この本は著者の菅沼さんが、安部さんが殺されて急激に盛り上がった統一教会問題、その本質を、日本の公安を長年担当してきた立場から解説したものです。
私はこの著者のこともこの本のことも全く知らなかったのですが、この著者が2022年12月30日に死去して、須田慎一郎さんがネットで『巨星堕つ』と表現してたので、興味を持って本を探してみました。
著者と須田慎一郎さんの対談形式の本『日本最後のスパイからの遺言』という本も読み、須田さんという人が単なる、やくざ関係に詳しいコワモテのコメンテーターだけではなく、虎ノ門ニュースの虎ノ門サイエンスで武田邦彦さんのウンチクの聞き役だけでもなく、インテリジェンスの仕事もしていたなんてことも知りました。
この著者の菅沼光弘さんという人は東大法学部を卒業して1959年に公安調査庁に入庁し、1995年に退官するまでずっとソ連、中国、北朝鮮を中心に公安の仕事をしていた人です。
この本は、著者も書いているように、語り下ろしを文字に起こしたものをベースに書いているので、多少の重複などもありますが、非常に読みやすい本になっています。
著者は、統一教会ができる時からずっと公安としてその動きを見てきたわけで、韓国政府との関係、日本との関係、アメリカとの関係、北朝鮮との関係をつぶさに眺めてきた、ということです。
統一教会問題というのは色々な問題を含みながら、戦後の日本・韓国・北朝鮮・アメリカの関係の中心にある問題で、要は日本から金を吸い上げてそれをアメリカと北朝鮮に流す仕組みということになり、本質的にはアメリカの問題なんだということ、日本はアメリカに頼っているだけでもいけないし、かと言ってアメリカに依存しない存在になってもいけないし、そのあたり現実的に地政学的に考えていかなければいけない、という事を言っています。
今ロシアと中国の帝国主義が崩壊しようとしている中、イスラム原理主義が大きな問題となっていますが、そもそもアメリカという国自体原理主義によって作られた国であることを再認識して、今後の日本の、世界のありようを考えていく必要があるという事を改めて考えさせられる本です。
お勧めします。