ライフネット生命の113条繰延資産の一括償却

4月19日にライフネット生命は、113条繰延資産の償却を、従来からの毎年一定額の償却をする方式を変更して、2017年3月期に一括して償却する(とはいっても2年分だけですが)、と発表しました。

この発表のニュースリリースによると、状況は次の通りのようです。

ライフネット生命は113条繰延資産の償却費負担のため、経常損益がなかなか黒字にならないので、『113条繰延資産償却費考慮前の経常損益』という独自の指標を使って決算の損益を評価しています。この評価によると2016年3月期は584百万円の黒字(実績)、2017年3月期は88百万円の黒字(見込)、2018年3月期は赤字(見込)。これから113条繰延資産償却費を控除すると、本来的な経常損益は2016年3月期は475百万円の赤字(実績)、2017年3月期は972百万円の赤字(見込)、2018年3月期は10億円超の赤字(見込)ということになります。

今回の『113条繰延資産の一括償却』により、経常損益は2016年3月期475百万円の赤字(実績)、2017年3月期は2,031百万円の赤字(見込)、2018年3月期も若干の赤字(見込)ということになります。

いずれにしてもライフネット生命は2019年3月期の経常損益の黒字、というのは、何としても実現したい目標のようです。そのためには2017年3月期、2018年3月期の経常損益は中途半端な黒字になるよりむしろ赤字にしておいて、その分2019年3月期の黒字を確実にした方が望ましいということでしょう。

『113条繰延資産の一括償却』をしない場合、経常損益は2016年3月期に5億円の赤字(実績)と、もうちょっとで黒字になる所まで来たのが2017年3月期に10億円の赤字(見込)、さらに2018年3月期にさらに赤字幅を広げて(見込)から、うまく行けば2019年3月期に黒字になります。当分赤字が続く、ということです。

『113条繰延資産の一括償却』をした場合、経常損益は2016年3月期の5億円の赤字(実績)のあと、2017年3月期に20億円の大幅赤字(見込)となって底を打ち、、2018年3月期には赤字(見込)ではあっても大幅に改善され、2019年3月期には黒字(見込)になる、という話になります。

この6月には出口さんが会長を辞めます。2017年3月期の大幅赤字を出口さんの置き土産にして、岩瀬体制になったら急激に業績が改善し、2年目には確実に黒字転換する、というストーリーはなかなか魅力的な話かもしれません。

ライフネット生命も株式を公開している会社ですから、株主に対して業績をお化粧したい気持は分かりますが、保険会社の会計について十分な知識のない一般の株主を惑わすようなやり方はいかがなものか、と思います。

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