『細胞は会話する』 丸野内 棣

この本も図書館の新しく入った本コーナーでみつけたものです。

一般の生物学の解説書の一歩先まで解説している本です。
たとえばDNAの二重らせんの話、実際はその二重らせんがヒストンというタンパク質に巻き付いていて、その巻き付いたものがらせん状になっていて、それがまたらせん状になっていて・・・という所までちゃんと説明してあります。

あるいはDNAからRNAへの転写とかDNAの複製というのも、どこから始まってどのように進行するのか、それをどのようにコントロールしているのか、という話が説明してあります。

あるいはDNAのうち実際にRNAに転写されてタンパク質を作るのに使われる部分は全体の2%くらいしかない、という話の続きとして、残りの98%は遺伝子ではないけれど、その98%のうちの80%は遺伝子がどの細胞で、いつどのくらいの頻度でRNAに転写されるかという調整のためのものだ、というような話が説明されています。

DNAはRNAに転写されて様々なたんぱく質合成に使われるわけですが、実はDNAができる前はRNAだけで様々なたんぱく質合成や遺伝情報の複製に使われていたんだ、その前はPNAがたくさんできてそれがRNAに進化していったんだ、なんて話も出てきます。

細胞レベルでは嫌気性の古細菌が水素細菌を取り込んでミトコンドリアとすることにより酸素の毒性を克服し、真核細胞に進化した経緯が説明してあります。

細胞分裂・核分裂の失敗により遺伝子が倍数化して、遺伝子に余裕ができて様々な新しい進化が可能になるという話も説明されます。

この本の最後にはミツバチの生態についての章があり、単細胞生物が多細胞生物に進化し、細胞の機能分化が出来上がったんだけれど、それがミツバチの世界では多細胞生物である個々のミツバチがそれぞれ機能分化し、全体の集団としての機能を高度化させているという話が説明されています。ミツバチ集団の中の個々のミツバチの機能がどうなってるのかを調べるため、個々のミツバチにマイクロチップを埋め込んでいるという話が出てきます。しばらく前に同様の研究のために個々のミツバチにQRコードを貼り付けてその行動をトレースしているなんてニュースもありました。言われてみればもっともな話なんですが、IT技術の進歩がこんな所にまで及んでいるというのは驚くばかりです。

この本、一般に出ている生物とか細胞とか遺伝子とかの本の一歩先を行く説明で非常に面白く楽しめるのですが、残念なことにかなりふんだんに挿入されている図がちょっと小さくて老眼の私には殆ど読めません。とはいえ、図が読めなくても本文の説明だけでも十分に楽しめますが。

ということで、一般の生物学のさらに一歩先の生物学を知りたい人にお勧めの本です。

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