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ERM (Enterprise Risk Management)

木曜日, 12月 8th, 2011

近頃アクチュアリーの間ではERMという言葉がはやりです。

文字通り訳せば企業(事業)の危機管理ということなのですが、今いちその意味する所がわかりません。
アクチュアリー会ではこれを正式な教育課程にして、新しい資格制度も作るということのようです。

で、このテーマでセミナーがあるという案内があったので、参加してみました。場所は東京大学の金融教育研究センター(carf)という所です。

通訳はなし、ということはあらかじめ案内されていたのですが、講師が話し始めた途端、その早口の英語に「こりゃ半分も聞き取れないかな」と心配になりました。ところがしばらくして慣れてくるとそれほどでもなく、所どころ聞き取れない所はあったものの何とか最後まで聞くことができました。

講師はKent大学のアクチュアリー学部だか学科だかの教授であり、J. P. Morgan Asset Managementの Managing DirectorでもあるPaul Sweethingさんというアクチュアリーで、イギリスのアクチュアリー会のERMの教科書を書いた人だということですから、話を聞くには最適な人です。

で、会場に入ったら、大きな教室の正面のスクリーンにパワポのプレゼンが映されているんですが、何とも字が小さくてどうにもなりません。何とか読めるようにと考えて、結局一番前の席に座ることになってしまいました。

プレゼンを紙に印刷したものも配られましたが、いかんせん字が小さくて往生します。講師がまだ若い人(40歳位)のようで、老人に対する配慮などはあまり気にしていないようです。

で、このERMですが、いわゆる単なるRisk Managementと何が違うかということですが

  • ERMについてはまだ統一された定義はない。
  • 個々のリスクについて個別に考えるというより、企業の全体のリスクについて、全体的に考える。
  • いくつものリスクの複合リスクについても考える。
  • 数量化できないリスクについても考える。
  • 気がついていないリスクについても考える

ということで、何となくわかったようでわからないようで・・といった所です。

どうも保険会社とか金融機関に限った話ではないようです。また金融リスクに限った話でもなく、オペレーションリスクや環境リスク、法規制リスクも入るらしいです。

最後に、

アクチュアリーだけがリスク管理をすることができるというわけではないが、このように広い範囲の技能を使うリスク管理というのは、アクチュアリーの活躍する場だ。

Actuaries are not the only ones that can manage risk・・・but something that uses such a diverse range of skills sounds, to me, actuarial

と締めくくっていました。

全体聞き終わっても“Enterprise”というのが何を意味しているのかまだはっきりしなかったので、
「Enterpriseというのは保険会社や金融機関の枠を超えて、あらゆる種類の企業のことを意味しているようだが、アクチュアリーにERMを教え込んで、その企業のリスク管理の責任者として売りつけようということか」
と質問してみました。

回答は
「保険会社や金融機関以外でも、リスク管理の責任者(Chief Risk Officer)を置いてリスク管理責任の部署を持っている企業は少なくない。このCROは今後多くの企業で必要とされるだろう。だからと言って、たとえば20年後に多くの企業にアクチュアリーがCROとして採用されているということにはならないだろう。」
というものでした。

非常に面白いセミナーでした。興味がある人は、(私の手書きのメモが入ってしまっていますが)プレゼンの資料
http://www.acalax.info/app-def/S-102/wp/wp-content/uploads/2011/erm-seminar.pdf

を見てみて下さい(いかに字が小さいかもわかってもらえると思います)。