格差

慶應大学に権丈(けんじょう)先生という、知る人ぞ知る有名な先生がいます。
その先生のブログ(先生は「ホームページ」と言い張っています)(http://kenjoh.com/)は楽しみでいつも見ています。

そこからの話題なのですが・・・

しばらく前にちょっと話題になったのですが、今年の初めに内閣府経済社会総合研究所という所から、『社会保障を通じた世代別の受益と負担』という論文が出ています。
(要約と目次
http://www.esri.go.jp/jp/archive/e_dis/e_dis290/e_dis281.html
本文
http://www.esri.go.jp/jp/archive/e_dis/e_dis290/e_dis281.pdf

いわゆる【社会保障の世代間格差がこんなに大きい】というような趣旨の論文です。

これに対して権丈先生が座長をしている厚生労働省の『社会保障の教育推進に関する検討会』がコメントを発表しています。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000026q7i-att/2r98520000026qbu.pdf

元々の論文が本文23ページに図表等を付けて全51ページの立派な論文なのですが、権丈先生の方の反論も『社会保障の教育推進』ということで、教育的配慮から27ページのしっかりした論文になっています。

権丈先生流に『あたるをさいわいなぎ倒し・・・』といった感じで、内閣府のペーパーをコテンパンにやっつけているので、なかなか痛快なものです。でもそれだけじゃなく、社会保障というのは一体『何』で、『どのように考えるべきか』という基本的な視点が明確に説明されていますので、少なくともこの権丈先生の方のコメントは読んでみると良いと思います。

色々な論点があるのですが内閣府のペーパーは、『世代間格差がこんなにあって問題だ』と言っているのに対して、権丈先生の方が『(内閣府の論文は)世代間格差の評価の仕方についていろいろ問題があるけれど、世代間格差があること自体は否定しない。でも、その格差があることは必ずしも不公平ということでもないし、問題だということでもない』という主旨になっています。

詳しくは直接それぞれのペーパーを見ていただくとして、ここで私は変な疑問を持ってしまいました。それは、この世代間『格差』って何だろう・・・ということです。

内閣府ペーパーでも権丈先生のペーパーでも、社会保障のための個々人の負担と受益との差が世代間で異なることを「格差」と言っているようです。

で、私が考えたのは、確かに違いがある、差異があるのはわかるけれど、それが格差なんだろうか。
たとえば死亡率であれば、性別により年齢により死亡率が異なるのははっきりしているけれど、それを『男女間の格差』とか『年齢別の格差』と言ったりはしないよな、とか、
病気勝ちの人は早死しそうだけれど、健康な人は長生きしそうだ。だけどそれを『格差』とは言わないよな、とか、
所得が多い人は所得税率が高いのに対し、所得が少ない人は所得税率も低い。だけどそれを『格差』とは言わないよな・・・ということです。

で、それじゃあ「『格差』っていうのは一体何なんだろう」というのが私の疑問です。
誰かわかっている人がいたら教えて下さい。

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