暗黒星雲の恐怖 (その2)

さて翌5月29日いつものように目が覚めて、「さて・・暗黒星雲はもう消えたかな?」と思ってあちこちキョロキョロしてみると、やはりまだあります。これで単なる残像じゃなかったことがはっきりしました。じゃぁ何なんだ?と言っても何もわかりません。
視野の片隅が暗くなっているのはそのままですが、そこの部分も全く見えないわけではありません。視野を移した直後はその部分は真っ暗ですが、しばらくすると暗いのを通してその向こうが次第に見えてきます。その部分だけサングラス越しに見ているような具合です。でも最初からそのつもりになれば、別にそれほど不自由はありません。
テレビを見るのも新聞を読むのもパソコンの画面を見るのも、何の問題もありません。私は普段眼鏡をかけていますが、そのレンズがかなり汚れていたりすると視野の一部が見えにくくなります。それと同じような状況です。
でも正体がわからいのはやはり問題です。このまま暗黒星雲が広がって視野全体に広がるとか、暗さがどんどん増加してその向こうが全く見えなくなるというのは、やはりちょっと困ります。
商売柄、読んだり書いたりは一番大事です。また個人的にもあれこれ本を読むのが一番の楽しみです。とにかくまずは一体何が起こっているのか確認しないと始まりません。
幸い(というよりいつものことですが)、この日は午後アクチュアリー会の会議があるのですが、それ以外は特に予定が入っていません。まずはお医者さんに行って診てもらうことにしました。
とはいえ普段からお医者さんにはできるだけ近づかないようにしていますから、どこに行ったら良いか全く見当もつきません。まずはいつものように会社に行って皆に状況を説明して「今日は病院に行くから」と言うと、すぐに適当なお医者さんを探してくれました。
会社から歩いて3分くらいの、JR神田駅のすぐ近く、1階2階にお寿司屋さんの入っているビルの3階に「神田眼科診療所」という所がありました。それをやっているお医者さんは順天堂病院の出身者で、どこかの市立病院の眼科部長もしていた人のようです。
とりあえず病院ですから午前中くらいはかかるつもりで、待ち時間に読む本をちゃんと用意してその診療所に出かけました。
まさに駅前の診療所ですから、サラリーマンや近所の商店のおかみさんみたいな人など、本当に様々な人が来ています。でも視力検査とかコンタクトがどうしたとか、あまり重大な病気の人はいないようです。しばらく待って、診察です。症状を聞かれ目を覗き込まれて、その後色々な検査です。瞳孔を開いて眼底写真を撮ったり眼圧を測ったり、色々した後またしばらく待たされて、最終的に先生が「網膜剥離のようです。網膜剥離というのは、網膜の一部が破れたり穴があいたりして、眼球の中の水が網膜の裏側にまわってしまって網膜がはがれるのですが、見たところ破れたり穴があいたりしている所がみつかりません。そうすると、もしかしたら「ハラダシ病」かも知れません。いずれにしてもできるだけ早くちゃんとした病院で診てもらってください。お茶の水の順天堂病院で良ければ紹介状を書きます。30分位かかりますけど後で取りに来ますか? 待ちますか?」とのお話です。こちらはあらかじめ読む本は持って来てるし、会社から歩いて3分位とはいえ、行ったり来たりするのも面倒なので、そのまま紹介状を書いてもらうのを待ってオフィスに戻りました。お昼ちょっと過ぎ位に戻れたので、午前中いっぱいかかったことになります。
目がおかしいのにハラダシ病とはこれ如何に・・と思ってちょっとインターネットで調べてみると、「原田氏病」とか「原田病」とかいって、その昔原田さんというお医者さんがみつけた病気のようです。その後入院した順天堂病院の先生方はもっぱら「原田病」と言っていました。こちらは最初の神田眼科診療所の先生の「ハラダシ病」の名前が気に入ってしまっていたので、基本的にこちらの名前を使うことにしました。
あまりありふれた病気ではないけれど、ネット上に結構色々な記事がある所を見ると、それほど「滅多にない」病気でもないようです。いずれにしてもこれに決まったわけではないので、まずは順天堂で診てもらってからのことです。
午後はアクチュアリー会の会議に参加して、夕方戻って来てまたネットをちょっと調べ、結局仕事は何もしなかったけれど、何となくくたびれてしまいました。
神田眼科診療所の先生は「なるべく早く」と言ったけれど、明日は土曜日です。順天堂病院は土曜日もやっているかどうか聞き損ってしまったけれど、やっぱりフル稼働の月曜日の方が良いよね、と勝手に理屈をつけ、いつものように土曜日はお休みにしよう!と決めて帰宅しました。
時々「もしかするといつの間にか暗黒星雲が消えてしまっているんじゃないか」と思って、そのつもりで視野を動かしてみたりするんですが、やはりしっかりあります。
そんなことを気にしないで、誰かと話をしたり書類を見たりしている分には殆ど気がつきません。「まぁなるようにしかならない。明日は休みだ」と、いつものようにぐっすり眠ってしまいました。

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