またまた小関さんの本ですが、この本にまとめられているのは小関さんがNC旋盤の勉強を始める以前のもので、まだNC旋盤など何するものだ、というようなスタンスなんですが、むしろ著者が高校を卒業して旋盤工になり、見習いとしてこき使われながら社会正義のために頑張っている姿が書かれています。
高校生のうちから(朝鮮戦争の前のころのことです)社会正義に目覚めた文学少年として反戦・反米運動に参加して、ビラ配りのために町工場に潜り込み、そこで働く職工を見て、少年客気のあまり自分も職工になろうときめてこの世界に飛び込み、60年安保では職場の仲間と零細企業の未組織の労働者としてデモに参加したり、職場で労働組合を作って待遇改善の闘争をしたり、労使の合意がなされる条件として、職場の問題児の著者だけが職場をクビにされたり、そのような中、当初の自ら職工となって中から革命を起こそうという考えが非現実的な話だと理解するようになり、本物の職人となろうとするあたりを、自分自身と周りの様々な職工たちの姿を描くことで表現しています。
これまで私が読んだ、様々な職人の世界に関する話とは違い、むしろ著者本人に焦点を当てた、プロレタリア文学から職人のドキュメントに至る過程が非常に面白い本です。
お勧めします。