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収入保障保険タイプの「二重課税が違法」

2010年7月8日 木曜日

収入保障保険タイプの死亡保険について、「二重課税が違法である」という最高裁の判決が7月6日に出て、大騒ぎになっています。

詳しくはまたどこかにまとめる予定ですが、要は、
年金タイプの死亡保障についてその年金受給権が相続税の対象となっているにも関わらず、年金受取の際にその受取年金に対して改めて所得税を課すのは二重課税であり、所得税法違反である。
というもので、二重課税方式で税金を計算した税務署の更正(税務申告の修正のこと)は誤りであることを明らかにしたものです。

この二重課税方式の計算は、別にこの件の税務署だけでなく、どこの税務署でも同じように行なわれているので、この判決により全国的に税金の計算を直さなければならないことになります。

財務大臣は「この誤りにより取り過ぎた税金は払い戻す。法律上は5年前までにさかのぼって返す必要があるけれど、5年に限定しないでもっと前までさかのぼって返す」と宣言してしまいました。

まさに選挙の真っ最中の出来事なので、民主党に少しでも良い印象を持ってもらおうとしてこんなことを言ってしまったのでしょうが、事はそう簡単には行きそうもありません。

最近ではあまり話題に上ることもなくなってしまいましたが、年金記録問題の「消えた年金」。「全部記録を正しくして払います」と大見得を切ってしまってから、実際にはそんなことは現実的にほとんど不可能だとわかってダンマリを決め込んでいる、その二の舞にならなければ良いんですが。

今回の最高裁判決は、その最大のポイントは二重課税の問題なのですが、実はもう一つ「受取年金に対する課税の取扱い」という問題も同時に提起しています。

どういうことかと言うと、相続税の計算の対象となる年金受給権については、もうそれ以上所得税の対象としてはいけないけれど、実際に貰う年金の総額がその年金受給権を上回る部分については、これは利息収入(資産運用益)として所得税の対象とすると言っているんです。

これまでの考え方では、この資産運用益の部分を計算するのに、年金受取(見込)額の総額と、年金受給権との比を取って、受取る年金のうち一定割合が資産運用益の部分だとして計算することになっていました。

ところが今回の最高裁の判決では、1回目の年金については年金受給権が発生した途端に年金を受取ることになるので、資産運用期間がないため資産運用益もないはずで、1回目の年金は全て年金受給権をとり崩したものと考えるべきだと言っています。となると、2回目以降の年金に資産運用益を割り振ることになるのですが、それをどうやるかということは最高裁は何も言ってません。

1回目の年金について取り過ぎた税金を返すというのであれば簡単ですが、2回目以降の年金についても返すためには、2回目以降の年金について資産運用益をどう計算するか決めないとなりません。1回目の資産運用益がゼロになった以上、2回目以降の年金について資産運用益は年金額の一定割合というのも不自然でしょう。まずは「税務当局がこの計算ルールを決める」という所から始めなければなりません。年金額のうち資産運用益の割合が毎回変わることになると、税金の計算もその分面倒くさくなります。

これだけでも「返す」というのがそう簡単じゃないことがわかります。

さらに最高裁の判決は所得税のことしか言っていないんですが(これは、裁判の目的が所得税の確定申告の話なのでそうなるのは当然なのですが)、所得税以外の税金はどうなるんだという話は当然出てきます。

それだけじゃありません。今回の判決は「所得税の税額の誤り」について言っているだけじゃなく、その元となる「課税所得」「総所得」についても従来のやり方が間違っていると言っています。そうなると税金以外のところでも「所得に応じて」というのは、いくらでもありそうです。

特に社会保険関係の保険料だとか給付だとか、所得に応じて決められているものもたくさんありそうです。財務大臣の「全部返す」発言は、一体どこまでの範囲を意味するものなのか、多分、あまり何も考えずに言っているんでしょうね。

生命保険会社はとりあえずこのような年金の支払のデータの提出を求められることになるんでしょう。本来このようなおかしな二重課税を、生命保険会社が率先して是正するよう税務当局に働きかけなければいけなかったのに、それをちゃんとしてこなかったのですから仕方ありません。

年金を支払う際には生命保険会社は所得税の源泉徴収をしているのですが、この二重課税問題でもしかすると源泉徴収の計算ルールも変更になるかも知れません。そうなるとそれに対応してコンピュータシステムの手直しも必要になります。

税務署は税金を取るためにお金をかけて体制を整えているんですが、今度は税金を戻すために体制作りと実際作業のためにお金をかけなきゃならないんですから、大変ですね。