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『石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか』

2014年10月22日 水曜日

最近ブログが更新されていないというお叱りを頂いたので、ちょっと新書を2冊ほど紹介します。

1冊目は『石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか』 岩瀬昇著 文春新書 という本です。
著者は大学を出て三井物産に入り、ずっと石油や天然ガスの事業にかかわってきた人です。その人が40年の経験を元に素人にもわかるように書いた本で、なかなか面白い本です。

日本が輸入している天然ガスは、欧米と比べて非常に高いということが折に触れてマスコミでも取り上げられますが、日本が輸入する天然ガスとアメリカやヨーロッパでパイプラインで供給される天然ガスというのは商品の性格がまるで違い、単純な値段の違いで比較できるものではない、ということが良く理解できます。

シェールガス・シェールオイルというのがエネルギー革命としてもてはやされていますが、これがうまく行くのはアメリカだけだろうという説明も納得できます。あんなイチかバチかの大勝負に一生をかける人がいて、そんな博打に大金を投資する人がいるというのは、世界でもアメリカくらいだということです。

この本の題にもなっている石油の埋蔵量の話も面白いです。「埋蔵量」に統一された定義はなく、また計算方式も様々で、その計算も時として大幅に間違っていたりする、なんて話も実例で説明されると良くわかります。

三井物産は商社として石油や天然ガスを売ったり買ったりしているわけですが、自分の所でも(子会社で)製産する立場でもあります。で、著者は石油の先物取引のディーラーとしての仕事もするのですが、基本的に差金決済の先物取引の一部として現物を売却することもあり、その立場を利用して現物の売却に伴う税金の節税をするなんて話は非常に面白い(こんなのバラしちゃって良いのかなあという)話です。

多分著者が一番言いたかったことなんだと思いますが、この本の後半でエネルギー問題について触れています。

エネルギー問題というと何となくすぐに電力の話と思い勝ちですが、実は電気にしないまま使っている石油・石炭・天然ガスがたくさんあるということを、資源エネルギー庁の資料で説明しています。

日本で使っているエネルギーの総量が21,147千兆ジュールで、そのうち9割が石油・石炭・天然ガスとなっていること。そのうち最終的に消費されているエネルギーの総量が14,527千兆ジュールで、そのうち電力は家庭用・企業用・産業用合わせて3,299千兆ジュールと、2割ちょっとにしかならないこと。また電力は発電に投入したエネルギーの半分以上が発電ロスとなってしまっていて、電力になるのは4割しかない(投入するのが9,121千兆ジュール、電力になるのが3,731千兆ジュール)ということなどの説明があります。

このような状況のため、いわゆる再生可能エネルギーについては電力の一部をこれで賄うことができたとしても、電力以外の所で使われている石油・石炭・天然ガスを再生可能エネルギーで代替するのは難しいということで、あまり重要視していません。

また日本で期待のメタンハイドレートについても何も触れていません。

いずれにしても石油・石炭・天然ガスを中心とするエネルギー問題について良くまとまっていて、参考になる本です。

本の中身とは別に、作りの方ではいかにも新書らしくいいかげんな作りになっています。縦書きの新書なので、数字も縦書きになってしまい、さすがにグラフについては横書きのグラフをそのまま縦書きの文章の中にはめ込んでいるのですが、表になると数字を縦書きにしてしまうため、たとえが123は数字の1, 2 ,3を縦に並べる、23.456だと23は数字を横に並べて、その下に小数点の「.」、その下に4, 5, 6を縦に並べるという具合で、表としてはもっとも悲惨な安直な段組みとなっています。

とはいえ、本の中の表やグラフは読まない人も多いようですから、それでも良いのかも知れませんが
(私は勿体ないので表もグラフも読むので、こんな所が気になります)。

この本の著者は実はライフネット生命の社長の岩瀬さんのお父さんです。著者が講演のレジュメとして用意していた資料が面白いというので、息子さんが知り合いの編集者に見せて、その結果がこの本になったということのようです。

ライフネット生命の社長の岩瀬さんが、こんな仕事をしている父親の息子として育ったんだという興味もありますが、そんな興味は別として、この本は十分に価値ある本だと思います。

良かったら読んでみて下さい。