『さらば財務省』 高橋洋一著

加計学園の前川文書に関連してコメンテーターとしてこの高橋さんが出ていて、そのコメントが面白いので図書館で探したら、かなりたくさんの本があったので、借りてみました。

『さらば財務省-官僚すべてを敵にした男の告白』という本と、
『さらば財務省-政権交代を嗤う官僚たちとの決別』という本と両方借りられたので見てみると、中味は同じで単行本が文庫になる時にサブタイトルが変わったということのようです。

で、この本にあるこの人のキャリアが非常に面白いんですが、まずは東大の理学部数学科を卒業します。その後文部省の統計数理研究所に採用されて助手つきの個室の研究室をあてがわれ、将来はその研究所の教授になる予定だったものが、急に途中で博士号を持っている人が来るからとその話がなくなり、そんなこともあろうかと手を打ってあった東大の経済学部に学士入学し、その同じ学部仲間が公務員試験を受けるというので一緒に受けて合格し、財務省(当時は大蔵省)に入ったということです。

その当時のキャリア官僚として5年目には地方の税務署長になったけれど、暇だから金融工学の本を翻訳して出版した、なんて話もあります。

郵便貯金の利率の決め方とか大蔵省のALMとか、財投とか特殊法人改革とか、大蔵省でも他にほとんどいない理系出身の役人としていろんな事をやったようです。その後役所からプリンストン大学に派遣され、2年で帰る予定を勝手に3年に延ばして大蔵省の中での出世コースから完全にはずれ、竹中さん・小泉さんに協力して大蔵省(財務省)に逆らうような事を次々にし、最終的に小泉さんがやめ、竹中さんがやめて自分も役所をやめて、ということのようです。

郵政民営化の話や特別会計の埋蔵金の話も、この高橋さんが直接かかわった話のようで、このあたりの話も面白いです。

で、この人は理系で経済学もちゃんと分かっている人なので、やめてからいろんな本を出しているんですが、そのうちの一つに『たった一つの図で分かる図解経済学入門』という本があり、これも同時に借りることができたので読んでみました。

たった一つの図、というのは、例によって、需要曲線と供給曲線を描いて、その交わるところで価格が決まる、というあの図です。

『たった一つの図』といってもこの本には35個の図が付いていて、中にはいくつか違うものもあるんですが、そのほとんどはこの需要供給の図のバリエーションです。35個もの図を使って『たった一つの図』というのもちょっと無理があるなと思うのですが、本屋さんからすればこの方が売れやすいということかも知れません。

また極力この一つの図のバリエーションという形でいろんなことを説明しようとするため、かえって分かりにくい部分もあるんじゃないかと思います。

高橋さんは経済の話の9割はこの一つの図で分かると言っているんですが、多分そんなことはなく、一つの図で分かると思って読んだ人は却って分からないことになっているんではないかなと思います。

この人の本はまだ何冊も予約のままになっているので、それを読むのも楽しみです。

で、『たった一つの図』で経済が分かるとは思いませんので、おススメはしません。『たった一つの図』でどうやって経済が分かるんだろう、と興味のある人は読んでみてください。

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