暗黒星雲の恐怖 (その3)

さて6月1日月曜日。今日は順天堂病院に行く日です。大学病院だから多分とてつもなく時間がかかるだろう、今日も仕事はできそうもないなと思って出社しました。
朝のミーティングのあとすぐに順天堂病院へ。素晴らしい病院で、受付も機械化されていて中も綺麗で申し分なしです。今日もしっかり読む本を用意していますから、いくら待たされても平気です。
視力の検査・眼圧の検査・眼底の検査・聴覚の検査・血圧の検査等々、山ほどの検査(検査と検査の間に山ほどの待ち時間)。最終的な診断は4時ころです。
「多分原田病だと思われます。最後のダメ押しで明日髄液の検査をします。その結果、最終的に原田病だと決定します。また明日朝から来て下さい。原田病の場合、入院になります。」
ヘトヘトになり、食べ損なった昼食を食べてオフィスに戻ったのが5時ちょっと前。「また明日病院になりました」で、月曜日は終わり。予定通り仕事は何もできません。
次いで6月2日火曜日、髄液を取る検査です。背骨の間から注射針を脊髄に刺し脊髄液を取るのですが、ちょうどそのあたりは中枢神経が走っています。検査の担当の若いお医者さんが「へたに神経を傷つけるとエライことになります。注射針が神経に触れると足がちょっと痺れるかも知れません。危険はありますが検査して良いですか?」
この期に及んで検査しますか?しませんか?もありません。こちとらまな板の鯉ですから「好きなようにして下さい」てなもんですが、「それでは膝を抱え込んで、できるだけ背中を丸めて下さい。」・・・そんな格好でベッドの上に丸くなって、何とも情けない限りです。先生は背骨の位置を手探りで確かめながら注射針を刺すのですが、何かウッと押されるようでかなり痛いんです。どうも針が骨に刺さると痛いようです。神経の近くに行くと電気が走ったり、足や腰が痺れたりするようです。
「このあたりかなり骨が変形しているようで、なかなかうまく刺さりませんね。」何しろ背骨が首の方からお尻の方へかけて積み重なっています。それを背中を丸めることによって背骨と背骨の間を広げて、この広がった所に注射針を刺して背骨の真中を通っている脊髄に到達しようというのが先生の方の作戦ですが、背骨の方も単にだるま落としのように円盤が積み重なっているわけじゃありません。滅多なことじゃ背骨がずれたりしないように、その中を通っている脊髄や中枢神経を守るように上下の円盤がそれぞれ上下に枝を伸ばして、ちょっとやそっとじゃ円盤が横にずれないようになっています。そしてその隙間から神経が出て身体の隅々に走っているといった具合です。
針を刺そうとすると、まずこの上下に伸びた枝が邪魔になります。そこを避けても今度は神経に触らないようにしなくちゃなりません。若い頃サッカーをやったりその後のギックリ腰で、私の背骨はかなりイビツに成長しているもようです。
先生が私の背骨のあたりを手でさすって「この辺りだろう」とそろりそろりと針を刺すとウッと痛くて声を出す。また手探りでこの辺りかとそろりそろりと刺す。何となく電気が走ったようで声を出す。こんなことを繰り返していると、エアコンのクーラーは十分効いているのですが、じっとり汗をかいてきます。
多分こんな注射は看護婦さんの方がよっぽどうまくやれるんでしょうが、この検査はお医者さんがやらなきゃならないことになっているようです。何回かやるうちこっちも疲れてきますが、先生の方もかなりお疲れのようです。ウッと言ったりピリッと来たりビリビリと来たりもありますが、その間の今か今かの不安の方がクタクタの原因のようです。
ちょっと一休みして、また再開です。
こんな具合じゃ検査はもう無理かなと思った頃、今度は何か痛くありません。「うまく刺さったんですか?」「うまくいったようです。髄液が取れてます。」うまく行けばちっとも痛くないようです。
当初の予定では10時半に髄液を取って検査に回し、その結果を受けて12時頃診断なのですが、髄液が取れたのがもう12時近くです。「髄液はうまく取れました。しばらくこのまま安静にしてて下さい。」注射針を刺したあとの穴は、そこからばい菌なんかが入るとストレートに脳まで行っちゃいますから大変です。しっかり消毒して絆創膏みたいなものをべタッと貼って、「今日はお風呂に入らないで下さい。シャワーもダメです。」「こんなに大汗をかいたのに風呂にも入れないのか」とがっかりしましたが、仕方ありません。お医者様は神様です。言いなりにするしかありません。
結局1時間ほどベッドで休み、そのあと待合室で待っていよいよ診断です。
「遅かったですね。検査の結果、間違いなく原田病です。10日程入院してステロイドの点滴をします。いつ入院できますか? 週末になれば相部屋のベッドが空きますが、すぐに入院するなら有料の個室になります。」
「入院は早い方が良いんですよね。すぐに入院して、2,3日個室に入って、週末になったら相部屋の方に移ることにしましょうか。」
「入院中は1日1回、1~2時間の点滴をするだけであとは病室にいる限り、好きにしていて構いません。何もすることがないですから暇ですよ。仕事を持って来て病室で仕事している人もいます。入院の手続きは1階でして下さい。」
「善(?)は急げ」で、翌日から入院することにして、個室の差額ベッド代は3万円くらいでちょっと高いですが、それも週末までのせいぜい数日間と考えればまぁいいか・・・と入院の手続きを済ませ、またまた食べ損なった昼食を済ませてオフィスに戻ったのが前日よりちょっと早い4時くらいです。
またまた1日仕事ができませんでしたが、明日から当分出社できません。前の週の金曜日から連続3日も仕事をしていないんですから、その分病院にこもったまま仕事ができる体制を作らなきゃなりません。病院にこもったままですから、本を読む時間もたっぷりあるはずです。図書館に行ってたっぷり借りてこなくちゃ。入院中のいろいろなミーティングのスケジュールも変更の連絡をしなきゃ・・・等々。
家の近くの市立図書館は夜8時までですから、6時には会社を出ないと間に合いません。それまで簡単な打ち合わせをし、入院中の病院と会社の間の連絡体制(書類の受渡しや電話・メールの連絡等をするため、社員が交代で1日1回オフィスと病室の間の連絡便をしてくれる)を打ち合わせ、顧問先の少額短期保険会社の決算の財務局のヒヤリングに同席する予定をキャンセルしたり、入院が落ち着いたところで会社から病院に仕事用にパソコンを持って来てもらうとかバタバタと処理し、帰宅してから図書館でたっぷり本を借り(もちろん全部病院に持ち込むんじゃなく、読み終わったものから順に家族に家に置いてあるものと交替してもらうというやり方です)、さて大汗をかいたのに風呂に入れないので仕方がありません、たっぷりのお湯で身体を拭いて寝ました。丸1日の病院の、特に髄液の検査で緊張していたんでしょうか、ぐっすり寝てしまいました。

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