TPPと反戦平和主義

予算案が衆議院で可決され、TPPが主要なテーマになっているはずなのですが、議論の中味が聞こえてきません。

何となく自民党に反対する人達がTPPにも憲法改正にも反対し、反戦平和主義を唱える人達と重なるように思えるんですが、その人たちは第二次大戦を反省する、ということをどう思っているんでしょう。

私の理解では第二次大戦というのは1929年の世界恐慌に始まる不景気に対し、大国はそれぞれ自国とその植民地を中心に経済ブロックを作りその中で生き残りをはかったのだけれど、そのような経済ブロックからはじき出されてしまったのが日本とドイツ。ドイツは東欧からロシアを植民地にすることで生き残りをはかり、日本は満州を植民地にすることで生き残りをはかった。植民地といってもイギリスやフランスなどのように収奪と搾取のために他国を支配するということより、むしろ余った人口を文字通りその国に植民し、生産性を高めて自国もその植民地も合わせて生き残ろうとした。そのようなドイツ・日本の植民地主義が他の植民主義の大国に反対されて戦争に追い込まれた、というものです。そのそもそもの発端は、多くの大国がそれぞれ経済ブロックを作って他国を排除した、ということです。

TPPというのは、そのような経済のブロック化をなくし、自由貿易を進めるものですから、第二次大戦でひどい目にあって二度と戦争をしたくないと思っている日本にとっては、何がなんでも参加しなくてはならないものです。

条件が多少不利な部分があったとしても、アメリカともう一度戦争することに比べれば、あるいはアメリカその他に経済ブロックを作られ、そのブロックから排除されることに比べれば、ほとんど問題にならないくらいのコストです。

第一次大戦、第二次大戦は歴史的にも悲惨な戦争でした。

第二次大戦で日本の戦死者は300万人と言われていますが、ヨーロッパの戦死者はそれをはるかに上回るケタ違いのものです。

第二次大戦は1,600万人、第二次大戦では5,000万人などという数字もあるようです。

で、このような膨大な犠牲者を出した重要な要因の一つが、アメリカの参戦が遅かったことです。

第一次大戦ではフランスとドイツがにらみあって殺し合った末にようやくアメリカが参戦して決着がつきました。第二次大戦でも日本の真珠湾攻撃までアメリカは参戦せず、ヨーロッパではイギリスもフランスもドイツに苦しめられました。

戦争が起こったとしても犠牲を大きくしないためには、常にアメリカを巻き込んでおくことがもっとも重要です。

アメリカという国は『世界の警察官』気取りでしゃしゃり出てくる時と、『アメリカは口を出さないからアメリカにも口を出すな』とばかりに南北アメリカの範囲に引き籠ってしまう時との二面性を持っています。
第一次大戦が終わって国際連盟ができたのは『世界の警察官』のアメリカですし、この国際連盟にアメリカが参加しなかったのは『引き籠り』の方のアメリカです。

このようなアメリカに懲りて、第二次大戦後はイギリスもフランスもアメリカを逃がさないように国際連合の中心に据えましたし、アメリカももう引き籠りをやめ全世界のために役割を果たすという姿勢を取り続けました。

しかしアメリカも次第にくたびれてくると、時折引き籠り病が現れてきます。

オバマ政権の8年間は、口では世界の警察官ばりに『核兵器廃絶』とか『シリアのアサドを排除する』などと言いますが、行動は何もしない引き籠りです。

今進行中の大統領候補選びでトランプが主張しているのがまさに引き籠りです。えばりん坊の引き籠りと言ったところです。世界平和のためには一番困った大統領候補です。

このようなことから、アメリカ人はトランプを大統領候補にしたくない人も多いのですが、一部の人は弾き籠りの代表として大統領にしたがっている、というわけです。

アメリカが引き籠ると、空いた穴は中国やロシアが埋めるしかなくなるし、そうなると世界各地で好き勝手が許されるようになり、北朝鮮にしてもISISにしても困った連中が跋扈する世界になりかねない、ということです。

日本が戦争に巻き込まれないで安全な時代を過ごすためには、多少の犠牲を払っても多少はコストがかかっても、何よりもまずTPPをきちんと仕上げることが肝心だと思うのですが、これに反対する人(特に反戦平和主義を標榜している人)はどう思っているんでしょうね。

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