『トウガラシの世界史』―山本紀夫

この本も図書館の『お勧めコーナー』で見かけて借りて読みました。
最初この本が出た時興味があったのですが、何となく読みはぐっていたもので、やはり面白い本でした。

トウガラシとはどういう物か、から始まって、中南米でのトウガラシの食べられ方、ヨーロッパへどう渡ってどう食べられているか、アフリカにはどう渡ったのか、東南アジアにはどう渡ってどう食べられているか、中国では、韓国ではと来て、最後に日本では、となっています。

香辛料をインドから直接輸入しようとしてヨーロッパの大航海時代が始まったのですが、コロンブスのアメリア発見とバスコダガマのインド航路の発見で、中南米との通路・インドとの通路ができたことで中南米の植物が利用可能となったこと、コショウなどの香辛料は限られた地域でしか栽培できないのに、トウガラシはどこでも栽培できるため世界中に広まったこと、ヨーロッパに渡ったトウガラシからハンガリーであまり辛くないパプリカが生まれたこと、パプリカにはビタミンCが大量に入っていて、それを見つけたセントジェルジはノーベル賞を取ったこと、たった数百年で世界中でトウガラシを大量に食べるようになったのに対し、日本では七味唐辛子の中に入ったくらいだなんて話が入っています。

中南米では栽培種のトウガラシだけでなく野生のトウガラシもいまだに利用されているとか、トウガラシの辛さの単位は人間の舌で、トウガラシ抽出液を水で何倍まで希釈した時に辛さが認識できなくなるかで測るとか、バスコダガマのインド航路は2回目からはブラジル経由で喜望峰に行ったということで、立ち寄ったブラジルでトウガラシを積み込み、それをインド・インドネシアで降ろしてコショウに積み替えたのかも知れないとか、ヨーロッパがアジアからアメリカにサトウキビを持ち込み、そのサトウキビ栽培のために大量のアフリカ人奴隷をアフリカからアメリカに運んだ、その代わりにトウモロコシを中南米からアフリカに運んだなんて話もありました。

また『赤とんぼ羽をもぎればトウガラシ』という句がありますが、『朝顔につるべ取られてもらひ水』で有名な加賀の千代女がこの句について『俳諧はものを憐れむを本とす』と言って『トウガラシ羽をはやせば赤とんぼ』と手直しした、なんて話もあります。すなわちこの頃までには日本でも既にトウガラシがごく一般的なものになっていたという事です。

お勧めします。

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