『私の昭和史』 末松太平著

この本の著者の末松太平さんという人は、戦前のいわゆる青年将校と呼ばれる人の、いわばリーダー格の一人で、5.15事件の前から2.26事件にかけての様々な場面を経験しているのですが、たまたま幸か不幸か直接的にテロには参加する機会に恵まれず、2.26事件で青森から中央に対して意見を言ったり電報を打ったりしたことを咎められ、有罪になって陸軍を追い出されている人です。

いわば2.26の生き残りの一人が、昭和38年になってその当時の青年将校を取り巻く上官や兵隊たちの生きざまを活き活きと書いています。

2.26事件のいわば神がかり的な青年将校たちとは違って、いたって冷静に状況を見て行動したことを記録したものです。

著者が幼年学校(陸軍士官学校に入る前に中学2年生位で入る学校)に入る所から始まり、満州事変・5.15事件・相沢事件から2.26事件、最後は著者と同じく青年将校のリーダーだった大岸さんという人が戦後変な宗教にはまって、ついには死に至るのを見届けるまでが書かれています。

登場する青年将校達が生き生きとした青年として描かれています。彼らが何を考え、何をしようとしていたかが良く分かります。

この本は三島由紀夫が激賞したということですが、文学としても十分読み応えのある本です。

文庫本で上下合わせて本文だけで500ページ強の本ですが、楽しく読めます。
2.26事件の青年将校たちについて興味がある人には是非ともお勧めです。

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