原発事故の報告書 - その2

原発事故の報告書、やはり正月休みにはいろいろバタバタして読みきれず、今本文200ページ、付録130ページくらいの所まで読み込んでいるのですが、やはり思った通り面白いですね。

本文の方の『Ⅰ はじめに』のところに、この事故調査検証委員会の設置の経緯や基本方針が書いてあるのですが、その基本方針の最初に『①畑村の考え方で進める』として、この委員会の委員長である畑村さん(日本における「失敗学」の権威です)が全責任を持ってやりたいようにやる、ということですから、これだけでも信頼できます。
また、『⑤責任追求はしない』ということで、客観的な事実のみについて調査・検証するというのも安心できます。

本文『Ⅱ 福島第一原発における事故の概要』では、事故自体の概要がコンパクトにまとめられているのですが、ここはむしろ付録の資料の方に1号~6号の原子力発電機の性能から福島第一原発の敷地の配置図・組織や原子力発電の仕組など図がたっぷりあって、これだけでも見飽きないです。

原子炉の建物(R/B)・タービンの建物(T/B)の各階の見取り図と、津波でそこにどれだけ水が来たか、事故後、場所ごとに放射能レベルがどれだけだったかも出てますし、原子炉の内部構造も出てます(原子炉建屋とかタービン建屋とかの建屋というのはbuildingの訳なんですね。たしかに地上5階地下1階くらいのビルではあります)。

震災・津波の後で電源が殆どなくなってしまったのですが、外部電源がどこでどのようにして切れてしまったのか(電線が切れたり鉄塔が倒れたり、遮断器が壊れたり)の写真と図、原子炉への注水に使った消火栓が津波のあとでどんなことになっていたか(これは消火栓を見つけるのが大変だった、という話があとで出てきます)とか、事務本館がどんな状況になっていたか(これは地震でしっちゃかめっちゃかになった本館に決死隊が原子炉の図面を取りに行く話があとで出てきます)等、写真と図で説明してあります。

このⅡの部分の資料はほんとうに面白いです。

次の『Ⅲ 災害発生時の組織的対応状況』の所には、災害対策のためにどのような組織が作られ、どのように動いたのかが概説してあります。

1つのポイントは首相官邸の地下に正式な(法律やルールにもとづく)危機管理センターができ、と同時に官邸5階に非公式的な(法律やルールにもとづかない)対策本部が(菅さんを中心に)でき、この間の情報交換がうまく行かなかった、ということです。

もう一つは、東京電力では本店には本店対策本部、現地の原発には現地対策本部ができ、この二つの間はずっとテレビ会議システムがつながっていた、ということです。

テレビニュースで枝野さんとか保安院の何とかさんとかが入れ替わり事故の状況を説明していましたが、電源がなくなってどうやって現地と連絡していたんだろうというのはずっと疑問だったのですが、これでわかりました。でもよくテレビ電話が生きていましたね。そしてもしこれも切れていたとしたら、どんなことになっていたんだろうなとも思います。

ここでいよいよ『Ⅳ 第一原発における事故対応』になるのですが、ここでは地震発生から津波が来て電源が失われ、原子炉の状況がわからなくなってコントロールもできない中、現地では必死の作業が続けられ、何度かの水素爆発もありながら何とか原子炉の冷却にまでこぎつけた経緯を事細かに報告しています。

何日何時何分に、どこで・誰が・何をしたかという形で書かれていますから、非常に具体的で良くわかります。その中で、現場の作業はいくつか(いくつも)の間違いもありますが、本当にとても素晴らしいものです。
現場の緊迫感が冷静な報告書の説明の中から伝わってきて、ほんとに手に汗を握る読み物になっています。

これについては、ページを改めてコメントしましょう。

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