4月22日の日経朝刊1面、私の家に配達してもらっている13版では
「医療介護・新エネルギー・・・・/将来有望な産業 雇用1,000万人増/経産省試算 20年、失業率0.4ポイント改善」
という見出しの記事が出ました。
経産省の産業構造審議会の資料だということで、試算の内容が紹介されています。
この記事に対してKENさんが「そんな試算はとても理解できない」としてブログを書いたので(http://d.hatena.ne.jp/rocohouse/20120423)、私が、記事の読み方がちょっと変だし、「これくらいのことは考えられないこともないんじゃない?」というコメントをしました。
それに対してKENさんから「坂本さんご自身はこの“通産省の試算”をどのように受取っているのか?」と質問を受けてしまったので、仕方なくその“試算”とやらを見ることにしました。
資料は経済産業省の産業構造審議会新産業構造部会(第6回)の配布資料のうちの資料3「就業構造の将来予測について」という資料のようです。
http://www.meti.go.jp/committee/sankoushin/shinsangyou/pdf/006_03_00.pdf (いつものことですが、これを探すのも結構手間なので、新聞社も記事にするならこれくらいのことは書いといてくれよナと思います。)
で、この資料をざっと見てみたんですが、ちょっと厳しく言うと、日経新聞の記事は「誤報」のようなものです。
この資料あるいは試算では「空洞化ケース」と「成長ケース」の2つの試算をしています。
試算にはいろんな前提が使われているんですが、「空洞化ケース」というのは、自動車の輸出が半減し、国内の新産業創出もうまくいかず逆輸入が増加するとこんな悲惨なことになりますよ、というケースです。
「成長ケース」というのは、ヘルスケア・子育て、新しいエネルギー産業、クリエイティブ産業で国内の新産業が拡大し、国内の消費が活性化し、アジア向けの輸出や対外投資が拡大し、国内の投資や消費も活性化する、というシナリオで、その時経産省が用意している政策を実現することができたらこんなステキな姿が描けますよ、というケースです。
そしてそれを実現させるために政策を実施する予算をつけてちょうだい、という、まぁ言ってみれば経産省の宣伝広告みたいな資料です。
景気が良くなって、さらにそれを後押しする予算もつければ、こんなに良いことになるというレバタラの話ですから、別にそれほど大騒ぎするほどのものじゃありません。
日経新聞の記事は「空洞化ケース」については全く無視して、「成長ケース」についてもレバタラの前提条件を無視して、その結果の「こうなる」という将来の姿だけを紹介しているんですから、ほとんど何の意味もない、誤解の種をばら撒くだけの記事になってます。
こんな記事が1面に載るんですから、日経新聞も困ったものですね。