出しゃばりのアメリカと引籠りのアメリカ

アメリカという国は二つの顔を持っています。
『出しゃばりのアメリカ』というのは、世界の警察官という名前で世界中のあらゆる事に介入して、アメリカ流の正義を実現しようとします。

『引き籠りのアメリカ』というのは、アメリカが自分の固有のテリトリー(自分ち)だと考える南北アメリカ大陸の範囲に引き籠り、その外の事についてはアメリカの利害に関係がなければ知らん顔を決め込むというものです。

アメリカという国は、この二つの顔が交互に出てきます。

第一次大戦が始まった時は、まだ引き籠りのアメリカだったのでなかなか参戦しなかったのですが、途中から出しゃばりのアメリカになり参戦したので、かろうじてイギリス・フランスはドイツに勝つことができました。

その後第一次大戦が終わり、終戦処理をして国際連盟を作るあたりまでは出しゃばりのアメリカが主導してすべてを仕切ったのですが、国際連盟がスタートする時にはもう引き籠りのアメリカに変わっていたため、国際連盟はアメリカ抜きでやらなければならないことになりました。

その後ドイツも日本も国際連盟を抜けて国際連盟が機能しなくなり、1939年にはヨーロッパで第二次大戦が始まりました。それでもアメリカはまだ引き籠りのままでしたから、フランスはドイツに占領され、イギリスも風前の灯でした。その引き籠りのアメリカを出しゃばりのアメリカに変えたきっかけが1941年の日本軍による真珠湾攻撃です。

以来、アメリカは出しゃばりのアメリカをずっと続けていますので、第一次大戦・第二次大戦でひどい目にあったヨーロッパや日本は、アメリカがまた引き籠りになってしまわないように最大限の努力をしてきたわけです。しかしそれももう75年も続けていることになります。引き籠りのアメリカを実際に経験している人は今では殆ど生き残っていないということです。

今回トランプさんがアメリカの次期大統領に選ばれることになったのですが、選挙運動中の発言を見ていると、トランプさんはいよいよ引き籠りのアメリカを再現しようとしているようです。これはアメリカ以外の国々にとってははた迷惑以外の何物でもありません。とはいえ、独立した国と国の間で無理やり引き籠りを引っ張り出す有効な手段はないので皆困っています。昨日トランプさんの勝利で世界中が大混乱になっているというのもそういうことです。

日本でも戦後1945年以来71年にわたってアメリカ軍が駐留し、日本を防御してくれていたため、反戦平和主義の人たちが日本国内でいくら反米を叫んでもその体制はビクともせず、安心していられた訳ですが、それがトランプさんが大統領になりアメリカが引き籠りになったら、まるで違った世界になる、ということです。

いずれにしても70年以上慣れ親しんだ世界が変わるかもしれない、ということです。今まで当り前だと思っていた世界を、今まで当たり前だと思っていたことを当たり前ではないかもしれない、と一度見直してみたら面白いかも知れません。

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