ケインズ・・・4回目

3回目で書いた
 所得=投資+消費
 貯蓄=投資
について、もうちょっと書きます。

経済学ではよくグラフを書いて、たとえば縦軸に価格、横軸に数量を取り、供給曲線は値段が高ければ供給が増え、安ければ供給が減る右上がりの線。需要曲線は、値段が高ければ需要が減り、安ければ需要が増える右下がりの線。こんな線を引き、その二つの曲線の交わったところで価格と数量が決まるなんてことを言います。

これは、供給曲線・需要曲線とも概念的な大体のもので、二つの曲線が交わると言ってもしばらくたてばこの交わった所のあたりで落着く、というくらいのものです。

しかし、この
 所得=投資+消費
 貯蓄=投資
は、会計上の話ですからそんないい加減な話ではなく、いつでもどこでも即時にピッタリ等しくなる、という性格のものです。経済学者の先生方は会計のことをあまりよくわかっていないのか、このあたりを明確に説明している人はあまりいないようです。

前回書いた原価30円の100円の缶コーヒーで言えば、私がこの缶コーヒーを買ったとして、買った途端に社会全体の所得の総額が70円増える、ということ。あるいは買った途端に社会全体の投資の総額が30円減ってしまうという意味になります。こんな具合に社会全体の所得の総額、投資の総額を誰でもがいつでも勝手に変えることができる、というのは面白いですね。

ケインズの戦略は、このいつでもどこでも即時にピッタリ成立する等式を武器に、社会全体の所得や貯蓄や消費がどのように動くか考えようというものです。

一般理論の第8章に
「消費は、(わかりきったことを繰り返すなら)、あらゆる経済活動の唯一の目的であり、目標である。」
と書いてあります。

これは「言われてみればもっとも」と納得できるのですが、普通の経済学の教科書にはこんなことは書いてありません。このようにケインズにとって目的・目標が明確ですから、あとは何をどうすれば消費を増やすことができるかということになります。

ケインズはこの視点から、「古典派の主張ではその目的を達成することができない」と言って、古典派の主張を攻撃することになります。

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