Archive for the ‘保険あれこれ’ Category

ライフネット生命の中期計画

水曜日, 9月 7th, 2011

今、生保会社各社のこの3月期の決算のまとめをしようとしているのですが、ちょっと確認したいことがあったので、ライフネット生命のホームページをのぞいてみました。

すると、6月に「中期計画を策定した」というニュースリリースを出していることを見つけました。

で、遅まきながら見てみたのですが、ちょっと期待していたものとは違うものでした。

私はやはり決算の分析なんかをするので、どうしても「中期計画」というと、新契約がどのように伸びて、保有契約がどうなって、収支がどうで、単年度黒字がいつで、累積で黒字がいつで・・・というようなものを期待してしまうのですが、そのようなものは一切ありません。

あったのは応援者を増やすとか認知度を上げるとか、効率化とか新領域への挑戦とか、お題目の部分しかありませんでした。

まぁ私が見たかったようなものはあまり一般に公表するものではないので仕方ないのかも知れませんが、ライフネット生命はいろいろ他所ではやらないことを思い切ってやる会社なので、もしかしたらこのような経営の根幹に係わるようなことも公開するかなと期待したのですが、残念ながら期待はずれでした。

保険の相談

火曜日, 8月 30th, 2011

去年の初めに本を出しました。「生命保険 入って得する人 損する人」というタイトルの講談社の新書です。

保険会社のおどろおどろしい話もないし、生命保険でこうすれば儲かる、とかいう話もない、派手な内容の全くない本ですから、あまりたくさん売れているわけではないと思いますが、さすがに大手出版社の新書ですから、いまだに書店の棚には置かれているようです。

今年に入って、その本を読んだという人からの生命保険の相談が2件もありました。

既に入っている契約の見直しについて保険会社の営業社員と話をしているんだけれど、営業社員が持ってくる資料の見方とか、現在入っている保険をどうしたら良いかについて説明してもらいたいという話です。
こちらは頼まれれば何でもやりますが、会社の仕事としてやるんですから、料金を頂きます。

生命保険の見直しをするのに、わざわざお金を払って説明を求めるという人がごく普通にいるというのは、素晴らしいことです。

相談に来られたケースは、1つは朝日生命の、もう一つは明治安田生命の、どちらもいわゆるアカウント型保険です。

営業社員が持って来る提案書というか設計書というかも、かなりのページ数になるものを、提案のそれぞれについて作ってきますので、全体では膨大なページ数になります。

もともと「アカウント型の保険」というのが、根っこにある終身保険あるいは積立保険の上に様々な保障の特約を、様々な組合せで組立てることができるものです。それぞれの特約の内容を説明するだけでも大変なことです。

良くわかって入る分には自由な組立てができて中々便利な仕組みですが、いくつもの組合わせを提案されて、その中からどれかを選べと言われると、判断のしように困ってしまうのも良く理解できます。

ということで、迷ったり困ったりした人がいたら、是非私の会社を試してみて下さい。

誠ジーさんからのコメント-その2

火曜日, 6月 28th, 2011

誠ジーさんから大量のコメントが入りましたが、一応一段落の様子です。
話の内容は非常に面白いのですが、誠ジーさんの大量のコメントを全部読むのも大変でしょうから、かいつまんで説明します。

誠ジーさんは昭和52年に明治生命の営業員をしている知り合いに勧められて生命保険に入りました。5年間保険料を支払って昭和57年に医療の特約を追加しました。
その直後その営業員は明治生命をやめ、別の営業員が担当することになりました。

その後新しい営業員に勧められて、保険料の払込みを口座振替にする手続きを取ろうとしましたが、印鑑相違で口座引落しができませんでした。営業員は「保険料の振替貸付ができるので、そのままで大丈夫ですよ。」と言い、「それができなくなったら集金に行きますから」と言ったので、そのままにしてありました。

しばらくして、いつまでたっても集金に来ないので不思議に思って問合せてみると、契約はいつの間にか失効していました。

何の連絡もなく契約を失効にするのは認められないので、失効を取消すように申し込んだ所、保険料未払いの期間の保険料の払込みを求められました。「保障も受けてないのに、そんな保険料を払うことはできない」として、保険会社と争いになりました。それで契約の内容を調べてみたところ、契約は昭和57年に締結されていました。

昭和52年に入ったはずの契約はどこにもなく、昭和57年の契約も昭和52年の契約を転換したものでなく、新規の契約となっていました。

昭和52年の契約は、誠ジーさんは毎月保険料は払っていましたが、保険証券は見たこともありません。
昭和57年の契約も、医療の保障を追加するだけのつもりで医師の診査は受けましたが、契約の申込をした覚えはありません。

また保険料を口座振替にする際も、銀行に提出する口座振替依頼書に記入・押印した覚えはあるものの、保険料払込方法変更の書類に記入した覚えはありません。
口座振替に変更しようとして印鑑相違により口座振替できないという通知は受取りましたが、営業員の「保険料振替貸付にするから大丈夫」という言葉でそのままにしていました。

その後1回目の振替貸付の連絡の葉書は、誠ジーさんは受取っています。2回目の振替貸付の連絡葉書は、転居先不明で保険会社に戻されました。後日、この転居先不明については郵便局の間違いであることが判明しました。

転居先不明の葉書を受取り、保険会社は営業員に住所確認をさせましたが住所が確認できず、保険会社として契約者は行方不明となりました。この間、誠ジーさんは転居せず、同じ所に住んでいました。

2回目の振替貸付のあと、3回目の振替貸付はできず、保険料の入金がないまま契約は失効しました。

このような状況で誠ジーさんは明治生命を相手に裁判を起こし、地裁・高裁・最高裁といずれも敗訴しました。

それでも誠ジーさんはあきらめきれず再審請求をした所、それが認められて裁判が始まり、その中で和解することになりました。

誠ジーさんの契約は定期付養老保険で死亡保険金1,500万円のものなので、当初誠ジーさんはこの額を払うように要求しましたが、途中でその半額の750万円まで譲歩して要求を下げました。そして正式な和解条件として300万円の支払いで和解することとし、差額の450万円を裁判所の和解とは別に明治生命が払うということになりました。

正式に和解が成立した後、450万円の方は、その支払を約束したはずの明治生命の社員が「そんな話はしていない」と否定し、支払われませんでした。

なお死亡保険金1,500万円というのは、誠ジーさんを被保険者とするもので、誠ジーさんはまだ生存しています。

誠ジーさんは昭和52年から昭和57年まで保険料を56万円位払っていて、昭和57年以降ではさらに57万円位払っています。つまり総額として113万円位の保険料を払ったということです。

誠ジーさんの契約は定期付養老保険で、定期特約の部分はもう保険期間が終了しているので、仮に契約が失効せずにそのまま続いていたとしたら、死亡保険金は100万円です。

以上、113万円の保険料を払って300万円の和解金を受取っているので、誠ジーさんにとっては非常に有利な決着となっているんですが、誠ジーさんにとっては承服し兼ねるようです。

その理由は保険会社が

  1. 昭和52年の契約の存在を隠していること。
  2. 昭和57年の契約を勝手に成立させたこと(誠ジーさんの記憶では、これは昭和52年の契約に医療保障を追加しただけのものです)。
  3. 口座振替依頼書が印鑑相違だったにもかかわらず、そのまま勝手に保険料の払込み方法を口座振替扱いにし、保険料を集金しなかったこと。
  4. 住所が変わっていないのに、勝手に転居先不明にしたこと。
  5. その後勝手に契約を失効させ、元に戻さなかったこと。
  6. 和解した時、和解条件の300万円とは別枠で450万円の支払を約束したにも係わらず、払わなかったこと。

ということになります。

また誠ジーさんの考えでは、契約を不当に消滅させたペナルティーとして、保険会社は本来的に死亡保険金と同額の1,500万円を支払わなければならないということです。

以上興味があれば、

->「誠ジーさんからのコメント」

というページに全部載ってます。
殆ど全て、コメントの形でのやり取りなので、何とコメントが79個にもなっています。このブログではコメントが50個を超えると2ページに分かれるということも、初めて経験しました。

金融庁のお知らせ 2つ

木曜日, 5月 26th, 2011

この記事の13個前の記事
『保険会社の負債の時価評価』
に関し、2ヵ月遅れで5月24日に金融庁から報告が出ました。
=>『経済価値ベースのソルベンシー規制の導入に係るフィールドテストの結果について』

まだきちんと読んでないんですが、とりあえずまずはお知らせ。

ついでに同じくこの記事の24個前の記事
『認可特定保険業』
についても、ちょっとうっかりしていましたが、5月10日にパブコメの結果と一緒に最終版の政省令その他が出ていました。
=>『「保険業法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律」の施行に伴う関係政令・主務省令案等に対するパブリックコメントの結果等について』

念のため、お知らせします。

誠ジーさんからのコメント

金曜日, 5月 20th, 2011

このブログはよく使われているWordpressというソフトを使っているのですが、使い始めのころ、ためしで『test』というページを作り、そのまま放置してありました。

公開はしていたんですが、ブログの画面からのリンクもないので誰も見ることがないだろうと思っていたのですが、ある日突然そのページにコメントの書き込みがありました。

それで、そのコメントに関してやり取りしたのですが、コメントを書き込んでいただいた誠ジーさんのコメントの中身がなかなかおもしろそうなので、それをそのままページの名前に拝借し、誠ジーさんのコメントとそれに関する議論を公開させていただくことにしました。

『誠ジーさんからのコメント』
見てみてください。

特例告示

金曜日, 5月 6th, 2011

保険会社の決算はこの連休でほぼまとまっているものと思いますが、それについて連休直前の4月28日に金融庁から緊急に「特例告示」なるものが出ています。

「保険業法施行規則第七十三条第一項第二号の規定に基づき、平成二十三年三月三十一日を末日とする事業年度に係る支払備金として積み立てる金額の特例を定める件」(特例告示)の公表について

これはこの震災に関して保険金等の支払備金を計上するのに、通常の方法では適正な評価が難しそうなので、通常のルールとは別に何らかの合理的な方法で計算するのでも良しとするというものです。

震災・津波による保険金の支払事由の発生は2011年3月のものがほとんどでしょうが、3月末までに請求あるいは通知されないものが多いと思われるので、だからといって3月末の備金に計上しないのもおかしいということで、各社それぞれ合理的な方法による計上を認めるこということでしょうが、これにより会社ごとの対応の違いが出てしまいます。

いずれにしても2011年3月期・2012年3月期の2期にわたっていろいろな影響が出てきますので、決算の比較などする時は要注意です。

保険会社の負債の時価評価

火曜日, 4月 26th, 2011

金融庁は昨年6月、保険会社の負債の時価評価の試行をする、と発表しました。
=>『経済価値ベースのソルベンシー規制の導入に係るフィールドテストの実施について』

この発表の中で、試行の結果の概要を今年の3月頃を目処に公表するとしていたのですが、まだ何も公表されていません。
この大震災の影響でしょうか。先週末に電話で確認したところ、今の所まだ公表の目処は立っていないようです。

保険会社でこの作業を実際行っている人にはいろいろな情報が入っているのかもしれませんが、外部の人間には金融庁が発表してくれないと何もわかりません。

この負債の時価評価、というのは保険会社の経営管理に非常に大きな影響を与える可能性のあることなので、興味深く注目しています。

保険経済価値

木曜日, 4月 21st, 2011

4月18日号の週刊金融財政事情(いわゆるキンザイ)に、「保険経済価値規制の是非を問う」というテーマで特集が組まれています。

「市場整合的な保険負債の評価は規制、開示になじむか」というテーマの座談会と、関連する論文4つ、記事が1つ集められています。登場するのはコンサルティング会社、生・損保会社、金融庁に所属する人達です。

どれも非常に面白いのですが、特に座談会での生・損保会社の人の発言や、その座談会にも参加しているソニー生命のアクチュアリーの花津谷徹さんの論文が印象的です。

花津谷さんの論文は「生保経営におけるMCEV開示の意義」というタイトルで、MCEVと市場整合的なEEVとの違いとか、ソニー生命のMCEVと、T&Dグループ・第一生命のEEVとの、2008年3月期~2010年3月期の3期分の比較が載っています。具体的な数字がうまくまとまって比較されているので、非常にわかりやすい説明になっています。

さらにソニー生命の取組みについてかなり詳しく具体的に説明してあり、たとえば「07年度までのソニー生命はおよそALMとは対極の投資行動を取っていた。」とか「ソニー生命は08年度末にMCEVの半減により内部管理基準で資本不足に陥り・・・ちなみにこの時の法定ソルベンシーマージン比率は2000%を超えていた」といったドキッとするようなことが平然と書いてあり、経営とリスク管理の立場の違い、法定会計とMCEVとの視点に違いにどのように対応していくか、対応していったかという具体的な話が書いてあります。

EEVやMCEV、経済価値会計について、理屈の説明だけではなかなか具体的なイメージがつかめない人も、生々しい現実を垣間見ることで理解が増すのではないかと思います。

なおキャピタスコンサルティングの森本祐司さんの「経済価値ベース規制の流れを理解するために」という論文も、全体を理解するためのキーワードをうまく整理して解説してあり、勉強になります。

座談会にも参加し、また論文も書いている金融庁の植村信保さんによると
植村さんのブログ)、
金財のこの号の記事は
きんざいのHP
から、今なら全てpdfで読むことができる(21日まで大震災に伴うサービスだそうです)とのことなので、金財が手近にない人はとりあえずネットで開いて印刷するなりダウンロードするなりしておくと良いかも知れません。

(時間切れで間に合わなかった人は、メールで知らせていただければ私がダウンロードしたものを内緒でお送りします。)

補償料の大騒ぎ

月曜日, 4月 18th, 2011

私の友人の、KENさんという、保険の代理店をしている人は、この大震災以来、かなりお怒りモードでちょっと近づきがたいんですが、少し落ち着いてもらいたいな、と思ってKENさんのブログに投稿したところ、同じく昔からの友人のeikoさんが登場してきました。
で、震災と原発関連の話をした後、eikoさんから、ついでにこんなコメントが来ました。

と別件ですが、東電の事故に対する補償料のこと。あれは補償料だったんですか? そもそも事故が起きるなんて想定していなかったのではないかな? 「民間保険の保険料率が下がったので補償料率も下げた」という言葉にも唖然としてしまったのですが、アクチュアリーのご意見を聞きたいです。

アクチュアリーのご意見なんて言われると、答えないわけにはいかないので、ちょっと調べてみたら、ネット上で結構大騒ぎになっていることがわかりました。

たぶん毎日新聞の記事が元になって、それがデマのように伝わって、大騒ぎになっているようです。

私が調べた結果が以下の通りです。

この内容は、KENさんのブログにコメントの形で載せたのですが、ちょっと面白い話題なので、こちらにも転載します。

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この騒ぎは4月13日の毎日新聞の記事が元のようです。

東日本大震災:福島第1原発事故 賠償補償料足りず 差額、国民負担に

記事に間違ったことは書いてないようですが、かなり誤解あるいは、無理解の解説のようで、これがネット上で大騒ぎを引き起こしているようです。

この原子力損害賠償法、正式には『原子力損害の賠償に関する法律』というもので、昭和36年にできている法律です。

これは、原子力事業で損害が生じたときに誰が損害賠償に当たるか、ということと、そのための損害賠償措置(損害賠償のための資金手当てのための措置)について規定している法律です。

まず、原子力損害について、
この法律において「原子力損害」とは、核燃料物質の原子核分裂の過程の作用又は核燃料物質等の放射線の作用若しくは毒性的作用(これらを摂取し、又は吸入することにより人体に中毒及びその続発症を及ぼすものをいう。)により生じた損害をいう。
と定義されています。野菜や牛乳を廃棄したのは損害になりますが、避難指示のために避難した損害まで含まれるんでしょうか。

次に、賠償責任について、
原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるときは、この限りでない。
と規定しています。
この賠償責任額には限度が無く、無限責任です。

ここで、『異常に巨大な天災地変によつて生じたものであるとき』について、今回の事故がそれに当たるかどうか、という議論はあります。国はこれに当たらない、と言いたいようですが、常識的に考えると千年に一度の地震を異常に巨大な天災地変でない、というのも無理があるように思います。東電はともかく、仮に保険会社(特に外国保険会社)が関わっていると、簡単には引っ込まないで裁判になるでしょうね。

つぎに、『損害賠償措置』ですが、これは上の損害賠償責任を果たすための準備としての措置です。これは、自動車を買うときの自賠責に当たるものです。自賠責ですから、賠償責任はこれだけ、ということではなく、あくまで最低限の事前準備というものです。自賠責に入らないと自動車を持ってはいけないのと同じように、この措置を講じておかないと原子力事業をしてはいけない、ということになっています。

この、『損害賠償措置』の具体的な内容として、
原子力損害賠償責任保険契約及び原子力損害賠償補償契約の締結若しくは供託
即ち、民間の損害保険の契約で手当てしてもいいし、国が行う補償契約でもいいし、供託金を積んでおくのでもいいから、それらをあわせて、原発の場合でいえば最低1,200億円準備しておく必要がある、ということです。

で、この『原子力損害賠償補償契約』ですが、原子力事業者が補償料を政府に払い、事故が起きたときに政府が損失を補償する、というものです。『補償料』ということですが、普通の言葉遣いでは『保証料』にあたるものです。
この、『補償契約』『補償料』は1年掛け捨ての保険に当たります。

で、この『補償契約』について、1962年から2010年までの約50年で東電が支払った『補償料』が総額150億円でしかないのに政府の負担する補償額が1,200億円なので1,000億円以上が国民負担になる、というのが毎日新聞の記事の内容です。

この1,200億円というのは『損害賠償措置』の必要額ですが、これは当初、50億円だったものがその後2009年には600億円になり、2009年から 1,200億円になったもののようです。また、東電が『損害賠償措置』の必要額の全てを『補償契約』でカバーしていたのかどうかもわかりません。ですからこの『補償料』の内訳もわからないのですが、いずれにしてもその支払額の累計を現時点の補償額1,200億円と比較しているんですから、この段階ですでにまるで比較になっていません。記事では『積み立てではない』と書いてあるのですが、この比較の仕方では積み立てのように理解されてしまうのも仕方ないことと思います。

この『補償料』の料率についても、現在は1万分の3で、その前補償額が600億円だったときの1万分の5から大幅に下がっています。これを『民間保険で保険料率が低下傾向にあることを反映して料率を引き下げた』などと解説するのも誤解の元です。この『補償契約』は賠償保険のようなものですから、金額が高くなっても保険料(補償料)はそれほど高くなりません。料率で考えると大幅な引き下げになります。これは、個人の賠償保険の場合、保険金額100万円でも1億円でも保険料がほとんど変わらないのと同じことです。

いずれにしても千年に一度の災害だとすると、1万分の3でもまだ十分高いと思います。

そんなわけで、毎日新聞の記者さんはわかったことを正直に書いて、わからなかったことはわからないままで記事を書いてしまったため、記事にウソは無くても結果的にデマ、あるいはデマの元、のような記事になってしまった、ということだと思います。

なお、ついでにこの法律の後のほうにちょっと面白い条文があります。

原子力事業者の損害賠償責任について
政府は、原子力損害が生じた場合において、原子力事業者が損害を賠償する責めに任ずべき額が賠償措置額をこえ、かつ、この法律の目的を達成するため必要があると認めるときは、原子力事業者に対し、原子力事業者が損害を賠償するために必要な援助を行なうものとする。
ということで、政府援助があるようです。もちろん援助といってもただでお金をくれる、ということとは限りませんから、お金を貸してくれる、というのも援助に入ります。
いずれにしても原子力事業者の損害賠償責任は無限責任ですから、政府援助がないととても足りないかもしれません。

いずれにしても必要な補償は足りない分だけ政府が一緒になって何とかしてくれるのかな、と思うと、すぐその下で
前項の援助は、国会の議決により政府に属させられた権限の範囲内において行なうものとする。
となっていますので、国会が議決した金額の範囲内、ということで、いくらでも援助してくれるわけではなさそうです。

で、面白いのはこの後で、
政府は、原子力損害で規定する額をこえると認められるものが生じた場合においては、被災者の救助及び被害の拡大の防止のため必要な措置を講ずるようにするものとする。
と書いてあります。

この最後のところ、普通は
『講ずるものとする。』
という風に書くんですが、わざわざ『ようにする』を加えて
『講ずるようにするものとする。』
となっています。

私は法律の専門家ではありませんが、商売柄結構法律を読んでいるほうだと思います。
ですが、こんな『ようにする』なんていう法律ははじめて見ました。
面白い法律ですね。

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以上が、私が調べた結果です。

大震災の生保の保険金

金曜日, 4月 15th, 2011

昨日(4月14日)の日経新聞に、国内主要生保9社の東日本大震災の保険金支払見込額が1,780億円になるという記事が出ました。9社以外の分も合わせると2,000億円程度だということです。

この額「すごい額だな」と思ったでしょうか。「たったそれっぽち」と思ったでしょうか。

去年3月末までの平成21年度決算の生保会社の死亡保険金支払額は全社合計で、死亡保険金2兆7,435億円・災害保険金391億円・高度障害保険金2,504億円・死亡給付金2,590億円。全部合計して3兆2,920億円です。

どうせ記事にするんだったら、新聞社もこれくらいの数字をつけておいてくれると嬉しいんですけどね。