この本、韓国と日本でベストセラーになって、図書館に予約を入れたら1年待ちくらいなのですが、まぁのんびり待とうと思っていたら読み終わったからと貸してくれる友人があり、借りて読みました。
まずタイトルの『反日種族主義』というちょっと意味不明な言葉ですが、近ごろ国民でも民族でもない部族とか種族とかよばれる、もっと原始的な人間の集団とその集団の在り方について、tribe(種族)という言葉から、tribalismという言葉が使われるようになっているようで、このtribalismの-ismを主義と訳して『種族主義』という言葉になったようです。
で、このタイトルが言っているのは、韓国あるいは韓国人あるいは北朝鮮を含んで、朝鮮・朝鮮人(今後めんどくさいので韓国あるいは韓国人ということにします)は社会的にまだ国家とか民族を名乗るほど成熟していないで、せいぜい部族とか種族のレベルにしか達していない、その種族あるいは部族として人間の集団である韓国人あるいは韓国をまとめている考え方、あるいは信仰、あるいは迷信として、建国神話の檀君神話や中国に対す事大主義、風水の考え方等と並んで重要な要素として『反日』という信仰がある。即ち韓国(あるいは韓国人)は反日という迷信を信じる種族あるいは部族でしかないんだ、ということのようです。
この-ismを主義とすることに関しては、たとえばシャーマニズムはシャーマン主義とは普通言わないし、日本の神道も英語ではshintoとかshinto-ismとか言いますが、shinto-ismを神道主義とは言わないよな、と思います。日本語では片仮名が使えるので-イズムという言い方ができるんですが、韓国語ではそれができないんでしょうね。この本の国語の原題は反日種族主義という漢字をハングル読みして書いたもののようですから、それを日本語に直訳したものと思います。日本語としては『反日』トライバリズムとした方が分かりやすいでしょうか。日本語として分かりにくい方が却って売れるということなのかも知れません。そういえばジャーナリズムという言葉も-主義という言葉に直しにくい言葉ですね。ツーリズムという言葉もありました。
で、この本の著者代表の李栄薫さんというのは李承晩学堂の校長だ、ということで、この本が出版されるについては李承晩学堂の支援があったようです。
李承晩という名前は若い人にとっては聞いたこともない名前かも知れませんが、私などにとっては子供の頃李承晩ラインがどうのこうのとニュースで何度も聞いた覚えのある名前で、何となく反共・反日の気ちがいじみた独裁者だ、という位のイメージなんですが、この人の名前を冠する学校が今もソウルにあるんだ、という話に驚きました。
そして李承晩が政治活動のため牢屋に入っている時に一念発起して『独立精神』という本を書いたという話がこの本の最後の方に出て来ますが、これはヒトラーが牢屋の中でマインカンプ(我が闘争)という本を書いた話を思い起こさせます。この本を読んでみたくなりました。
李承晩がその『独立精神』を書いたのは1904年頃、ヒトラーのマインカンプは1924年-25年頃ですから、李承晩の方が20年早いということになります。
で、この本の主たる著者によると、李承晩というのは一般の考えるような気ちがいじみた独裁者ということではなく、むしろ種族主義(トライバリズム)の段階にある韓国の社会を、何とかして国・民族のレベルまで高めようとして一身を捧げた愛国者だということです。残念ながら李承晩の研究者や伝記作者も含めて、李承晩の『独立精神』を読んだことのある人は殆どいないようだ、と言っています。
で、この本の主旨は、韓国は人口の面でも経済の面でもかなり大きな存在になっていますが、社会としてはまだ未開な種族あるいは部族のレベルにしか達していなくて、その種族あるいは部族という人間集団をまとめている中核の思想・信仰、あるいは迷信の中心の一つとして『反日』があるわけですが、しょっぱなプロローグで『嘘をつく国民』『嘘をつく政治』『嘘つきの学問』『嘘の裁判』と嘘を連発して、最後に『反日種族主義』というサブタイトルでいかに韓国あるいは韓国人が嘘つきかを主張しています。
その後本文の部分で、韓国の反日の主張である『韓国の国土に鉄抗を打ち込んで気脈を切断した』『土地測量で国土の4割をだまし取った』『米を奪った』『徴用工の問題』『慰安婦の問題』等々、韓国の反日の主張が次々に出てきて代わる代わる別々の著者によって次々に反駁されていきます。このあたり一般の読者向けに執筆者が易しく書いたということなのか、韓国では漢字を使えないので必然的に文章がやさしくなってしまうのか分かりませんが、スラスラ読めます。
この反論の部分、日本の学者の書く物より徹底しているようです。
で、最後に『ホントにこんなことを続けていたら国が亡くなってしまうぞ』という詠嘆というか悲鳴というか、そんな言葉で締めくくっています。
日韓の反日を巡る議論に興味があれば、本文の各論を読むと良いと思います。そんなロクでもない議論はどうでも良いということであれば、序文・はじめに・プロローグの部分と最後のエピローグ・解説の部分を読むと良いと思います。
いずれにしても読み応えのある本でした。お薦めします。