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『雪はよごれていた』

水曜日, 9月 10th, 2014

昨日からニュースサイトは軒並み『昭和天皇実録』の話題で賑わっています。
これについてもいずれ、ところどころ読みたいな、と思いますが、多分数年後のことになりそうです。

たまたまなのですが、先週末に図書館に行き、リサイクルコーナー(『図書館では廃棄処分にするのでご自由にお持ち下さい』というコーナー)で、澤地久枝さんの『雪はよごれていた』をみつけて貰ってきました。

これは2.26事件について、検察官をやった匂坂(サキサカ)春平氏が内緒で保存していた裁判資料が昭和62年に出てきて、澤地さんがNHKの協力のもとその資料を読み解いた記録です。

匂坂氏が裁判のために集め、また自ら作成した多数の資料と、その資料に小さな字で付けた厖大な書き込みを一つ一つ読み解いて、2.26事件の本質に迫るというものです。

これを読むと2.26事件が何だったのかが良くわかります。
何人かの青年将校が部下の兵隊を使って、政府の要人を殺したクーデターのようなものですが、青年将校の方には要人を殺した後どうするかという具体的な考えがなく、悪者がいなくなれば世の中が良くなるだろう位の考えしかなく、そこで軍の上層部がクーデターの乗っ取りを謀り、実際に軍の上層部主導のクーデターに仕上げようとしたのを昭和天皇が頑強に抵抗したためにそれができず、軍の上層部はクーデターをあきらめ、一度は手を結ぼうとした青年将校たちを裏切って反逆罪(反乱罪)で処刑してしまい、その際自分達のクーデター乗っ取り計画をごまかすために北一輝等を事件の黒幕に仕立て上げた、という話です。

陸軍の法務官サイドは軍の上層部の裁判まで考えていたのに、青年将校と北一輝等の処刑で裁判は終わってしまい、軍の上層部は生き延び、クーデターは失敗に終わったけれど、その後軍の暴走を止めることはできなくなってしまったという話です。

2.26の直後、昭和天皇の弟で軍にいた秩父宮が任地の弘前から夜行列車で急遽上京するのですが、軍人たちがその秩父宮に決起を促す『進言』という文書も匂坂資料の中から見つかっています。

これも合わせて、第二大戦が終り日本軍が消滅するまでの昭和天皇の孤独と不安は大変なものだったんだろうな、と改めて思いました。

戦前の日本で、軍の暴走が誰にも止められないようになってしまう重大な事件を理解するために重要な一冊です。250頁ほどの本ですが、読みごたえあります。お勧めします。