『赤信号、皆で渡れば恐くない』という言葉がありますね。
確かに恐くはないんですが、向こうから信号遵守の大型トラックが突っ込んできたら、皆ではね飛ばされる、ということも考えられます。『恐くない』というのは『安全が保証されている』というわけではありません。
そんなことを考えて皆で渡るのを一人だけ躊躇して信号が青になるのを待っていると、皆からは『臆病者』とか『裏切り者』とか言われて仲間はずれにされるかも知れませんし、かといって皆がはね飛ばされた時、ひとりだけ渡らないで助かった人は『あんたは偉い!』なんて誉めてもらえるわけでもなく、『皆がはね飛ばされたのにあんただけ助かってズルイ』とか『卑怯者!』とか言って責め立てられます。
で、この『皆で渡れば恐くない』というのは結構人気が高くいろんな所に出てくるのですが、今のユーロ危機もその一つです。
『皆で渡れば恐くない』と言ってヨーロッパの国々が次々にEUに加盟し、ユーロに加盟し、ユーロ建てで国債を発行すると、今度は銀行が『皆で渡れば恐くない』と言って、ユーロで(即ちユーロ建ての低金利で)皆にお金を貸し、またユーロの国債を買ったということです。
そして貸したお金を返してもらおうとしたら『お金は返せません』と言われてアタフタしているのが今の姿です。
もともと金利を高くしておけば多少『返せません』という人がいても、高い金利で穴埋めできるんですが、低金利で貸してしまったので穴埋めのしようがありません。穴が大きくならないうちに他の人に貸したお金を回収し、金利を高くして貸し直そうとしても、皆が一斉に『お金を返せ』なんて言ったら、誰もお金を返せません。
そのうちに今度は銀行が預金者から『お金を返せ』と言われ、これは断るわけにいかないので返そうと思ったら、金庫の中にもうお金は残ってない、ということになろうとしています。
赤信号で渡っていたヨーロッパの国も銀行もまとめてはね飛ばされそうになっている、ということで、ついでにまわりで見ているアメリカや日本、またアメリカや日本の銀行も巻き添えではね飛ばされるかも知れないという状況です。
『赤信号、皆で渡れば恐くない』と言って皆が渡りはじめた時、『恐くないかも知れないけど、はね飛ばされるのは嫌だな、でも仲間はずれになるのも嫌だし』と思った時、どうしたら良いんでしょうね。