこれ以上ひどいことにはならないだろう』ということになったのは、国が『助けには要らない』と言っている銀行にも無理矢理お金を押し付けて、『何があっても銀行に十分なお金があります』と言えるようにした後のことです。
それ以前銀行が『お金は必要ありません』と言っても国が『いざとなったらお金を出します』と言っても何の役にも立たなかったわけです。

銀行の取付け騒ぎの時も一番の解決策は、銀行の窓口の向こうに札束を山のように積上げて、いくらでも預金を払い戻すお金はありますよ、と預金者に見せつけることだと言われています。
いつでも預金を引き出すことができるんであれば慌てて引き出すこともないので、取付け騒ぎも収まってしまうということです。

同様に銀行の破綻騒ぎの時も無理矢理その銀行にお金を投入し、これだけお金が増えたんだからということを見せつけるしかありません。
『いざとなったらその銀行にお金を持っていきます』なんて悠長な話は信用されません。

EUの財務大臣とか中央銀行のトップとかいう人たちは、全員とは言わないまでも優秀な人も多いはずです。
そういう人達も日本のバブル崩壊のあとの金融危機の経験から十分に学ぶことができないんですね。

やはり自分の経験として、目の前で大変な思いをしないと学ぶことができないんでしょうね。

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