建築施工管理の本

久しぶりにケインズ以外の本を紹介します。
「現場に学ぶ建築施工管理の実戦ノウハウ」という、堀俊夫/著・オーム社/刊の本です。
これも図書館の新着書コーナーにあった本で、面白そうなので借りてみました。

仮設工事・躯体工事・仕上工事・解体工事と、建築工事の様々な場面でどのような工事が行なわれ、施工管理者は何をしなければならないかが書いてあります。

著者は竹中工務店で様々な工事の建築管理をした人で、日本だけでなく海外の工事もいくつも経験しているとのことで、実際の成功例・失敗例を具体的に紹介しながら施工管理のやり方について解説しています。

私は別に建築にかかわったわけでも勉強したわけでもなく、単にビルの解体工事や新築工事を見ていて面白そうだなと思っているだけの素人ですが、この本を読んで解体工事や新築工事の現場で何が行なわれているのか、その時現場の管理者は何を考え、何をしているのかが、(何となく)わかりました。

様々な分野の異なる専門の職人さんが入れ代りやって来て、協力して丁寧な仕事を効率的に行なって立派な建物を作り上げる、その総合コーディネーターとしての建築管理責任者。発注元や設計者の相次ぐ設計変更に対応しつつ工期を管理し、追加工事費の取りっぱぐれを防ぐ、ゼネコンの代表としての現場管理者。天候の変化に対応し、事故に対応する現場の安全管理・リスク管理の責任者。仕入れた原材料が想定と違っていた時のリカバリーの仕方、国によって異なる商習慣や自然環境の違いにどう対処したか、等々。まさにすごい仕事をしてるんだなと感激しました。

私もそれなりにイッチョマエに仕事をしているつもりですが、この建築施工管理の現場責任者の仕事というのはとてつもないもんだなとあきれ果てました。

こんな本が突然目の前に出現するというのも、図書館で本を借りる楽しみの一つです。

2 Responses to “建築施工管理の本”

  1. 堀 俊夫 より:

    偶然、先生の書かれたブログ記事を見つけました。著者としてありがたい書評であり御礼申し上げます。先生が見抜かれたように、ゼネコンの現場管理者はとてもリスクの多い中で、うまくいって当たり前の世界で生きています。モチベーションはもの作りの醍醐味です、総合コーディネーターとして、多くのスタッフ、資材、職人さんを指揮し、ドンぴしゃりと収める妙技、それを目指して頑張っています。昨日も中国の振興デベロッパーのCEOに聞かれました。「世界一の品質が作れる建設会社はどこですか?」もちろん日本のゼネコンです。日本のゼネコンは世界一のモノ作りをしていますが、それはもてなしの心を持った日本の文化と施工管理者の献身的なかつプロ意識に大いに原因しています。そのことを建設業界以外の人に知って欲しかったのです。若し当時の管総理大臣が、東日本大地震の福島の原発事故の復旧にゼネコンのブレーンを活用すればもっと建設的に復興が進んだはずです。今からでももちろん間に合います、日ごろもの作りの総合コーディネートの訓練をしているのはゼネコンです、東電に任せたのでは汚染水の海への放出は止められません、計画力が全く見えません。ゼロから有を導き出すのはゼネコンの得意技です。」と言いたいんです。今回は、とても感謝しています。取り急ぎ御礼まで、著者 堀 俊夫

  2. 坂本嘉輝 より:

    堀様、コメントありがとうございます。

    こちらは先生などと言われるようなものではなく、単にいろいろ本を読んで、他の人にも知らせたいと思う素晴らしい本を紹介しているだけのものです。

    私もアクチュアリーという、いわば職人のような仕事をしていて、その関係で会社勤めをしていた時はいろんな部署の調整とか、監督官庁との折衝とかもやり、独立してコンサルティングの仕事をするようになってからはクライアントの会社の中の調整とか、クライアントと監督官庁の折衝の調整とかしていますが、堀さんのように、次から次へいろんな人が入れ替わり立ち替わり登場したり退場したり、利害関係がさまざまな人が集まってその皆を満足させたり、というような大変な仕事ではないので、また、理屈ではなく実際にモノを作らなければ何の言い訳もできない、という大変な仕事ではないので、堀さんの仕事の話は本当に感激でした。

    私のブログは見に来る人も多くないので残念ですが、できるだけ多くの人に同じ感激を味わってもらいたいと思います。

    ゼネコンというのは世間的には下請けいじめのピンはねとか談合とか、悪いイメージが強いのですが、堀さんの話でほんとにすばらしい仕事をしているんだ、ということがよくわかりました。

    大震災の国の調査会の報告書を見る限り、福島の発電所でもつい先ごろ亡くなった所長の吉田さんをはじめとする大勢が堀さんのような仕事をしていたんだろうな、とか、しばらく前アルジェリアでテロリストにやられたプラント建設の日揮の人たちも堀さんのような仕事をしていたんだろうな、とか考えています。

    また、本をお書きになるようなことがありましたら、お知らせください。

    坂本嘉輝

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